新型コロナ感染後に死亡したタクシー労働者に『労災(産災)』認定 2021年10月01日 韓国の労災・安全衛生

資料写真/チョン・キフン記者

勤労福祉公団がコロナ19に感染した後に亡くなったタクシー労働者の死を、業務上災害と判定した。疫学調査では感染経路が明らかにならなかったが、労働環境を総合的に考慮すれば、仕事で病気に罹ったと見られると判断した。利用者が不特定な大衆利用施設で働く労働者が感染した場合に、産災を認められる先例になるものと見られる。

勤労福祉公団によれば、ソウル業務上疾病判定委員会は24日の審議会議で、タクシー労働者アン・某(死亡当時66才)さんの死を産業災害と判定した。

ソウルのタクシー会社に所属するアンさんは、午後4時から翌日の明け方4時まで、一日12時間ずつ週6日勤務をした。昨年8月29日から悪寒・疲れからくる風邪の症状が現れて、直ぐに三回にわたって病院で治療を受けたが、状態が好転しなかった。同年9月1日、二度目の診療後は自宅で休んだが、翌日は再び仕事に出た。その後、身体の状態が急激に悪化し、9月4日に保健所でコロナ19の検査を受けた翌日に陽性と判定された。判定当日から病院に入院して治療を受けたが、10月4日に肺炎で亡くなった。コロナ19と判定されて僅か一ヶ月後だ。

防疫当局の疫学調査では、感染経路不明という結論が出た。何時、誰から感染したのか確認できないということだ。遺族はコロナ19による死亡は産災に該当するとして、今年7月、公団に遺族手当を請求した。

裁判所と公団は、産災を証明する責任は業務上災害を主張する労働者にあるとする。仕事によって病気に罹ったことを証明しなければ、産災の承認が難しい構造だ。

遺族は、家族感染がないばかりか、アンさんは業務以外で個人の時間を過ごすことは大変少なかったとして、仕事中に感染した可能性が極めて大きいと主張した。疾病判定委の判断も同じだった。疾病判定委は「故人のコロナ19への感染経路は明確ではないが、発病前に私的に会った人たちに発病が確認されず、家庭内感染が確認されないこと、タクシー運転手の職業的な特性上、密閉された空間で不特定多数と密接な接触があり、業務遂行中の感染であることを排除できない。」「故人の傷病は業務上の要因によって発病したもので、業務との相当因果関係が認められる」という結論を出した。

労働者の立証責任を緩和した疾病判定委の判定は突然出たのではない。公団は『感染病の業務上疾病の調査と判定指針』を制定して、3月から施行している。これには無症状感染など、感染経路の把握が難しい場合の産災判断の手続きを説明しているが、『業務遂行過程で感染する可能性』を基準として調査するとしている。作業環境や事業場内の集団感染の有無、防疫指針遵守の有無、被災者の感染病の危険要因との曝露などを考慮して、『可能性の大小』を調べることにした。労働者の立証責任を緩和する措置だ。

公団の指針制定以後、疫学調査で正確な感染経路が確認されない労働者数人が産災と認められた。公団の関係者は「コロナ19ワクチンの接種以後に後遺症が起きた看護補助者が、疫学調査ではワクチンと因果関係がないとされたが、業務とワクチン接種に因果関係があると判断して、産災と承認したことがある。」「産災の審査の過程で、疫学調査の結果を参考にするものの、業務上の因果関係を綿密に判断する流れ」と説明した。

遺族を代理したクォン・ヨンイル公認労務士は「何時、誰から染ったの判らないのが感染病の特徴で、疾病判定委が可能性を基準として産災を承認したことは、産災労働者の受給権を保障する側面から意味のある決定」とし、「タクシーやバスなど、大衆利用施設の労働者が感染源不明で陽性になった時も、産災と認められる可能性が生まれたという点でも意味がある」と評価した。

2021年10月1日 毎日労働ニュース チェ・ジョンナム記者

http://www.labortoday.co.kr/news/articleView.html?idxno=205209