配電労働者「甲状腺ガン」、最高裁は「労災」を認めた/韓国の労災・安全衛生2025年1月10日
配電労働者が20余年間にわたって活線作業をしながら特高圧電磁波にばく露されて罹った『甲状腺ガン』は、業務上災害だと最高裁が判決した。配電技術員の甲状腺ガンに労災を認めた初めての最高裁の事例だ。一審は労災を認めたが、控訴審がこれを逆転して、議論になった経緯がある。
『医学的因果関係』の判断が交錯した下級審
一審「勤労者が証明は不当」、二審「相当性不足」
最高裁判所三部は9日、配電技術員のAさん(53)が勤労福祉公団を相手に起こした療養不承認処分取り消し訴訟の上告審で、原告敗訴とした原審を覆し、事件をソウル高裁に差し戻した。Aさんがガンの診断を受けてから約10年目、訴訟が始まってから4年目の最高裁判所の結論だ。
事態の発端は、Aさんが長期間『無停電』状態の電柱に登って送・配電線路の維持・補修を行ったことから始まった。1995年から配電員として働いたAさんは、1998年からは直接充電部で作業する『直接活線工法』が一般化され、一人で活線作業車に乗っていた。
一日平均、電柱20~30本を担当して、機材と電線を交換し、特に夏場には電力需要が増加し、変圧器が故障すれば常時点検しなければならなかった。そうした中でAさんは2015年11月に突然「甲状腺乳頭ガン」の診断を受けた。
Aさん側は、2万2千ボルトに達する特高圧電気が流れる電柱で作業し、電磁波(超低周波磁場)に繰り返しばく露してガンが発病したとし、ガンの診断から約5年目に公団に療養給付を申請した。しかし公団は「極低周波磁場ばく露とガン発生の因果性を裏付ける研究が不足しており、甲状腺ガンと関連のある有害因子の職業的なばく露はない」として不承認とした。
Aさんは2021年1月に訴訟を起こし、一審は業務上の災害を認めた。
一審は「因果性の研究結果」が足りないという公団の主張に線を引いた。裁判所は「因果関係を明確に糾明することが、現在の医学と自然科学の水準で困難であっても、それだけで因果関係を簡単に否定することはできない。」「勤労者に責任のない理由で事実関係がきちんと糾明されない事情に関して、劣悪な地位にある勤労者に証明責任を厳格に要求することは不当だ」と判示した。
更に、「直接活線工法」で作業した配電電源の数が少なく、研究結果は少なくならざるを得ないと判断した。直接活線作業が禁止された2017年からは、電気員がスティックで活線を調整して作業している。Aさんは充電部に直接上がって作業した。配線電源の電磁波ばく露数値が高いという部分もやはり、業務上災害認定の根拠とした。活線作業者の極低周波磁場の平均数値は、一般会社員の26倍に達したことが判っている。
公団は控訴し、二審の判断は違った。二審は、極低周波磁場と甲状腺ガンの発病の間に「相当な」因果関係があるとは見難いとした。因果関係があると見る「抽象的な可能性」だけでは労災を認め難いということだ。
最高裁判所、審理六ヵ月目に破棄差し戻し
労働界「勤労福祉公団は迅速に補償せよ」
最高裁判所は原審を再び逆転し、建設労働者たちは公団の迅速な労災処理を追求した。建設労組はこの日、宣告直後に声明を出し「司法府が正しい役割をしたのに対し、公団は労災補償保険制度を後退させようとした。」「公団は仕事中に負傷した労働者を保護すべきなのに、むしろ労災を不承認し、裁判所の判決に従わず、結果的に承認が遅れた。公団は迅速かつ公正に災害を補償すべきである」とした。業務上疾病労災処理期間は、2018年の166.8日から昨年の9月には232.1日に増えている。
2025年1月10日 毎日労働ニュース ホン・ジュンピョ記者
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