EU新アスベストガイドライン:空気監視/労働におけるアスベスト関連安全衛生リスク管理のためのガイドライン~2025.12.18 欧州委員会

6 空気監視【空気モニタリング】

6.1 はじめに

【囲み6-1:空気曝露測定の目的】

指令2009/148/EC(AWD)[労働におけるアスベスト指令]第6条:
…作業の場所におけるアスベストまたはアスベストを含有する物質から生じる粉じんへの労働者の曝露は、最小限に、かつ、いかなる場合においても、第8条に定められる関連する限界値を下回る、技術的に可能な限り低いレベルに、低減されなければならない…[…]
指令2009/148/EC(AWD)第7条(1):
1. 初期リスク評価の結果に応じ、また、第8条に定める関連する限界値の遵守を確保するため、作業の場所における空気中の石綿繊維の測定は、特定の作業段階において、定期的に実施されなければならない。
指令2009/148/EC(AWD)第10条(1):
1. 第8条に定められる関連する限界値を上回る場合、または、作業の前に確認されていないアスベストを含有する物質が粉じんを発生させるほど撹乱されたと信じるに足る理由がある場合、作業をただちに中止しなければならない。
 関係する労働者の保護のための適切な措置が講じられるまで、影響を受けた区域内で作業が継続されてはならない。
 第8条に定めれる関連する限界値を上回る場合、可能な限り速やかに、限界値を上回る理由が確認され、状況を是正するために適切な措置が講じられなければならない。

空気監視[モニタリング]は、OEL[職業曝露限界]の遵守及びリスク評価の準備の支援を含め、様々な目的(セクション6.3参照)のために必要である。いずれの場合も、空気監視が、実施される実際の作業活動を反映することが重要である。
空気監視では、ポンプに取り付けられたサンプリングヘッドを用いて空気をフィルターに吸引し、測定された体積の空気から粒子状物質を採取する。フィルターは、顕微鏡で観察され、採取された空気中繊維の数が測定される。採取された空気中の繊維のこの定量的測定値は、空気中吸入性繊維濃度と呼ばれる。

【囲み6-2:曝露限界】

指令2009/148/EC(AWD)第8条:
1. 2029年12月20日までは、使用者は、いかなる労働者も、8時間の時間加重平均(TWA)として、0.01繊維/cm3を超える空気中アスベスト濃度に曝露されないことを確保しなければならない。
2 .  2029年12月21日からは、使用者は、いかなる労働者も、以下を超える空気中アスベスト濃度に曝露されないことを確保しなければならない。
 a) 第7条(7)第7項に従って、8時間TWAとして0.01繊維/cm3、または
 b) 8時間TWAとして0.002繊維/cm3
3. 加盟国は、使用者が、第2項に定められる限界値の少なくともひとつを遵守することを確保しなければならない。
指令2009/148/EC(AWD)第7条(7):
7. 第1項で言及される空気中のアスベスト繊維の測定のために、長さ5ミクロン超、幅3マミクロン未満、かつ長さ/幅比が3:1より大きい繊維のみが考慮される。
本項第1項の規定にかかわらず、2029年12月21日からは、幅0.2ミクロン未満の繊維も、第8条(2)(a)のために考慮される。


試料[サンプル]で測定される繊維濃度は、PPE[個人用保護具]及び呼吸用保護具(RPDs)などの管理措置が実施されていたり、または試料が固定された場所で採取されたかもしれないことから、必ずしも実際の個人曝露を代表するとは限らない。
場合によっては、空気中のアスベスト繊維は、職場活動からではなく、アスベストの自然背景(環境)レベルに起因して存在しているかもしれない。

6.2 職業曝露限界の定義

6.2.1 繊維の定義

指令2009/148/ECでは、OEL測定のための繊維の定義は現在、長さ5μm超、幅3μm未満、かつ長さ/幅比が3:1より大きい繊維に適用される。

6.2.2 曝露限界

アスベストまたはアスベストを含有する物質(MCAs)から生じる粉じんへの労働者の曝露は、最小限に、かつ、いかなる場合においても、囲み6-2に記載されるOELを下回る、技術的に可能な限り低いレベルに、低減されなければならない。
2029年12月21日からは、使用者は、測定に幅0.2μm未満の繊維を含めるか否かに応じて、2つのOELオプションのいずれか(囲み6-2参照)を適用する必要がある。幅0.2μm未満の繊維が測定に含まれる場合、OELは8時間TWA[時間加重平均]で0.01繊維/cm3となり、含まれない場合、より厳格なOELである0.002繊維/cm3が適用される。
指令2009/148/EC[AWD:労働におけるアスベスト指令]は、繊維幅の下限を定めていない。ただし、一部の加盟国は「細いアスベスト繊維」を定義している。例えばフランスでは、直径0.01~0.2μmの繊維と規定している(0.01μmは分析検出限界を示すものであって、健康閾値ではない)。INRS[フランスの国立研究所]の研究は、空気試料分析において細い繊維を除外する場合の影響を示している。

6.3 空気監視の目的

空気監視は、アスベストへの職業曝露を防止及び管理する枠組みにおいて、以下の重要な目的を果たす。

■ リスク評価の支援
■ アスベストに関するOELの遵守の確保(囲み6-2参照)
■ 曝露最低限要求事項の遵守の検証(囲み6-1参照)
■ アスベストへの曝露の管理における有効性を確認するための管理措置の設計及び検証
■ RPD[呼吸用保護具]の適切な選択の検証
■ OEL(囲み6-2参照)を上回る及び非常に高い曝露につながるインシデントの双方に関する管理手順におけるインシデント及び不備の確認
■ 除染手順の有効性の検証
■ 受動曝露の対象となる労働者の確認、セクション7参照
■ 健康監視の必要性の評価、セクション10参照

6.4 誰が曝露評価に責任があるか?

使用者は、アスベストへの曝露の評価に責任を負う。労働者が関連するOELを上回る空気中アスベスト濃度に曝露されないことを確保するとともに、曝露レベルを可能な限り低減しなければならない(指令2009/148/EC第6条参照)。建物内での曝露が関わる場合、使用者は、建物所有者またはプロジェクト所有者、プロジェクト設計者及び安全衛生のコーディネーションに責任を有する者と連携して、建物内のアスベストの存在及び状態を把握させる必要がある。アスベストの確認に関する詳細については、セクション5参照。
空気サンプリングは、労働衛生の原則について十分な訓練及び経験を有する適切な資格を有する者(以下「鑑定士]」という)によって実施されなければならない。一部の加盟国(アイルランドなど)では、この役割に対する特定の資格が要求される。

6.5 空気監視を実施する時期

空気監視のタイミングは、その目的によって異なる、セクション6.3節参照。
アスベストまたはMCAs(セクション4参照)による粉じんへの曝露リスクを伴う可能性のある活動は、労働者の曝露の性質及び程度を判断するためのリスク評価の対象にならなければならない。空気監視は、リスク評価に情報を提供するとともに、適切な管理措置の決定を援助することによって、このプロセスを支援する。
アスベスト粉じんの潜在的なレベルに関する初期(ただし正確ではない)指標は、文献または国のデータベース(フランスで使用されているScol@mianteツールなど)の既存の監視データを用いて判定することができる。ただし、このようなデータは、管理措置の選択を手引きし、また、初期リスク評価の策定を支援するための初期指標としてのみ使用すべきである。

【囲み6-3:国のデータべースによる既存の監視データを用いる例】[省略]

さらに、初期リスク評価の結果(セクション4.1参照)に応じ、また、関連するOEL(セクション6.2.2参照)の遵守を確保するために、特定の作業段階において、定期的に空気中アスベスト繊維の測定が実施されなければならない。作業慣行、工程、管理措置、曝露の頻度及び期間など、職場条件に何らかの重大な変化が生じた場合、新たな空気サンプリングが必要かどうかを判断するための評価が実施されるべきである。

6.6 空気サンプリング戦略

6.6.1 定められた職業曝露限界の遵守

【囲み6-5:空気中濃度測定の実施方法】

指令2009/148/EC(AWD)第7条(2)~(6):
2. サンプリングは、アスベストまたはアスベストを含有する物質から生じる粉じんへの労働者の個人曝露を反映するものでなければならない。
3. サンプリングは、事業場または施設の労働者及び/または労働者代表と協議したうえで、実施されなければならない。
4. サンプリングは、適切な資格を有する者によって、実施されなければならない。採取された試料はその後、繊維計数のための設備を備えたラボラトリにおいて、第6項に従って分析されなければならない。
5. サンプリングの時間は、測定または時間加重計算によって8時間の参照期間(1シフト)について代表的な曝露を確立できるものでなければならない。
6. 繊維の計数は、電子顕微鏡法または同等若しくはより正確な結果を提供する代替的方法により実施されなければならない。

空気サンプリングは、労働者のアスベスト粉じんまたはMCAs粉じんへの個人曝露を反映しなければならない。サンプリングは、事業場または施設の労働者及び/または労働者代表と協議のうえで、実施されなければならない。
EN 689:2018+AC:2019[職場曝露-化学的因子の吸入による曝露の測定-職業曝露限界値の遵守を検査するための戦略]などの関連規格は、アスベスト繊維の吸入曝露にも適用することが可能な、OELsの遵守を検査するための戦略を規定している。加盟国は、顕微鏡技術を用いて、(cm3当たり)繊維数での濃度を判定するための、メンブレンフィルターを用いた空気サンプリングに関する代替文書を提供することが可能である、付録5参照。

【囲み6-4:プロセスにおける粉じんレベル決定の例】[省略]

6.6.1.1 アスベスト曝露のリスクのあるどの労働者をサンプリングするか?

アスベスト曝露のリスクがある労働者は全員、個人曝露を評価されるべきである。解体及び改修作業以外の潜在的な曝露労働者の例については、付録10参照。
労働者は、典型的な作業タスク、頻度及び作業条件が類似した曝露プロファイルをもたらす場合、類似曝露グループ(SEG)に分類できる。例えば、ひとつの特定の建物からアスベスト断熱板を除去する作業に関わるチームの全メンバーは、ひとつのSEGとして分類される可能性がある。
EN 689:2018+AC:2019により、SEGに対して、以下のサンプリング戦略が適用される。
■ OELの遵守を判定する予備検査には、3~5回の範囲の有効な測定が必要である。
■ 曝露結果の統計的評価を可能とするには、6回以上の有効な測定が必要である。

6.6.1.2 どの活動を測定するか

測定される活動は、典型的な作業タスクを代表すべきである。代表的なサンプリングが不可能な場合、合理的最悪ケースのシナリオが評価されるべきである。

6.6.1.3 測定時間及び流量

選択されたOELの遵守を確保するために、各分析技術ごとに最小(及び最大)空気サンプリング量が設定される可能性がある。このサンプリング量を満たすために、サンプリング戦略において、測定時間及びポンプ流量の双方を考慮しなければならない。
サンプリングは、8時間参照時間(1シフト)について代表的な曝露を確立するのに十分な時間、実施されなければならない。これは、直接測定または時間加重計算のいずれかによって行うことができる。TWA計算とは、連続した時間(この場合は8時間)における平均空気濃度を指す。実際のサンプリング時間が8時間未満の場合、サンプリングされていない時間の曝露について仮定を立て、完全な8時間TWAを算出する。ただし、高粉じん環境では、フィルターが過負荷となって計数不能となるのを防止するために、逐次的サンプリングが必要となる可能性がある。
空気サンプリングは、曝露のリスクのある活動中に実施される。非活動期間は通常除外される。最小サンプリング時間は、通常1時間である。タスクに基づくサンプリング(すなわち、何らかの活動の特定の段階をサンプリングすること)は、合理的最悪ケース推定としてしばしば用いられる。
サンプリングされた空気量が、OEL以下の繊維濃度を検出するのに十分であることを確保するために、ポンプ流量は予想されるサンプリング時間に適合させられるべきである。低濃度(空気中濃度≦0.01繊維/cm3に相当)の検出を目的とする場合、労働者がアスベストに曝露される可能性が高い時間帯に、可能な限り最大の空気量をサンプリングすることが推奨される。

【囲み6-6:空気サンプルを分析する際に適切なポンプ流量及びサンプリング時間を選定する方法の例】[省略]

6.6.2 その他のサンプリング技術

6.6.2.1 定点(エリア)空気監視

定点空気監視は、労働者の参加なしに、サンプリング装置を固定位置に設置して実施される。定点空気監視は、例えば個人監視が不可能な場合に、除染の有効性を確認するために使用することができる(清掃後の空気中のアスベスト繊維濃度は、十分に低く、かつ、いかなる場合においても関連する限界値を下回るべきである)、図6-3参照。

【図6-3:定点空気モニター】[省略]

OELsが、個人の曝露を反映するサンプルに適用される一方、定点サンプリングは、特定の場所における可能性のある曝露レベルに関する貴重な情報を提供し得る。したがって、OELsは、その値が直接比較可能でなくとも、解釈上の文脈として考慮されるべきである。
前記の個人曝露サンプリング戦略に関する考慮事項は、定点モニタリングにも適用可能である。ただし、定点サンプリングでは、より高い柔軟性が得られる。例えば:
■ スタッフが現場にいない時間帯に測定を実施可能(適切な場合)。
■ サンプリング装置の位置制限が緩和される。
■ サンプリング時間がシフトパターンに制約されない。
■ ポンプを人体に装着する必要がないためポンプ流量を増加可能。

6.6.2.2 抜き取りサンプリング

抜き取りサンプリングは、空気モニタリングを補完する選択的手法のひとつである。抜き取りサンプルは、堆積した粉じん中の、自然生成アスベスト(NOA)を含めたアスベストを確認するために、定期的に清掃されない表面から採取することができる。抜き取りサンプリングはまた、清掃体制の適切性を評価したり、さらなる空気監視の優先場所の特定を支援したり、またはアスベストインベントリ更新のために活用することもできる。これには、新たなMCAsの確認及び以前に確認されたMCAsの状態の評価が含まれる可能性がある。ただし、抜き取りサンプリングでのアスベストの検出と空気中のアスベスト濃度との間には、相関関係はない。

【囲み6-7:抜き取りサンプリングの例】[省略]

6.6.3 フィルタ過負荷に対処する戦略

粉じん環境におけるサンプリングの際には、フィルターの過負荷を防ぐために、比較的少ないサンプル量が採取される。このような場合、より大きなフィルター(通常の25mmではなく47mmなど)を使用する、連続した短い測定を行う、または空気流量を変更する(セクション6.6.1.3参照)ことが可能であり、これらを集合的結果に統合することができる。
直接分析法及び間接分析法の双方が、利用可能である。
■ 直接法は、フィルターサンプルを、受け取ったまま分析する。
■ 間接法は、ある程度のサンプル前処理を伴う。これは、繊維が相対的に検出が困難で、繊維濃度の過小評価につながる可能性がある飽和サンプルに対して有利である。
間接法は通常、試料中の干渉粒子/繊維が相対的に少ないことから、分析が容易になり、分析時間を短縮する。しかし、これらの手法は、試料の特性を変化させる可能性がある。例えば、とりわけ超音波処理を適用した場合、繊維が分解され、より多くの細く薄い繊維が生じる可能性がある(フランスでは、空気試料の超音波処理は禁止されている)。したがって、試料は吸入エアロゾルを反映していない可能性がある。追加的サンプル処理は、分析結果にさらなる不確実性を生じさせる可能性がある。
試料の分析に関する情報については、セクション6.7参照。

6.6.4 現場における試料の分析

アスベスト除去中の現場[オンサイト]分析には、PCMを装備した携帯装置が一般的に使用される。最近では、携帯SEMの選択肢も登場し、現場分析能力の向上及び迅速な警報発令の可能性をもたらしている。
地理的領域全体に広く分布したラボラトリネットワークも、迅速な分析結果報告時間を支えることができる。技術の進歩及び電子顕微鏡法の利用可能性の増加に伴い、分析結果の所要時間は短縮されるだろう。これは、すでにこの手法が標準的な慣行となっている国々で観察されている。例えば、フランスでは、TEM分析が全国的に利用可能であり、結果を24時間以内に提供できるため、現場分析の要求事項を克服できる。

6.6.5 空気試料の採取に必要な機器

機器は、サンプリング及び分析のための国の方法論(利用可能な場合)または規格(付録5参照)に記載されている。サンプリング完了後、すべての機器に対して、適切な除染手順を実施すべきである、セクション8.2.2.2.2参照。

6.6.5.1 サンプリングヘッド[省略]
6.6.5.2 フィルター[省略]

6.6.6 サンプリング・ポンプ[省略]

6.6.6.1 直読式測定器

直読式測定器は、ラボラトリでのサンプル採取及び分析を必要とせず、曝露を(ほぼ)リアルタイムで監視可能とする。これらは、時間、場所及び労働者ごとの曝露の変動に関する情報を提供する。これらの測定器は、空気の継続的モニタリングに優れた手段となり得、またそれゆえ曝露の早期指標として活用することができる。
しかし、直読式測定器には現在、いくつかの限界がある。
■ 粒子状物質直読式測定器は特異性に欠ける(すなわちアスベストを特定できず、粒子状物質の存在のみを確認可能)。
■ LOD(すなわち測定可能な最低濃度)が高いことが多い。
■ 細い繊維を検出できない懸念がある。
■ 携帯可能であるが、通常は大型であるため、操作が困難で個人用モニターとして不向き。

6.7 試料の分析

試料の分析は、繊維計数のための設備を備えたラボラトリによって実施されなければならない。ラボラトリに関する詳細については、付録6参照。
EN ISO/IEC 17025:2017は、ラボラトリの能力、公平性及び一貫した運営に関する一般的要求事項を規定した国際規格である。この規格は、ラボラトリが品質管理を優先し、その能力を実証する必要性を強調している。本規格に対する認証は、正確かつ信頼性の高い結果の提供を支援するうえで重要な役割を果たす。この認証は、アスベストに特化したものではないが、ラボラトリが能力を持って運営され、有効な結果を生成することを実証することを要求し、それによって分析手法及び報告に対する信頼性を促進する。EN ISO/IEC 17025:2017認証は、組織体制、品質システム、記録の管理、要員、試験施設の環境条件、検査及び校正方法、手法の検証、設備、検査及び校正対象物の取り扱い、並びに結果の報告をカバーする。
一部の加盟国では、異なる認証要件が存在する場合がある。例えば、スペインでは、認証プログラムが、国立労働安全衛生研究所によって実施されている。したがって、関連する加盟国の制度を確認することが重要である。
分析が適切に能力のあるラボラトリによって実施されることを確保する責任は、EN ISO/IEC 17025:2017またはその他の関連規格若しくは認証プログラムに従うか否かにかかわらず、OSHに関しては、使用者に帰属する。一部の加盟国(スペインなど)では、国の権限を有する機関が、認証ラボラトリのリストを提供している。

6.7.1 試料中のアスベストの評価のための分析手法

空気中のアスベスト繊維を測定するためには、適用される繊維の定義(セクション6.2参照)に該当する繊維が考慮される。
遅くとも2029年12月21日までに、繊維計数は、EM[電子顕微鏡]法または同等以上の精度を提供する代替手法によって実施されなければならない。
一般的に用いられる3つの分析技術は、PCM[位相差顕微鏡]、SEM[走査型電子顕微鏡]及びTEM[透過型電子顕微鏡]である。後の2つの技術は図6-7に示す。PCM法では、アスベスト繊維と非アスベスト繊維を区別できず、したがって繊維の種類は特定できない。光学顕微鏡とは異なり、EMは、高倍率の画像を生成でき、試料の表面及び内部構造の微細な詳細を明らかにする。
SEM及びTEMはいずれも、電子を用いて試料の像を生成する。すべての電子顕微鏡の「カラム」には、中核機能を担う一連の構成要素が含まれる。
■ 電子ビームを生成する電子源
■ ビームを焦点化し、試料へ導く集束レンズ
■ TEMでは像を形成する対物レンズ、SEMでは走査用の集束プローブを生成する対物レンズ
■ 試料を保持し、分析される試料のサイズを決定するサンプルチャンバー
■ 画像生成の基となる信号を捕捉する検出器
SEMは、特定のコイル群を用いてビームをラスター状のパターンで走査し、二次電子と後方散乱電子を用いて試料表面の画像を生成する。TEMは、
試料を通過した電子を検出することで、結晶配列や形態などの内部構造を明らかにする。SEMは通
常、EDXA[エネルギー分散型X線回折]を用いて繊維の元素組成を決定する。TEMは、EDXAと
SAED[制限視野電子回折]を組み合わせることで元素組成及び結晶構造の双方の情報を提供し、より確実な繊維同定を可能にする。

【図6-7:走査型電子顕微鏡及び透過型電子顕微鏡の基本要素】[省略]
【図6-8:ラボラトリ分析技師が使用するPCMの画像】[省略]
【図6-9:SEMを用いた画像】[省略]
【図6-10:AIによる微細繊維を含む繊維の検索及び検出を資格を有する技術者による分析(化学分析及び回折分析)の前に実施する】[省略]
【図6-11:資格を有する技術者によるAIによる微細繊維を含む繊維の検索及び検出(化学分析及び回折分析)】[省略]

分析技術は、各加盟国におけるAWDの移行によって決定される。各加盟国における適用される規則及び慣行の詳細については、国の法令を参照されたい。追加的基準は、付録5に記載されている。
各分析手法(例えば、WHO 1997、ISO 14966:2019、ISO 10312:2019及びISO 13794:2019)で定義されるプロトコルは、フィルター汚染及び非アスベスト物質の誤識別の影響を制限するように設計されている。(間接法または半分のサンプルを使用する場合など)追加のサンプル処理が汚染のリスクを高める可能性がある。このリスクを最小化するために講じた措置は、報告書に記載されるべきである。
背景またはブランクフィルターの結果は、採取したフィルター結果から差し引くべきではない。ブランクフィルターで観察された汚染は調査し、メンブレンフィルターのロット間の一貫性を監視すべきである。
ブランクフィルターの種類には、以下が含まれる。
■ サンプリングメディアブランク。フィルターロットの品質を検証するために使用される。これらは未使用フィルターが入った箱から取得され、サンプリング前に取り付け及び計数され、ロットが満足できるものであることを確認する。初期手順は、フィルターを使用する前に、各メーカーのロットから少なくとも4枚のブランクフィルター(または大規模ロットからは最低1%)を選択することである。
■ フィールドブランク。現場での汚染評価に使用される。これらは活動固有のものでなければならず、活動ごとのサンプリング日数につき少なくともひとつのブランクを採取する。フィールドブランクは通常、実際のサンプルで20本以上の繊維が計数された場合にのみ分析される。
■ ラボラトリブランク。ラボラトリ汚染を評価するために使用される。サンプルバッチごとに少なくともひとつのブランクが分析されるべきである。ラボラトリブランク分析の頻度は、ラボラトリの内部品質管理(QC)措置で定義されるべきである。

6.7.2 分析感度

6.7.2.1 検出限界

LOD[検出限界]とは、標準的な顕微鏡設定による繊維計数において、90%の確度(ポアソン分布に基づく)で測定可能な最低濃度である。LODは、測定技術及び分析手法によって決定され、それぞれに技術的限界が存在する。
以下のいずれを使用する場合でも、幅が0.2μmを超える繊維のみしか可視化されない。
■ PCM(500倍拡大)
■ 通常SEM(2,000倍拡大で走査し、繊維幅を10,000倍拡大で測定)
したがって、測定が0.01繊維/cm3の8時間TWA OELオプション(セクション6.2.2参照)を満たすことを意図する場合、これらの方法は2029年12月21日からはもはや適切ではなくなり、より厳格なOEL(8時間T
WAとして0.002繊維/cm3)を遵守する必要がある。
細い繊維(すなわち幅0.2μm未満のもの)は、高分解能SEM(HR-SEM)及びTEM法(最低10,000倍倍率)を用いて検出可能である。これらの技術は、検出限界は低いものの、実施により多くの時間及び経験を要する。高倍率化は視野を狭めるため、1画像あたりの捕捉繊維数が減少し、同じフィルター領域を分析するにはより広い視野が必要となる。これによって分析時間が延長され、人的ミスの可能性も高まる。結果として、繊維数をフィルター全面に外挿する際の不確実性がより大きくなる可能性がある。それでもなお、空気サンプルの分析に細い繊維を含めることはきわめて重要である。なぜなら、それらを検出できない分析法は、検出可能な方法と比較して、アスベスト濃度を過小評価するからである。
ISO 14966:2019の仕様に基づき、EDXAは、幅0.2μm以上の繊維に適用可能であり、EDXA単独では細い繊維の確認には信頼できない可能性がある。TEMでは、EDXAとSAEDの双方を併用することで、幅0.2μm未満の繊維に関してであっても、SEMよりも高い信頼性で繊維の同定が可能となる。
セクション6.7.1で述べるように、PCM法は、アスベスト繊維と非アスベスト繊維を区別できず、繊維の種類は特定できない。このため、EM法と比較して精度が大幅に制限される。将来の技術進歩としては、PCMをその他の技術(蛍光法など)と組み合わせることで、繊維識別能力を向上させる可能性が考えられる。
一部の加盟国では、PCM法は、EM法で要求される測定を補完する役割で引き続き使用される可能性がある。とりわけ建築/解体現場において、繊維濃度を頻繁に確認したり、より迅速な警告を得る目的などで使用される(繊維濃度の予期せぬ著しい増加については、セクション6.6.4参照)。しかし、(細い繊維を含め)アスベストの存在を検証し、適用されるOELの遵守を示すためには、EM法(または同等以上の精度が得られる他の方法)が用いられるべきである。
いずれの場合でも、繊維を計数するために採用される手法は、各加盟国におけるAWDの国内法化に基づき、国レベルで決定される。

6.7.2.2 定量限界

LOQ[定量限界]とは、標準的な手法を用いて確実に測定可能なアスベスト繊維の最低濃度を指す。より低いLOQの手法は、より低い繊維濃度をより高い信頼性で検出可能であるため、より感度が高いとみなされる。
アスベストの空気サンプリングにおいて、手法の感度、ひいてはそのLOQは、以下の複数の要因に依存する。
■ フィルター沈着面積(通常、使用する25~50mmフィルターとして設定値)
■ 採取される空気量(流量及びサンプリング時間の双方に関連)
■ 分析されるフィルターの表面積
後の2点は、必要に応じ、感度を向上させるために調整可能である。空気量に関する考慮事項については、セクション6.6.1.3参照。
EM法の感度を高めるに、より多くのフィルター表面を分析することができる。しかし、これにより分析に必要な時間が増加する。今後の進歩では、自動化されたEM分析によってこの制約に対処することをめざしており、これにより検査されるフィールドの数が増加し、これらの手法の効率が向上する。自動化されたAI支援顕微鏡検査及びEDXA分析の活用により、ラボラトリではフィルターの一部、または全体を、人間の分析者と比べてはるかに少ない労力で評価できるようになる。

【囲み6-8:TEM、AI支援顕微鏡検査及びEDXA分析の例】[省略]
【図6-12:左:AI支援による角閃石及び蛇紋岩繊維の検出。右:AI支援による微細繊維及び塊の検出】[省略]

6.8 報告

空気監視結果の詳細を記載した報告には、以下を含めるべきである。
■ 背景情報
▶ 測定を実施及び分析した評価者及び機関が保有する資格及び/または認証に関する言及を含め、測定を実施した評価者及び機関の詳細、並びに認証の要求事項に関する詳細については、付録6参照
▶ 評価の目的
▶ 施設の名称及び住所
▶ 職場要因及び労働条件の詳細(実施されているすべての管理措置及びそれらの使用状況を含む)
▶ サンプリングの日時
▶ 測定手順
▶ 使用機器(シリアル番号を含む)
▶ フィルター通過空気量
▶ サンプル固有識別子
▶ ポンプの校正-使用機器及び結果
▶ サンプリング開始時刻及び終了時刻
▶ サンプリング実施場所
■ モニタリング中になされた観察
■ 採用した分析手法の詳細(フィルターの分析対象表面積を含む)
■ 採用した標準的手法の詳細(逸脱事項を含む)
■ 試料前処理方法の詳細
■ LOD及びLOQ
■ フィルターサンプルの結果
▶ 原データ、すなわち計数された繊維を各々の長さ及び幅とともに示した表
▶ 関連するISO手法で記述されているようなプロトコルを用いた、上限及び下限の95%信頼限界
▶ 名目値自体を使用する場合と比較して保守的なアプローチとして、名目値の95%信頼区間の上限値を使用した、関連するOEL(セクション6.2.2参照)との比較
■ ブランクフィルター結果を含め、QA[品質保証]の詳細

6.9 曝露レベルの計算

空気サンプリングを実施する資格を有する者が、分析結果に基づき個人曝露レベルを計算する。これは、繊維分類(セクション6.2参照)で計数された繊維数、検査した画像フィールド数及び画像フィールドごとのサンプリング空気量(使用したフィルターの有効直径を考慮)を考慮して行われる。結果は、繊維/m3での数値平均繊維濃度として表され、特定の繊維種、全アスベスト繊維または全無機繊維のいずれかについて計算される。
EM法に関しては、結果には、結果の不確実性を評価するために、95%信頼区間の上限及び下限も含めるべきである。この値は、セクション6.2.2で概説する2つのOELオプションのいずれかと比較することができる。
RPD[呼吸用保護具]が適用される場合、労働者の曝露を計算する際に、これが考慮されるべきである。RPDが推奨どおり着用及び維持されていると仮定した場合(セクション8.2.6参照)、指定保護係数(APF)を用いて、予想される個人曝露を推定することができる。例えば、APF10のRPDを選択すれば、個人曝露は空気モニタリング結果の10分の1に低減される(セクション8.2.6参照)。

6.10 監視結果の解釈及び是正措置の実施

6.10.1 職業曝露限界の遵守の評価

OELの遵守を評価するために、検査が実施されるべきである。
例えば、EN 689:2018+AC:2019規格は、OEL
の遵守を評価するための予備的及び統計的検査の双方を規定している。予備的検査では、SEG内の全結果が以下を下回った場合にしか、「遵守」結果を提供できない。
■ 有効測定値が3つの場合:OELの10%以下
■ 有効測定値が4つの場合:OELの15%以下
■ 有効測定値が5つの場合:OELの20%以下
統計的検査では、遵守の判定のためのプロセスはより複雑である。「遵守」結果は、SEG内の測定値の5%未満がOELを超過する確率が少なくとも70%以上である場合に達成される。これらの検査は、同規格またはその他の適切なプロトコルに定義されているとおりに実施され、結果は、明確に記述されるべきである。

6.10.2 監視データの理解

監視データで何をするかについての理解は、サンプリングの目的によって異なる、セクション6.3参照。

6.10.3 是正措置

曝露が限界値を上回る場合、作業をただちに中止するとともに、影響を受けた区域では、関係する労働者を保護するために適切な措置が講じられるまで、作業が継続されてはならない。
限界値を上回る理由が確認されなければならない。インシデント管理に関する情報については、セクション11参照。

6.11 記録及びコミュニケーション

使用者は、作業の過程においてアスベストまたはMCAsから生じる粉じんに曝露される、または曝露される可能性のある労働者の登録を保存しなければならない。この登録には、彼らが対象となった曝露を明記しなければならない。
その後の是正措置の詳細を含め、完全な空気監視報告は、ファイルに保管され、今後のリスク評価見直しのために活用されべきである。労働者個人の曝露結果の詳細は、曝露のレベル及びその解釈が得られた後、当該労働者と協議されべきである。この情報は、雇用終了時に書面で、労働者に提供されなければならない。
空気監視結果及びその重要性の説明は、労働者及び/または労働者代表がアクセス可能でなければならない。結果が限界値を上回る場合、関係する労働者及び労働者代表は、可能な限り速やかに通知され、講じられる措置について協議され、または、緊急の場合には、講じられた措置について通知されなければならない。
一部の加盟国では、曝露評価データを労働当局に提出することが義務づけられている。
曝露監視結果はリスク評価の見直し及び更新に活用されるべきである、セクション4.1参照。

https://employment-social-affairs.ec.europa.eu/document/70526012-b741-4092-ab52-3bae8de2a1b0_en

安全センター情報2026年5月号