希少癌「骨肉腫」の消防士、二審でも公務上災害/韓国の労災・安全衛生2025年2月3日

資料写真/イメージトゥデイ

火災現場で30年間発ガン物質にばく露され、骨肉腫に罹った消防士に、裁判所が公務上災害を認めた。骨肉腫は骨に発生するガンで、悪性腫瘍全体で約0.2%ほど稀に発生し、その原因は正確には明らかになっていない。

<毎日労働ニュース>の取材によると、ソウル高裁は、消防士A(62)さんが公務上の災害による療養申請を承認して欲しいと人事革新処に対して提起した訴訟で、最初の一審と同じくAさんの勝訴とした。人事処の上告放棄によって二審判決が確定した。

Aさんは1990年、蔚山のある消防署に任用された後、2019年7月に骨肉腫の診断を受け、翌年に公務上の療養を申請した。人事革新処は「骨肉腫が火災現場の有害物質によって発病する疾患とは見られず、消防業務と骨肉腫発病とに関する疫学的・医学的根拠がない」として不承認処分をした。Aさんはこれを不服として2021年3月に訴訟を提起した。

Aさんは約30年間、火災鎮圧、救助など、現場隊員として活動した。20年間二組一交代勤務をし、10年間三組二交代勤務をした。Aさんは勤務期間中、678件の火災を鎮圧した。そのうち化学・廃棄物工場、タイヤ物流倉庫などの現場が563件だった。

火災現場では有害物質にばく露される可能性が高いにも拘わらず、保護装具はきちんと支給されなかった。Aさんが主に勤務したある消防署は予算不足で、2004年以前までは空気呼吸器などの安全装備が常備されず、綿のマスクをつけて火災鎮圧に向かわなければならなかった。夜勤や過労も頻繁だった。Aさんは骨肉腫が発病する前の六ヵ月間、少なくとも76時間、多くは101時間の超過勤務をした。

一審の裁判所は、Aさんの骨肉腫の発病と業務との間に相当因果関係が認められると判断した。ソウル行政裁判所は昨年1月12日、Aさんが30年間現場隊員として活動し、保護装備が備っていない環境の中で長期間有害物質にばく露したこと、交代勤務と超過勤務による過労やストレスが累積したことなどを根拠に、原告勝訴判決を行った。

裁判所は「骨肉腫と火災現場の有害物質との間の関連性が、医学的・自然科学的に明確になっていないという事情だけで、規範的な判断の領域にあるこの事件の傷病と、消防士業務との間の相当因果関係が直ちに否認されるわけではない」と判示した。二審の裁判所も同じ判断を行った。

Aさんを代理したキム・ヨンジュン弁護士は「10万人当たり一人の割合で発生する希少癌の骨肉腫の発病事例が稀少で、発ガン原因が明確にされていなかったとしても、被災者の勤務環境によって裁判所が規範的に判断し、公務上の疾病と認定したという点に意義がある」と話した。

2025年2月3日 毎日労働ニュース オ・ゴウン記者

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