宇宙放射線被ばくによる乗務員の白血病、裁判所で初の『労災』認定/韓国の労災・安全衛生2025年9月8日

大韓航空

宇宙放射線への被ばくによる航空機乗務員の急性白血病の発病が、裁判所で労災と認められた。勤労福祉公団が乗務員の放射線被ばくによる発病を労災と認めたことはあったが、裁判所がこのような判断を行ったのは初めてだ。

京郷新聞の取材を総合すれば、先月28日にソウル行政裁判所は、元大韓航空乗務員のAさんが2024年2月勤労福祉公団に提起した療養不承認処分取り消し訴訟の一審で、原告勝訴判決を行った。裁判所は判決文で「傷病と原告の業務との間に相当な因果関係があると見なければならない。」「この事件の処分は違法だ」と判示した。

Aさんは2009年に客室乗務員として大韓航空に入社した。入社から10年目の2019年、Aさんに白血病が発病した。Aさんは妊娠中に身体に痣ができ、貧血・血小板減少などの異常症状が現れ、出産後に大学病院で検査を受け、詳細不明の細胞型の急性白血病と診断された。

Aさんは長時間の飛行による放射線被ばくなどが白血病の原因になったと考えて、2023年1月に勤労福祉公団に療養給付を申請した。しかし、公団はAさんの疾病と業務とに相当因果関係を認めることは難しいとし、同年11月に療養不承認の処分を行った。Aさんの放射線累積被ばく推定値が35.02mSv(ミリシーベルト)と低く、総勤務期間が9年3ヶ月と、10年未満だったという点などが理由だった。

しかし、裁判所はAさんの手を挙げた。裁判所は、電離放射線が国際がん研究所が定めた一級発がん物質であるという点に触れ、「仮説によれば、放射線は最小線量でも人間に危険を与える潜在性がある。放射線の線量が一定の数値に達していないからといって安全であるとは断定できない」と判断した。また「航空乗務員は放射線作業従事者に分類され、年間の被ばく放射線量は、原発など、放射線分野の作業従事者よりも高い。」「原告の飛行は長時間、高高度で、高緯度飛行が全飛行時間で相当な比率を占め、一般的な航空機乗務員に較べて宇宙放射線への被ばく線量がより一層高かったと推定される」とした。

Aさんが8時間以上の夜間飛行に長時間従事した点も判断の根拠になった。Aさんは乗務員として85ヵ月間勤務し、計7672時間43分飛行した。アメリカ・ヨーロッパなど、飛行時間が8時間以上かかる長時間路線の飛行だけで4600時間以上だった。裁判所は「高い比率の夜間飛行と8時間以上も時間に逆行する場所への飛行によって、原告は生体リズムの変化を何度も経験したと見られるが、これもまた国際癌研究所が、人間に癌を誘発しうる有害要素と規定している」とした。それと同時に、「このような勤務形態が宇宙放射線への被ばくと結合して、傷病の発病の可能性をより一層高めた可能性を排除し難い」と見た。

今回の判決では、勤労福祉公団が乗務員の放射線被ばくに関連する労災に関して、一貫しない基準を適用しているという点も指摘した。2021年に公団は、急性骨髄性白血病の診断を受けて亡くなった乗務員のBさんに対して初めて、放射線被ばくによる労災を認めた。BさんはAさんより勤務期間と被曝量などが低かった。Bさんの総勤務期間は5年7ヶ月ほどで、総飛行時間は5571時間、累積被ばく量は18.67mSv(ミリシーベルト)だった。裁判所は判決文で、AさんとBさんの事例を比較し「被告の勤労福祉公団が、原告の傷病に関して業務関連性を否定した理由は何か、合理的で、納得できる基準によってこの事件の処分が行われたのか不明だ」と指摘した。

この事件を公団のレベルで代理したキム・スンヒョン労務士は、「この間、労災の有無を巡って判断が行ったり来たりした事案を、裁判所が整理したもの」で、「疾病判定委員会は裁判所の判断の影響を受けるが、今までに関連の先例がなく、委員の間でも意見が大きく分かれた。今回の判決が、今後の判断基準を提示するガイドラインの役割をすだろう」と話した。

2025年9月8日 京郷新聞 チェ・ソウン記者

https://www.khan.co.kr/article/202509080600101