『30歳でパーキンソン病』半導体労働者、15年目に労災認定 2022年4月14日 韓国の労災・安全衛生

資料写真/チョン・ギフン記者

サムソン電子の半導体工場で働いて有害化学物質に曝され、30代でパーキンソン病に罹った労働者が、裁判所で業務上の災害を認められたことが確認された。工場で働いて27年目、パーキンソン病が発病してから約15年目のことだ。当時の資料は残っていなかったが、裁判所は劣悪な環境で働き、高濃度の化学物質に相当量曝露した可能性が高いと判断した。

1990年代半ばに「フォト工程」を担当
三交代勤務し、有害物質に曝露

法曹界によると、ソウル行政裁判所は5日、サムソン電子の元社員Aさん(48)が勤労福祉公団に起こした療養不承認処分取消訴訟で、原告勝訴の判決を行った。

Aさんは高校卒業からサムソン電子・富川工場で働いた。1992年12月から2年3ヵ月間、半導体の生産職として勤務し、「フォト工程」で露光作業を行った。「フォト工程」は半導体の表面に、写真印刷技術を利用して回路パターンを作る作業をいう。Aさんは工程担当者が席を外すと、半導体工程の洗浄業務と現像作業も同時に担当した。1995年3月の退社まで、このような業務を繰り返した。

退社後に問題が発生した。2004年に出産した3ヵ月後、突然左足に麻痺症状が現れた。翌年に病院で検査を受けたが、症状は好転しなかった。結局、満30歳になった2006年11月、大学病院でパーキンソン病2期と診断された。パーキンソン病の平均発病年齢の50~60代より20年以上も早い。パーキンソン病は通常10年の潜伏期を経て発症する。

Aさんは公団に療養給付を申請したが、不承認とされた。防塵服とマスクを着用し、直接的な化学物質への接触がなかったというのが理由だ。30歳でパーキンソン病が発病し、曝露期間が長くないという点も作用した。Aさんは2020年7月に訴訟を起こした。

裁判では曝露期間とレベルが争点となったが、勤務当時の資料がほとんどないということが問題になった。Aさんが属していた工程が、2016年にアメリカの半導体会社に売却され、立証できる資料が残っていなかった。法廷ではAさんの供述と疫学調査の結果をもとに、業務上の災害を問わざるを得なかった。

Aさんの供述と疫学調査の結果を総合すると、勤務形態と作業環境は劣悪だった。一日8時間ずつ、一週間に6日間、三組三交代で働いた。勤務時間中はほとんど立って働き、食事時間の約20分を除けば、休憩時間はほとんどなかったと言う。

作業場の環境も良くなかった。組別に2人の職員が露光器を利用して作業したが、露光作業が上手くいかなければ『露光-洗浄-再露光』の作業を反復した。この過程で洗浄液が防塵服や手袋につくことが多かった。洗浄する場合、一日に長ければ1時間以上クリーンルームに留まった。工場がオープンになっていて、洗浄工程の臭いが露光工程にも流れた。

有害物質遮断防護服は着用できない
裁判所「高濃度化学物質に曝露した疑い」

会社側は有害物質関連の情報を提供しなかった。Aさんは「会社の関係者から取扱物質の有害性と危険要因に関するいかなる情報も提供されなかった」と供述した。作業装備と取扱物質を十分に熟知しないままで働いたということだ。

しかし、医学的所見は分かれた。Aさんの主治医は、「相当な期間の曝露がなければ パーキンソン病の発病原因として作用しないが、複合有機溶剤の曝露が原因になったという医学的な根拠は不足している」とした。裁判所の鑑定も、Aさんが非常に若くしてパーキンソン病に罹り、防護服を着ていて曝露量は多くなかったと見ている。一方、Aさんの諮問医は「揮発性有機化合物に高い濃度で2年3ヵ月間休業日なく曝露した」とし、業務関連性が高いと判断した。

裁判所は公団の判定を覆し、Aさんの手を挙げた。有機溶剤の曝露とパーキンソン病の発病との関連性が大きいと見た。裁判所は「曝露水準がかなり高く、間欠的に高濃度化学物質に曝露した」と判断した。その根拠として、安全保健公団の疫学調査の結果を提示した。公団は、すべての工程が一つの空間で行われ、化学物質が生産工程内に再流入する可能性が高かったという調査結果を発表していた。

生産工場のクリーンルームの作業環境が劣悪だったという事実も根拠になった。裁判所は、Aさんがクリーンルームの汚染を防ぐための保護装具だけを着用した状態で働き、有害物質への曝露は相当なレベルだったと判断した。三組三交代で、勤務時間が長かった点も考慮された。

あわせて、医学的・科学的な証拠が不足していることを理由にして、業務関連性がないと断定すべきではないとした。裁判所は「A氏のパーキンソン病は希少疾患で、発病事例が多くなく、疫学的な研究が行われにくく、発病原因が明確に明らかにされていない疾病」で、「医学的・科学的な証明がないという事実だけで、業務との因果関係を簡単に排斥してはならない」と明らかにした。

Aさんを代理したパク・ダヘ弁護士は「裁判所が電子産業の業務上の疾病の判定に関する最高裁判所の判例の趣旨を適用して判断したものとみられる」とし、「勤労福祉公団が見逃した疫学調査の結果とAさんの供述をもとに、フォト工程の有害性と曝露レベルが認められた」と評価した。

サムソン電子半導体のユーチューブ動画より 2022年4月21日 ホン・ジュンピョ記者

http://www.labortoday.co.kr/news/articleView.html?idxno=208491