労災3件中2件は隠蔽…労組加入率が高いほど発生・隠蔽減少 2021年5月24日 韓国の労災・安全衛生
労働組合の組織率が高くなるほど産業災害の発生と隠蔽が減るという研究結果が出た。国内で発生する産災の3件中2件は隠蔽されていると分析された。
韓国労働研究院のキム・ジョンウ専門委員が、2月に学術誌『産業労働研究』に発表した『労働組合は産業災害発生と隠蔽にどんな影響を及ぼすのか』の論文で明らかにした。論文は、2年毎に韓国の30人以上の事業体を代表する標本事業体を抽出して追跡調査する、事業体パネル調査の2011~2017年分を分析した。
論文によると、労働者1人当りの産業災害発生対比隠蔽率は66.6%だった。実際に産業災害と認定されるケースに比べて、2倍程度の産業災害が隠蔽されているという意味だ。これは韓国の産災隠蔽率を64~82.7%と分析した他の研究と一致する結果だ。産災隠蔽率は1人当りの産災発生率から1人当りの産災認定率を引いた値だ。キム専門委員は「事業体パネル調査が30人以上の事業体だけを対象にし、30人未満の事業体の産災隠蔽のインセンティブがより大きいと仮定すると、全体の産災隠蔽率は推定結果よりも大きくなるだろう」と話した。
労組組織率が1%高くなれば産災発生率は0.7%、産災隠蔽率は4.1%減ることが明らかになった。労組が産災の発生と隠蔽のいずれも減らす役割をしているという意味だ。キム専門委員は「労組の力が強くなるほど、作業現場で産業安全の水準を向上させる設備投資や教育訓練などを強制する方向で使用者に圧力を掛けて、産災の発生レベルを低くしていることを示唆する。」「発生した産災が公傷処理などで隠蔽されないように、報告を積極的に強制する監視人の役割を、労組がしている」と分析した。
『危険の外注化』も数値で確認された。論文で、直接雇用非正規職の比率が1%増えれば、1人当りの産災発生率は0.7%増えることが明らかになった。この分析からは、該当事業者と直接勤労契約を結んでいない下請け、委託、派遣など、間接雇用の非正規職は除外された。
韓国は経済協力開発機構(OECD)会員国の中で、産災死亡が最上位圏だが、軽傷を含む全産災発生率は平均以下だ。隠蔽がほとんど不可能な死亡事故を除く多くの産災が、広範囲に隠蔽されているためだ。キム専門委員は「(使用者が保険料を全額負担する)産災保険基金が利用されるべき産災補償費用が、(産災の隠蔽によって)国民健康保険で充当され、国民全体の負担に転嫁されている」とし、「これは保険の原理に符合しないだけでなく、資源の分配に歪曲を生じさせる」と指摘した。
2021年5月24日 京郷新聞 チョン・テヨン記者
http://news.khan.co.kr/kh_news/khan_art_view.html?artid=202105241300001&code=940702