若者使い捨て企業でパワハラ 東京●「反応性うつ病」業務上認定

問合せ先:東京労働安全衛生センター

若者を使い捨てにする悪質企業が社会問題になっている。昨年東京労働安全衛生センターに相談があった20代の男性が働いていた会社も典型的な使い捨て企業だった。
Aさん(当時23歳)、は2014年4月に都内のX社に正社員として入社した。X社は社員数が数名で、デジタルコンテンツを企画・開発するベンチャー系企業だった。
Aさんはすぐに専門的なCG開発のプログラミング業務を命じられた。特殊な専門知識が要求されるCGプログラミング業務だったが、社内のサポート体制も研修もなく、一人でそのプログラミング業務を担当することになった。
社長からは、担当する業務の全体像が把握できない漠然とした作業指示が出される一方で、業務の成果物の提出は厳しく催促された。業務に対する具体的な改善指示もなく、ただ「駄目だ」「駄目だ」とのみ言われて作業のやり直しを命じられ、業務量もプレッシャーも増大していった。
6月に入り、社長から在宅勤務を命じられた。Aさんは、膨大な業務量とプレッシャーの中で、朝起きると社長からのメールをチェックし、デスクに張り付いて一日中仕事に追われ、外出は近所のスーパーに出かけるくらいという状況に置かれた。業務は毎日深夜から早朝に及んだ。
さらに6月以降、社長からAさんの人格や人間性を否定する文言や、脅迫・恫喝の文言が書かれたメールが、昼夜を問わず執拗に送られるようになった。「クズ人材」「殺す」「死ぬほど殴る」…そうした書かれたメールが、一日に20通近くも届いた。そして、「休日を潰して働け」「土下座しろ」と責めたてたうえで、会社に損害を与えているとして「金銭で賠償しろ」とますますエスカレートしていった。
こうした状況の中で、Aさんは動悸やめまいを感じ、眠れなくなり、気力も食欲もなくなっていった。そして7月中旬、憔悴しきった様子を見かねた両親のすすめで精神科を受診。「反応性うつ病」と診断され、ただちに休職することになった。休職直前の1か月間の時間外労働は259時間にのぼっていた。
その後Aさんは会社を退職し、労災を申請を行った。労働基準監督署には精神障害の労災認定基準を踏まえつつ、極度の長時間労働とパワーハラスメントによる強い心理的負荷があったことを主張した。さらに長時間労働の記録とともに社長から送られたメールをパワーハラスメントの証拠として提出した。それは労基署の担当者も驚愕するほど凄まじい罵倒と脅迫に満ちたものだった。
2015年12月、業務上認定の決定が出され、Aさんの病気が職場の長時間労働とパワーハラスメントによるものであることが認められた。いまAさんは体調もすっかり回復し、新しい職場で元気に働いている。

安全センター情報2016年7月

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