もっと安全な職場、黄色い封筒法が道を開いてくれるでしょう/韓国の労災・安全衛生2025年8月3日

「元請けに危険な環境を改善して欲しいと要請したくても、仕事ができなくなるかと想ってきちんと話せない」(イ・サンギュ金属労組忠南支部現代製鉄非正規職支会長)
黄色い封筒法(労働組合および労働関係調整法二・三条改正案)が四日、国会の本会議通過を目前にした中で、労働三権(団結権・団体交渉権・団体行動権)の死角地帯にあった下請け労働者の期待が大きくなっている。黄色い封筒法が施行されれば、元請け事業主に下請け労組と団体交渉義務が賦課され、産業安全、長時間労働、低賃金など、この間放置されてきた事業場内の問題を解決できる筋道ができるためだ。
現代製鉄のイ・サンギュ非正規職支会長は「同じ業務をしても。元・下請けによって作業環境の差が大きかった。」「防塵マスク・耳栓といった保護装具さえ、下請け労働者は差別を受けている」と話した。通常、下請け労働者は元請けよりもっと危険な仕事をするが、まともに保護を受けられず、重大災害の比率が圧倒的に高い。五月の金属労組の資料によれば、2010年から今年4月まで、現代製鉄で重大災害で死亡した53人の内40人(75.5%)が社内下請け、1人が無期契約職であると調査された。「危険の外注化」を如実に示している。
もう少し安全な職場を作りたかったが、壁が多かった。下請け労働者が下請け業者を相手に作業環境の改善を要求したが「元請けの許可を受けなければならない」という結論だけが繰り返された。下請け労組は元請けの現代製鉄に、元請け・下請けが一緒に参加する『産業安全共同協議会構成』を要求してきた。金属労組忠南支部の関係者は「下請け労組が改善を要求する公文書を送っても、元請けが受け取ったかさえ判らない構造であった。」「労組法(黄色い封筒法)が改正されれば、公式的な窓口が作られる」と強調した。現代製鉄には2千人余りの社内下請け労働者が働いている。
慢性的な長時間労働も、下請け労働者には解決しなければならない課題だ。保健医療労組のキム・ジョンソン梨花医療院セボム支部長は、「梨花医療院の木洞・ソウル・葬儀場などに、下請け業者だけで三ヶ所だ。美化労働者の勤務時間、休憩時間、休憩室など、すべてを元請けが指定しておいて、交渉をしようと言えば見向きもしない」と話した。キム・ジョンソ支部長は、黄色い封筒法の通過を首を長くして待っている。彼は「月~土曜日の週六日は全て出てきて、日曜日・祝日は2組に分けて仕事をしている。」「2021年から、下請け業者が週五日制勤務をしてくれると約束したが、まだ守られていない」と、じれったかった。
低賃金、差別問題も急がれる。全国鉄道労働組合のKORAILネットワークス支部のソ・ジェユ首席組織部長は「同じ駅務業務だが、子会社の労働者は20年働いても最低賃金の水準。」「勤務形態もKORAILは『四組二交代』、子会社は『三組二交代』だ。元請けが決めた基準によって委託契約が決められるので、KORAILネットワークスと交渉をするとしても、変えられるこのはない」と話した。
政府の不動産貸出規制強化と、民生回復消費クーポンの支給で、業務の強さが急増した金融圏コールセンター労働者たちも、元請けとの交渉を望んでいる。彼らもやはり、元請けが決めた基準にそのまま従う委託業者所属で働いているが、最近は人工知能(AI)相談士を導入する所が増え、雇用の不安まで受けている。公共運輸労組の心強いコールセンターのキム・ヒョンジュ支部長は「コールセンターの下請け労働者は、元請けが契約を解約すれば、いつでも解雇され得る構造」で、「雇用安定について元請けと直接交渉したい」と話した。
黄色い封筒法が施行されれば争議行為が急増するという経営界の憂慮に関して、下請け労働者はむしろストライキが減るかも知れないと強調した。イ・サンギュ支会長は、「下請け労働者がストライキをしたのは、(権限のある)元請けを交渉に出すため」で、「対話する時間も足りないだろう」と話した。キム・ジョンソン支部長も、「元請けと交渉をするのになぜストライキをするのか。(ストライキをすれば)賃金も受け取れないのに、私もやりたくない。」「私たちが元請けに望むことは大きなことではない。今より生活の質を少しだけ改善してほしい」と訴えた。キム・ヒョンジュ支部長もやはり、「経営界は、労組が元請けが滅びることを願う人たちであるかのように主張するが、元請けが滅びることを願う労働者はただの一人もいない」と話した。
2025年8月3日 ハンギョレ新聞 ナム・ジヒョン記者