あまりに遅い新型コロナウィルス感染症障害認定/愛知●症状固定後も治療継続の実態

介護事業所で働いていた70代のAさんは、2020年7月に新型コロナウイルスに感染し、肺炎を発症したことから名古屋市内の病院のICU(集中治療室〉で治療を受けた。同年8月に退院したものの、倦怠感や関節痛、微熱、手の痺れ、頭皮の痔み、湿疹、胸痛、息苦しさなどの新型コロナウイルス感染症の症状で通院をしていた。

2020年9月に名古屋北労働基準監督署に新型コロナウイルス感染症で労災認定されたAさんには、休業補償給付が支給されていたが、2023年7月、労働基準監督署より、「あなたの症状について調査した結果、今後治療を継続しでも明らかな医療効果は期待できないとの医学的所見により、令和5年8月末日をもって症状固定(治癒〕と認定し、認定以降は療養補償給付を行わないこととなりますのでお知らせします」との「症状固定(治癒)の認定について」という標題の通知が届いた。

Aさんは、主治医に後遺障害診断書を作成してもらい、9月末頃に障害補償給付請求書を労基署に郵送したものの、いまだに障害等級の決定がされていない。後遺障害に関する主治医診断書には、強い倦怠感や両肩、両膝の関節痛、皮膚の湿疹などについて記載されていた。なお、現在にいたるまで本人への労基署の聴取も実施されていない。

全国安全センタ一の厚生労働省交渉を通じて、新型コロナウイルス感染症の罹患後症状に関する障害等級決定については、全件、本省協議になっていることを把握しているが、Aさんが2023年9月に障害補償給付の譜求をしてすでに半年が経過しており、時間がかかりすぎていると言わざるを得ない。

東京労働安全衛生センターが昨年末に行った東京労働局との交渉において、「新型コロナの罹患後症状に関して、障害補償を認定した件数と、どのような症状をどのような等級で認定したのか、決定内容の傾向を回答してほしい」という質問をしたところ、東京労働局からは、「(東京労働局管内では)障害補償の給付件数は4件ある。すべて本省協議の上での決定。倦怠感、痛み、しびれ、頭痛などの症状について障害認定したもの。障害等級へのあてはめとしては、いずれの症状も『神経症状』にあてはめて判断している」という回答を得たことを、同センターから情報提供を受けている。

Aさんは、現在も新型コロナウイルス感染症の治療で通院を続けている。新型コロナウイルス感染症で労災認定され療養し、症状固定後、健康保践で療養を続けなければならない患者さんは多く存在すると考えられることから、厚生労働省が健康管理手帳を交付し、月1回ないし2回の受診や投薬などを労災が打ち切られだ患者さんに認めるアフターケア制度の導入など、救済措置の創設が必要なのではないかと考えている。

文・問合せ:名古屋労災職業病研究会

安全センター情報2024年7月号