いじめも労災も多いが「口に出せない」 2023年3月8日 韓国の労災・安全衛生

職場内のいじめ(暴言・暴行・性暴力)経験率

7年目の看護師Aさんは、中小病院の救急室で働いていた時、専任看護師にいじめられたことがある。物品の整理をしていたAさんに、突然「出て来い」と帳簿で手を叩かれ、ことある毎に業務指摘をされたり、言葉尻を捉えられたという。病院に職場内いじめの事実を申告したが、その後も同じ部署、同じ場所で働かなければならなかった。看護師にも問題を提起したが、「謝罪させて、そっと終わらせよう」という返事が返ってきた。Aさんは「(いじめられても)通報をすれば『不適応者』という噂が出るのではないかと思い、なるべく我慢して見過ごす」とし、「やっと通報したが、(専任看護師ではなく)私に部署を移るのはどうかと訊いてきた」と話した。結局、専任看護師の「応急辞職」(当日に通報したり、通知なしに辞めること)で事件はうやむやになった。

看護師の『テウム(焼き入れ)』など、病院内のいじめを相当数の労働者が体験していることが分かった。女性は男性に較べて、いじめられても積極的な問題提起を敬遠していた。暴言や暴行を受けた場合、女性が社内に申告したり、法的対応をするケースが、男性の半分または4分の1に過ぎないことが分かった。

いじめ経験10年間、女性が20%以上高く
「加害者の大半は患者・保護者で、積極的な問題提起は難しい」

7日、<毎日労働ニュース>が保健医療労組を通じて受け取った『保健医療労働者の労働安全保健に及ぼす影響分析』を、性別で再分析した資料によれば、暴言・暴行・性暴行といった職場内いじめを経験した比率は、2011年から2021年までの10年間、女性が男性に比べて毎年20%以上高かった。

職場内いじめの中で、特に性暴力の場合、2011年に女性が13.1%で男性(2.4%)に比べて5倍も高く、2021年にも女性13.2%、男性3.9%で、3倍以上の差が出た。暴行の場合、2011年に女性13.2%、男性11.1%で、2.1%の差だったが、2021年には女性21.7%、男性11.7%と格差が拡がった。暴言は2011年に女性が64.2%、男性が40.9%から、2021年の62.7%、36.8%に、20%の差を示した。

対応の方法は、女性が可成り消極的なことが分かった。性別と関係なく2016年から2019年までのいじめ対応方式の調査結果を見れば「我慢して乗り越える」が、70~80%で圧倒的に多かった。そして労組や社内苦情処理委員会のような『組織的次元の解決』あるいは『法的・制度的次元の解決』を選んだのは性別によって差を示した。2019年を基準に、暴言の場合、該当の回答をした女性は1.6%だが、男性は3.4%で、2倍以上高かった。暴行はそれぞれ3.2%と13.3%で4倍以上、性暴力は2.2%と11.9%で5倍以上の差が出た。

高麗大学労働問題研究所のハン・ギドク研究員は「女性の場合、我慢してだめなら周辺に助けを要請するが、それでも組織・制度的解決といった積極的な方式には進まなかった。」「加害者の大部分が患者・保護者なので、組織次元で内部的に解決するのが難しいので、黙って離職する方式で、個人が耐える方向を選んでいると見られる」と分析した。

女性の睡眠障害、男性の約2倍
「職務満足度が否定的であればあるほど、労災の経験率は高くなる」

業務上の事故や病気を経験した回答率も、女性が男性より高かった。全体『労災経験率』は2013年から2020年まで着実に増えたが、2013年は女性43.7%、男性33.7%で、10%の差があったが、2019年は女性79.9%、男性は62.1%に、格差が17.8%まで拡がった。病気だけを見ても、女性が男性に比べて8.7~15.4%高かった。疾病のうち、筋骨格系疾患と睡眠障害の女性の経験率が2013年から2020年の間に、それぞれ15.5%、11.3%と大きく増え、男女間の疾病経験率の格差が広がったものと解釈される。睡眠障害は2020年に女性の41%、男性の23.1%と2倍程の差が出た。

人材水準、業務量、労働強度などに対する職務満足度は、労災経験の有無と相関関係を示した。職務満足度が低いほど労災の経験率が高く現れた。特に「肉体的・精神的健康状態」「業務量」「権限・責任外業務遂行」といった要因に性別の差が目立った。ハン・ギドク研究員は、「労災経験と関係なく、女性は男性より人材問題や業務体系・業務環境のような組織的・構造的な部分について否定的な認識が高いことが判った」とし、「3つの要因は性別によって15~20%程度の差があるが、女性がこれをより深刻に受け止め、このような要因が労災の経験にも影響を与えかねないという意味」と説明した。

資料写真/チョン・キフン記者

2023年3月8日 毎日労働ニュース オ・コウン記者

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