最高裁「重過失による交通事故でも業務上災害」初の判断 2022年5月31日 韓国の労災・安全衛生

資料写真/イメージトゥデイ

業務で運転中に、被災者の重過失によって交通事故が発生して死亡したとしても、業務上災害に該当するという最高裁の判決が出た。「労災補償保険法」(労災保険法)で定めた『犯罪行為』と断定してはならないという趣旨だ。業務遂行中の交通事故に関連する業務上災害の具体的な判断基準を示したのは、今回が初めてだ。

サムソンの下請け労働者、中央線侵犯で死亡
『犯罪行為に該当』が争点、二審は労災不認定

『毎日労働ニュース』の取材によると、最高裁一部は26日、出張中に交通事故で亡くなった労働者・Aさんの妻が勤労福祉公団に提起した、遺族給付と葬祭料不支給処分取り消し訴訟の上告審で、原告敗訴とした原審を破棄し、ソウル高裁に差し戻した。

サムソンディスプレイの下請け業者で働くAさんは、2019年12月、業務用車輌を利用して教育に参加し、勤務地に復帰する途中に中央線を侵犯して対向のトラックと正面衝突した。この事故で車輌に火災が発生し、Aさんは命を失った。

Aさんの妻は、勤労福祉公団に遺族給付と葬祭料の支給を請求したが拒否された。「交通事故処理特例法」(交通事故処理法)上の犯罪行為で事故が起きたというのが理由だった。捜査機関は居眠り運転を事故発生の原因と推定した。検察はAさんが死亡したことで不起訴とした。遺族は公団の判定を不服として、2020年8月に訴訟を起こした。

争点はAさんの事故が労災保険法の『犯罪行為』に該当するかどうかだった。労災保険法37条2項は「勤労者の故意・自害行為や犯罪行為が原因になって発生した負傷または死亡は、業務上災害とは見ない」と定めているためだ。一方で事業主が提供した交通手段を利用するなどの支配・管理下で発生した事故は『出退勤災害』と規定している。

一審は、Aさんの死亡は業務上災害に該当すると遺族の手を挙げた。裁判所は「他人の関与や過失なく、もっぱら勤労者が刑事責任を負担すべき法違反行為をしたという事情だけで、直ちに『犯罪行為』に該当するとは断定できない」と判断した。

一方、控訴審は遺族の請求を棄却した。中央線侵犯行為は、交通事故処理法が定めた12の重過失に該当する犯罪行為に該当すると見た。裁判所は「故人が中央線を侵犯していなかったら事故は発生しなかっただろう」とし、「運転者の注意義務を怠った重大な過失に該当する」と判示した。

最高裁判所「通常伴う危険の範囲」
法曹界、「画一的な公団の判断にブレーキ」

最高裁は控訴審を覆した。通常伴う『危険の範囲』内にあると見られれば、中央線侵犯で事故が起きても、業務上災害ではないと簡単に断定すべきではないとした。最高裁は「事故の経緯と態様、運転能力といった、事故発生状況を総合的に考慮して判断すべきだ」と説明した。

その根拠として、△出張業務を終えて帰る途中に事故が発生した点、△中央線侵犯の原因が究明されていない点、△飲酒運転ではなく居眠り運転と推定された点、△運転免許取得後の交通事故履歴がない点、などを挙げた。裁判所は「Aさんの事故は、業務遂行のための運転の過程で、通常伴う危険の範囲内にあると見る余地が大きい」とし、事件を再び審理するように命じた。

下級審では、業務遂行中に運転者の過失で発生した交通事故に関する判決が食い違っている。ソウル行政裁判所は昨年11月、労災事故で目の手術を受けた後、出張中に中央線を侵犯した事件に対して業務上災害だと判決した。この他に、無免許で電動クイックボードに乗って交通事故で死亡した場合も、業務上災害に該当するという判決が出た。一方、信号違反で死亡した労働者の訴訟では、労災を認めなかった。

法曹界は、今回の判決で交通事故が災害者の重過失に該当しても、公団の画一的な判断は減るだろうと展望している。雇用労働部と勤労福祉公団は、2019年に「法令違反で発生した事故の業務上災害認定基準(指針)」を新設して施行している。しかし、労災保険法に規定していないのに重過失行為によって発生した事故を業務上災害から排除し、論争が起きている。

遺族を代理したチョ・ウンヒョン弁護士は「公団は交通事故処理法上の義務違反事項があれば、事情を考慮せずに犯罪行為と見る傾向があった」が、「最高裁が画一的に犯罪行為と判断してはならないとブレーキをかけた判決」と評価した。「今後、出退勤災害に対しても、今回の最高裁判決が適用される可能性が高いと見られる」と付け加えた。

2022年5月31日 毎日労働ニュース ホン・ジュンピョ記者

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