飲食・宿泊業の女性従事者は心臓疾患に罹る確率が三倍・・・なぜ? 2023年08月20日 韓国の労災・安全衛生

韓国産業労働学会提供

「産業保健の研究者はもちろん、企業と労組の関係者が、科学的な分析に基づいて職業病の予防対策を準備しなければなりません。」

韓国産業労働学会のサマーキャンプに参加したク・ウンフェ研究者(延世大学産業保健学修士)は、「業務上疾病の脆弱業種を見付けるための標準化疾病率比」の発表で、労災関連情報の公開の重要性を強調した。職業病予防の観点から活発な労働研究が進められるように、情報への接近性が改善されなければならないという趣旨だ。

ク・ウンフェ研究者は2017~2021年の政府の労働災害承認データを基に、10種類の代表的な業務上疾病の脆弱業種を分析した内容を発表した。労災認定の頻度が高い代表的な10大職業病は、△事故性腰痛、△騒音性難聴、△塵肺症、△脳血管疾患、△職業性癌などだ。研究結果を見ると、脳血管疾患の場合、男性は鉱業、陸上運輸業、飲食・宿泊の従事者が標準集団に較べて業務上疾病の承認率が高く、女性は飲食・宿泊業が標準集団に比べて三倍以上高かった。「女性の飲食・宿泊業従事者は、心臓疾患でも高危険業種に挙げられた。」「過労問題と熱を多く扱う危険な作業環境のためだと推定される」と話した。筋骨格系疾患のカテゴリーでは、男女共に、鉱業、食料品製造業、木材と紙製品製造業など、製造業とサービス業が高危険群であることが判った。「業種別に、疾患誘発の可能性が高い労働者中心の予防管理対策が必要だ。」「各業種と脆弱疾病間の関係についても、今後、労働界で更に活発な研究が必要で、政府はこれに利用できる様々な情報を提供するべきだ」と話した。

18日から一泊二日で、全州で行われた産業労働学会のサマーキャンプでは、ク・ウンフェ研究者のような労働研究者130人が集まり、女性・気候正義・青年・ケア・労働安全など、様々なテーマで熱い討論を行った。

18日に行われた韓国産業労働学会サマーキャンプで、ク・ウンフェ研究者が「業務上疾病の脆弱業種を見付けるための標準化疾病率比」をテーマに発表している。/チャン・ヒョンウン記者

11回を迎えた産業労働学会のサマーキャンプは、労働分野の若手研究者の研究発表と、中堅の研究者間の交流を目標にしている。今年は130人の労働研究者が参加し、歴代最大規模となった。

今年のキャンプでは、研究者たちの発表だけでなく、その後の討論と質問によって、現在の労働問題の限界や補完点に対する実務的な議論が休む暇もなく行われた。ケア労働者、女性労働者、農村の家事労働者など、労働分野の最近の流れを反映した多様なテーマ発表も続いた。アン・イェスル(聖公会大学校NGO大学院実践女性学科修士)研究者は、非婚女性・青年の孤立経験に関して、10人の女性・青年と深層面談した結果を発表し、「女性・青年の精神の健康問題に対する議論も、個人の孤立の経験から出発すべきで、政府の支援対象から排除してはならない」と強調した。

金属労組労働研究院のキム・ウシク研究委員が、「青年ブルーカラー労働者と階級再生産」に関する発表を行っている。/チャン・ヒョンウン記者

地域の労働の研究への関心も高かった。キム・ヒョンミ(全南大学校社会学科博士課程修了)研究者は、「光州地域の5人未満の事業場を研究した結果、アンケート対象の502人の内、女性労働者が73%、非正規職が51%で、平均賃金は204万ウォン。」「5人未満の事業場の形態は、企業と国によって、労働に対する差別を強化させるメカニズムとして利用されている」と説明した。保育の市場化についての発表者として参加したチャン・インハ(ソウル大学社会学修士)研究者はハンギョレ新聞に、「教師の仕事をしながら感じた小学校の保育教室に関する問題意識を保育労働の側面から研究し、今回の学会で初めて発表することになった。」「労働というテーマの下で、様々な問題意識を持った研究者たちに会えて、議論を拡げていける場だった」と話した。

2023年8月20日 ハンギョレ新聞 チャン・ヒョンウン記者

https://www.hani.co.kr/arti/society/labor/1105005.html