息子のクパンでの過労死を知らせようと全国巡回した両親  2021年6月17日 韓国の労災・安全衛生

17日、クパンの本社前で行われた記者会見に、昨年10月12日に過労に亡くなったクパン物流センターの故チャン・トクチュン労働者の遺族が参加して、再発防止対策作りを求めた。/民衆の声

「月曜日は息子の28回目の誕生日でした。」

クパン漆谷物流センターで働いた息子(故チャン・トクチュン)が過労で亡くなった後、初めて迎えた息子の誕生日。母親のパク・ミスクさんは「妹が準備したケーキのロウソクに火を点けたが、その火を消す人がいなくて、茫然と燃え上がる28個のロウソクを見ているだけだった。家族の誰も話ができず、しばらくそんな沈黙の時間を過ごした」と話した。

17日、クパンの本社前で行われた記者会見で、母親はこのように話した。

この日遺族がここに来た理由は、彼の家族が経験したようなことが再び起きないように、クパンに再発防止対策を促すためだ。遺族は再発防止対策作りを求める文字が書かれたトラックに乗って、5月12日に大邱から釜山、慶南、光州、全州、大田、天安、京畿、仁川などを通って、ソウルに到着した。そしてクパンの本社前で記者会見を行って、「どうか、私たちのような悲劇をここで止めて欲しい」と訴えた。

17日、クパン本社の前で行われた過労死対策委の記者会見。/民衆の声

「今でも多くの日雇い青年が、生命と健康を交換している」

27才のチャン・トクチュンさんは太極拳4段の頑丈な青年だった。しかし、クパン物流センターで夜間アルバイトを始めた後、1年4ヶ月で75kgだった体重が60kgになった。午後7時から一日中、8~9.5時間間の『深夜労働』をした。蒸すように暑い物流センターで、4~5kgのボックスを数えきれない程運ぶ辛い労働で、身体が壊れていたのだ。結局、彼は昨年10月12日、退勤後に浴室で倒れて亡くなった。

チャンさんの過労死以後、クパンは遺族との面談を拒否し、産災認定の資料の要求にも協力しなかった。「クパンの時間当り生産量システムによる過酷な労働が、息子を死に追い込んだ」という遺族の主張を、事実ではないと反論したクパンは、今年2月、勤労福祉公団からチャンさんの産業災害が認められると直ぐに、始めて「勤労者たちが安全な環境の中で働ける条件を作ることに最善を尽くす」という考えを表明した。

昨年10月26日の国会での聴聞会、今年2月22日の国会での産災聴聞会などで、チャンさんの過労死が扱われたが、クパンは遺族と宅配労働者過労死対策委が受け容れられるような再発防止対策を出さず、その後は遺族との対話も行わなかった。

遺族が5月13日からトラックに乗って全国を巡回し、息子の過労死を知らせ始めた理由だ。

記者会見で、過労死対策委のパク・ソグン常任代表は「本当に深刻なことは、今の瞬間も、クパン物流センターで数多くの日雇いの青年たちが、何の保護措置もなく夜間労働をしながら、生命と健康を交換しているということ」だと強調した。続けて「コロナ19などで、青年の働き口がない社会的な災難状況に便乗して、屈指の大企業が社会的な責任を放棄したまま、基本的な義務を履行していない」とし、納得できるような再発防止対策を出さないクパンを批判した。

母親のパクさんは「(マスコミに報道される時だけ)しばらくは解決するかのようにふるまい、時間が経てば忘れてしまう姿、遺族が疲れるのを待っている姿を見るとき、息子が話していた『私たちはクパンに勝てません』という雷が頭に落ちる。」「なぜ労働者が自分の生命を担保に働かなければならないのか。労働者の安全を保障して欲しいという要求は無理な要求なのか。労働者も人間として尊重される権利は、クパンにはないのか」と嘆いた。

パクさんは「クパンが答えるまでずっと闘い抜く。」「それが、息子を守れなかった両親にできる最後の仕事だ」と話した。

遺族と過労死対策委は記者会見文で、クパンに△日雇い中心の雇用を正規職中心に変えて、夜間労働を最小化、△夜間労働時にも十分な休憩時間の保障、△休める十分な空間の準備、△職場に冷暖房施設を備えて、労働者が寒さと暑さから自分を保護しながら働けるように保障、などを要求した。また政府には△クパンに対する大々的な特別勤労監督の実施、△法を迂回したクパンの事業拡張に対する規制・管理・監督、などを要求した。

一方、クパンの関係者は、この日は過労死対策委と遺族の記者会見に関する考え方を整理できなかったと答えた。

この日全国巡回闘争を終えた父親のチャン・グァンさんは、記者会見の後「若い人たちだけでなく、多くの人はクパンをただ『安い宅配会社』くらいに認識している。私が1千ウォンを惜しむことで、一人が死ぬということを全く知らなかった」と、全国巡回闘争をしなければならなかった理由を説明した。

2021年6月17日 民衆の声 イ・スンフン記者