サムソン重工業の塗装工、全身硬化症を労災認定/韓国の労災・安全衛生 2024年05月17日

資料写真/サムソン重工業労組

サムソン重工業の巨済造船所で約20年間働き、全身硬化症と診断されて亡くなった塗装工に、労災が認められた。全身硬化症による死亡の後に労災が承認された事例は珍しい。

<毎日労働ニュース>の取材の結果、勤労福祉公団統営支社は、2月にサムソン重工業巨済造船所の塗装工として働いて亡くなったA(死亡当時56才)さんの遺族給与と葬儀費を支給すると決めた。死亡原因は進行性全身硬化症と心筋梗塞を伴う心不全(推定)である。全身硬化症は皮膚、血管、内部臓器が厚くなったり硬くなる疾患である。正確な発病原因は未だ明らかになっていない。ただ、職業的な危険要因として、結晶型ガラスケイ酸へのばく露や有機溶剤へのばく露が全身硬化症の有病率を高めることがあるという研究が報告されたことがある。

Aさんは1996年3月11日から、サムソン重工業の巨済造船所でタッチアップ塗装工として働いた。25年が経った2021年7月5日、病院で進行型全身硬化症と診断されて入院した。同月31日、Aさんは呼吸困難の症状を示し、その日の午前2時20分に死亡した。遺族は、故人が長期間にわたって粉塵作業場に勤務して全身硬化症を発病し、これによって肺線維化が進行して死に至ったと主張し、遺族給与と葬儀費の請求書を提出した。

病院の医務記録によると、Aさんは来院の七ヵ月前から手が固くなり、動き難かった。来院の四~五ヶ月前からは、胴体の皮膚が黒く色づき、体が硬くなり、歩き方も変わり、全身の痛みも酷くなった。寝ている間に歯が急に抜けるようなことも起きた。死亡以前の外来診断のとき、レイノー現象(冷水に手を浸したり、寒気に当たると色が変わる現象)、間質性肺疾患と肺動脈高血圧が伴った状態だった。

2月19日に開催された公団の職業環境研究院の業務上疾病審議委員会は「(故人が)30歳の時の1996年3月から25年4ヶ月間、タッチアップ塗装作業を行う過程で、塗料に含まれた全身硬化症の危険因子である有機溶剤に長期間ばく露された」とし、死亡原因である全身硬化症に関して業務上疾病と判断した。

事件を代理したキム・ジョンヒョン公認労務士は「この間、造船所の塗装工の産業安全保健問題は、スプレー塗装作業の危害性に焦点が合わされており、タッチアップ塗装作業の従事者は相対的に疎外される面があった。」「今まで認定された白血病、肺がん、喘息の他に、原因不明だったり個人の自己免疫疾患として扱われてきた全身硬化症が、労災と認められたことは意味がある」と評価した。造船所のタッチアップ塗装工は、スプレーが届かないところまで丁寧に筆で塗る作業をするため、狭い空間で長時間働く。

2024年5月17日 毎日労働ニュース オ・ゴウン記者

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