心理社会的リスクを管理するための新しいISO規格-欧州労働組合総連合(ETUC) 2021.8.25

国際標準化機構は最近[6月8日]、職場における心理社会的リスクに関する新しい規格を発行した。ISO45003は、心理社会的リスクを管理するためのガイドラインを提供して、事業場がその実行について認証を受けられるようにしている。

心理社会的リスクは、労働関連ストレス、抑うつやバーンアウトなど、心理的危害を引き起こす可能性のある労働環境のあらゆる側面をカバーしている。典型的な例としては、きつい締め切りで仕事をしなければならないこと、意思決定への関与が十分でないこと、コミュニケーションの不足や相反する要求などがある。組織にとって、心理社会的リスクは、欠勤によるコストの増加、効果的な仕事をする能力の低下、スタッフの離職率の増加や組織の評判の低下などをもたらす。

この新しい国際規格は、40か国の専門家によって構成された委員会によって開発され、実用的で理解しやすいものをめざしている。ISO45003は、あらゆる規模、あらゆる分野の組織に適用可能で、労働安全衛生や人事の専門部署を必要としていない。BSI(英国規格協会)の規格担当ディレクターであるスコット・スティードマンは、この新規格を「あらゆる組織のためのグッドプラクティスのコンセンサスであり、企業がビジネスニーズを満たす努力をしながら従業員のウェルビーイングを向上させることができるように、企業にすぐに使える助言を提供するもので、双方にとって有益な結果をもたらすもの」と表現している。

しかし、欧州労働組合総連合(ETUC)は、EUにおける「国際規格の優位性」に対して懸念を表明している。ETUCの規格化担当の連合書記であるイザベル・シューマンによれば、「ISO規格がEUの価値や権利に準拠している保証はなく、欧州レベルの場合のように労働組合や社会的関係者に何らかの役割を提供するものでもない。これらの問題がISOで徹底的に取り扱われているのでない限り、EUはこのような国際規格のプライオリティの概念を適用することを再考すべきである」。

より一般的には、ETUCは、標準化は銀の弾丸ではなく、いくつかの問題は法律または労働協約で対処するほうがよいと想起している。最初のロックダウン以来、ETUCは、心理社会的リスクに特化した指令の採択を求めている。そのような指令は、すべての職場に影響を与えるストレスの急増に対処するのに役立ち、主に心理社会的性質のリスクにさらされている在宅労働者にとって大きな進歩となるだろう。
https://www.etui.org/news/new-iso-standard-managing-psychosocial-risks
国際標準化機構はISO45003を以下で無料で読めるようにしている:https://www.iso.org/obp/ui/#iso:std:iso:45003:ed-1:v1:en
ISO45003はISO45001に準拠していると言われているが、後者については2018年7月号参照