李大統領の『12時間交代』批判に食品業界『戦々恐々』/韓国の労災・安全衛生2025年8月30日

李在明大統領が先月25日、京畿道始興市のSPC三立始華工場で開かれた労働災害根絶現場労使懇談会で発言している。 大統領室提供

食品業界が『生産職の労働時間短縮』問題に戦々恐々としています。

新政府が連日労働安全を強調し、顔色を伺わざるを得ない状況に置かれたのです。 SPCループと三養食品は、労働時間を減らすと公式に宣言までしました。

実際に食品業界で『二組二交代(昼・夜12時間ずつ交代)』が当たり前のように固まっています。ところが李在明政府が『二交代』の長時間労働を生産職労働者の死亡事故など、産業災害の主犯と名指しし始めると、食品業界が苦心し始めました。

特に大統領は先月25日、SPCサムリプ始興工場を直接訪ね、「週に4日を夜7時から明け方7時まで、フルで12時間ずつ働くというようなことが可能なのか、疑問に思う。」「労災死亡率を減らすための、現実的で具体的な方案の端緒を作ってみれば良い」と直言しました。

実際に長時間働く交代勤務制は、疲労の累積、夜間の集中度低下、安全事故の可能性の増加などで、非常状況がいつでも発生する可能性があります。更に、明け方の時間帯には現場の人手が足りず、事故が起きても緊急に対応することが難しいですよね。

大統領が直接訪問したSPC系列会社だけでも『二組二交代』または『三組二交代』方式を選んでいました。二交代とは、一言で言えば一日12時間働いた後、交代する方式です。5月に50代の女性労働者の死亡事故が起きた始興工場も『三組二交代』で運営していたところでした。また、SPC系列会社で発生した死亡事故3件のうち2件は、明け方に集中しが、始興工場の労働者も明け方3時頃の作業中に死亡しました。

新政府に睨まれたSPCは10月1日から8時間を超過する夜勤制度を廃止することにしました。9月1日からは、各系列会社別に改編された生産職勤務制の試験運営を始めるそうです。『三組三交代(SPCサムリプ・シャニー)』を導入するなど『二交代』「を廃止するのが骨子です。

三養食品も密陽1・2工場を始め、原州、益山など4工場で特別延長労働を廃止するなど、労働時間短縮を始めました。三養食品は「プルダックポックンミョン」等を生産する職員たちから、毎月「超過勤務同意書」を受け取り、特別延長労働を実施しましたが、週当り労働時間が最大58時間に達することが多く非難がおきました。

先ず、他の主要食品メーカーは『顔色伺い』作戦に入った様子です。農心、プルムウォン、オリオンなどの主要食品メーカーは、SPCや三養食品と違い、依然として二組二交代体制の12時間交代方式に拘っています。

農心は現在、「辛ラーメン」の生産ラインを中心に二交代勤務をしていて、プルムウォンは主要工場を四組二交代で運営していますが、工場の業務の特性によっては三組二交代と二組二交代も一部運営しているということです。ロッテウェルフーズは二組二交代で、永登浦工場、梁山工場、平沢工場など15の工場を運営中で、オリオンも二交代勤務体制で工場を稼動しています。

これらの食品メーカーはなぜ「二交代」勤務制を巡ってためらっているのでしょうか。SPCのように、生産構造を変えるためには人件費の上昇と生産支障など、費用負担が大きくなるためだと主張します。

製菓・冷凍食品など24時間で工場を稼動する食品業者等は、消費期限がある食品業の特性上、設備の稼動を中断すれば、納期に支障が生じることもあるかも知れないとと言います。また食品工場の場合、原料を全部配合すると、途中で生産の中断ができないので、夜間交代組は必須だということですね。

何より、一日8時間労働のために三交代に切り替える場合、最小人件費が1.5倍以上上昇して、負担になると言います。大多数の工場が地方にあり、人材の拡充が容易ではないという訴えもしています。ある食品業界の関係者は「SPCの場合、人材事故が反復的に起きて、根本的な原因除去が必要だっただけで、一日12時間勤務をしても事故が起きない会社の方がもっと多いのではないか」と反問します。

一部では食品業者らが『生産職勤労時間短縮』問題が静かになるまで待ってみようという下心があるのではないか、という指摘が出ています。農心の関係者は「現在二組二交代勤務制を運営しているが、週52時間を超過しない範囲内で勤務が行われ、法的な枠を外れる状況ではない」と言います。プルムウォンも「休憩時間の保障と業務安全事項の遵守を最優先にしている。」「生産職の勤務時間は、法的な労働時間の限度内で運営されている」と表明しました。

物価高時代の景気不況と内需低迷に、皆が苦しんでいると言うが、命より尊いものが他にあるのでしょうか。食品業界のある関係者は「率直に言って、政府の圧迫が消えることを願っているが、生産職二交代勤務制は変えるべきではないか」と話しました。

「一週間に4日を、夜7時から朝7時まで12時間の仕事を」しなくても良い世の中はいつ頃来るでしょうか。

2025年8月30日 京郷新聞 チョン・ユミ記者

https://www.khan.co.kr/article/202508300704001