全国一斉・アスベスト健康被害ホットライン 0120-349-931 NPO法人アスベスト被害者救済基金が実施

東西の救済基金が全国対象に

NPO法人アスベスト被害者救済基金(神戸市)とNPO法人じん肺・アスベスト被災者救済基金(横須賀市)が共同で、アスベスト被害者を対象とした無料電話相談を、8月21、22日の両日開設。全国からの相談を受け付けている。

石綿被害の電話相談開設 21日から2日間 神戸のNPO

神戸市のNPO法人アスベスト被害者救済基金は21、22日、全国一斉アスベスト(石綿)健康被害ホットライン(フリーダイヤル0120・349・931)を開設する。30~50年の潜伏期間がある中皮腫などの石綿関連疾患は、当時の労働記録が失われて被害の確認や証明にハードルがあるが、相談をきっかけに労災認定や国家賠償に結びつくケースが出ている。【山本真也】

石綿被害の救済制度は、労災保険や2006年に成立した救済法に基づく療養手当の支給などがある。21年6月には立法措置で建設現場で働いた被害者への給付金の支給が決まった。ただ、工場の被害者は裁判を起こし、一定の要件を満たさないと賠償を受けることができない。ホットラインは、救済の網からこぼれる被害者を掘り起こすため、NPO法人じん肺・アスベスト被災者救済基金(神奈川県横須賀市)と共催し、17年から実施している。
 19年に相談した兵庫県内の男性は、1963~69年に石綿製品製造工場で働き、石綿関連疾患を発症して2012年に労災認定を受けた。基金は労働基準監督署が収集した労災記録の入手を勧めたものの、男性は20年3月、73歳で亡くなった。遺族が同10月、国を提訴し、近く神戸地裁で和解が成立し、賠償を受ける見通しという。
 大阪府の元大工の男性(93)は肺がんを発症し、石綿健康被害救済制度で月約10万円の療養費が認められたが、石綿を吸引した作業期間が不明として労災は不支給となった。基金の聞き取りで、具体的な作業内容が判明。陳述書にまとめて審査請求し、労災認定を受けることができた。
20年に中皮腫を発症した大阪府の男性(73)は、定年退職まで勤めた厨房(ちゅうぼう)機器製造会社で石綿製品を取り扱っていた。会社側に労災申請の協力を求めたが拒まれたという。基金は、労災申請の際に「事業主の証明を得られなかった」と説明するようにアドバイス。男性は21年3月に労災認定された。

基金によると、1995~2019年に中皮腫で2万6608人が亡くなった。労災など何らかの補償を受けた人は1万7501人で救済率は65・8%にとどまる。肺がんの場合、喫煙との区別などハードルが高く、救済率は11・2%しかない。基金の西山和宏事務局長は「一人で悩み、救済を諦めている被害者が多い。まずは気軽に相談してほしい」と呼びかけている。

ホットラインは両日ともに午前10時から午後6時まで。内容により、医療機関や弁護士を紹介する。


毎日新聞2021年8月20日