働く高校生の安全・健康/東京●都立飛鳥高校定時制で講義
昨年11月、都立飛鳥高校の定時制で労働災害職業病について講義の依頼がありました。約40年前、東部労災職業病センターの時代に、印刷会社で働いていた定時制高校生がトリクレン中毒になり、東京労働安全衛生センターで相談を受けて労災認定を取り組みました。これを契機に、東京都高等学校教職員組合定時制部とともに「定時制生徒の労働と健康を考えるシンポジウム」を数回にわたり開催し、アンケート認査などを行って、働く定時制生徒の労働環境の問題などを明らかにしました。切削油による職業性皮膚疾患の労災認定に取り組んだ生徒もいました。その後、南葛飾高校の定時制などから講義の依頼がありましたが、2006年を最後に途絶えていました。このたび安全センターのホームページを見た飛鳥高校の教員から依頼があったのです。
飛鳥高校の定時制では外国人生徒への日本語教室があり、当日は約20人弱の生徒が参加しましたが、日本人は3人くらいで、ネパールや中国出身の外国人の生徒がほとんどでした。最初に、労働と病気について講義をしました。多くの病気が多かれ少なかれ仕事と関係があること、仕事が原因の怪我や病気は労災保険で治療費や給料の80%が補償されることなどを話しました。外国人の生徒は日本語教育のおかげでかなり日本語ができるのですが、レジメの漢字にはルビをふりました。
後半は、3組に分かれてのグループワークです。ほとんどの生徒はアルバイトなどで仕事をしています。そこで課題は「働いている職場で仕事中にあった怪我や病気」というテーマで、経験した怪我や病気を報告し合いました。ひとつのグループはやや低調でしたが、2グループでは活発に話が出ていました。やはり飲食店などで働いている生徒が多く、出たのは、調理作業でのやけどや切り傷、重い物を持ち上げての腰痛、通勤中の交通事故などです。暑い厨房での長時間労働で具合が悪くなった(熱中症?)、という生徒もいました。多くの生徒が労災と思われる怪我や病気に遭遇していました。なかには、会社から労災の手続をしてもらった生徒が2人いましたが、その他の生徒は労災保険の手続はしていません。あらためて定時制生徒の労災事故の多さに驚きました。
グループワークの結果を受けて最後に、仕事中の怪我や病気はアルバイトでも労災保険で補償されることを強調し、何か困ったことがあったら安全センターに相談するようにと、安全センターの連絡先を黒板に書いてお知らせしました。45分の枠で駆け足の講義でしたが、初歩的な話はできたと思います。
定時制生徒に限らず全日制の生徒でもアルバイトをしています。卒業後に働く職場でも安全・健康の問題は重要です。労働基準法などの最低限の労働法についての知識も重要です。他の学校でもこのような講義を行なう必要があるでしょう。あらためて若い非正規労働者の安全・健康問題の重要性に気づかされた講義でした。
東京労働安全衛生センター代表理事・平野敏夫
安全センター情報2024年5月号