下請け労働者の過労死に、異例の「元請け責任」認定 2023年09月27日 韓国の労災・安全衛生

資料写真/チョン・ギフン記者

過労に苦しめられ、心停止で亡くなった下請け労働者の遺族に、元請けが損害を賠償せよという判決が出た。下請け労働者の業務上の疾病に関して請負人の安全配慮義務違反が認められたという意味で、異例と評価された。

昼夜交代勤務に工期短縮の圧迫
裁判所「元請け、遺族に各3千万ウォン支給せよ」

<毎日労働ニュース>の取材によると、ソウル中央地裁が、現代建設の下請け労働者のAさんの子供たちが現代建設と下請け業者のB社に起こした損害賠償請求訴訟で、原告一部勝訴の判決を行った。判決が確定すれば、現代建設とB社は共同して、遺族に各3400万ウォン(慰謝料700万ウォン含む)を支払わなければならない。元請け業者は控訴した。

B社所属のコンクリート打設班長のAさんは、2019年12月、夜間の打設作業を終えて車を運転して帰宅する途中に意識を失って倒れ、心停止で亡くなった。工事は現代建設が東海港防波堤築造工事を調達庁から請負い、B社は現代建設から浚渫・設置工事を下請けした。勤労福祉公団は業務上の疾病と判定し、遺族に遺族手当と葬祭料を支給した。

これとは別に、Aさんの子供たちは、元・下請けを相手に損害を賠償せよという訴訟を提起した。遺族側は、冬の寒冷とコンクリート粉塵への過多なばく露など、苛酷な勤務環境の改善措置が不十分だったと主張した。また、昼夜交代勤務と一日平均9.5時間の作業・休日不足・工期短縮の圧迫のストレスが複合的に作用したと強調した。特に、現代建設が請負人として、故人に対する安全配慮義務を果たさなかった責任があると指摘した。

争点は請負人の安全配慮義務が認定されるかだ。裁判所は、Aさんが業務上の過労による心停止で死亡したとし、現代建設とB社の損害賠償責任を認めた。使用者が安全配慮義務を負担するという最高裁の判決を引用した。最高裁は2000年5月に「使用者は、被用者が労務を提供する過程で、生命・身体・健康を害することがないように必要な措置を講ずべき保護義務または安全配慮義務がある」とする判決を行った経緯がある。

裁判所「海辺で冬の寒冷に持続的にばく露」
「請負人に例外的な安全配慮義務を認定」の意味

裁判所はAさんの過労とストレスを認めた。Aさんは2019年9月から、二週間おきに昼夜交代勤務をしながら、打設工の業務の他に現場管理も担当した。事故以前の4週間と12週間の週当り平均業務時間は、各々50時間21分と45時間16分に達した。裁判所は「相当な期間の故人への業務負担が加重となり、故人は海辺の工事現場で夜間作業をしながら、冬の寒冷に長時間曝されたと見られる」と説明した。

事故の直前に、同僚たちにストレスと胸の痛みを訴えたことも作用した。裁判所は「事故の前に、故人に喫煙と糖尿病の疑い以外は、心臓疾患があったとは思えない。」「被告としては、故人に十分な休息を保障し、業務負担を軽減させるための適切な措置を講じなければならないのに、これを果たさなかった」と指摘した。

但し、△Aさんが休息を取ったり、過重な業務遂行を指示された時に、状況を積極的に知らせて業務を調整するなど、自己保護義務を果たさなかった点、△喫煙歴と疾患の疑いの情況が事故発生の原因の一部になったとして、現代建設とB社の責任を60%に制限した。また、勤労福祉公団から受け取った遺族年金は控除するとした。遺族を代理したキム・ヨンジュン、キム・ウィジョン弁護士は「請負事業主である現代建設に、例外的に下請け労働に対する安全配慮義務が認められたという点に意義がある。」「裁判所が、請負事業主が産業安全保健法上の労災予防措置をするべきという点を考慮し、請負人の安全配慮義務を認めたと見られる」と話した。

2023年9月27日 毎日労働ニュース ホン・ジュンピョ記者

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