安全運賃制廃止二年・・・貨物労働者「半額運賃に過労・過速を憂慮」/韓国の労災・安全衛生2024年11月11日
41年目のコンテナ貨物運転手のパク・チョリさん(65)は11日、国会議事堂前で同僚の99人と一緒に頭髪を剃った。2022年12月に日没にされた安全運賃制の再立法を要求するためだ。2年前にも安全運賃制の拡大適用を主張して剃髪したパク・チョリさんは「安全運賃制の三年間、それでも生き甲斐があったが、廃止以後に運賃が削られ、再び借金だけが増えている。」「二年前にも、妻が泣きながら止めたが、また剃髪するしかなかった」と話した。彼は「子供に借金を残さずに去るのが願い」と涙を見せた。
公共運輸労組貨物連帯本部(貨物連帯)は、2022年末に日没にされた安全運賃制の再立法を国会に要求し、11日の剃髪と国会前の座り込みを始め、二泊三日の上京闘争を行った。貨物連帯は、△安全運賃制の恒久的再導入、△安全運賃制の適用品目・車種の拡大、△安全運賃の具体的な現場適用のための法的根拠作り、などを主張している。
貨物運送市場は、主に大企業の荷主が運輸会社に貨物運送を委託すれば、貨物運転手が運輸会社から仕事を受けて、自分の貨物車で運送する構造だ。運賃は事実上荷主が決めるが、最低価格入札と多段階の契約などを経れば、貨物運転手が実際に手にする金額は減ることになる。これに対し、適正運賃を法によって保障すれば、収入を埋めようと過積載・過速・過労に追い込まれてきた貨物運転手と、道路の安全を守ることができるという趣旨で、貨物自動車運輸事業法(貨物運輸法)の改正によって、安全運賃制は2020年1月から三年の日没で施行された。しかし、尹錫悦政府になって「安全運賃制の効果が検証されなかった」として廃止に転じ、これに対して貨物連帯は、2022年に二回のストライキを闘ったが、政府の「業務開始命令」などの強硬対応によって、安全運賃制はその年に日没になった。
貨物連帯は安全運賃制の廃止以後、低賃金・長時間労働に追いやられていると主張する。 パク・チョリさんは「安全運賃制の施行時には、運賃が1件当り44万7千ウォンだったが、今は31万ウォンに減り、月の所得も400万ウォンから、200万~250万ウォンに減った。」「所得を埋めるには、更に多く働かなければならず、スピード違反、過労をせざるを得ない」と話した。貨物連帯が昨年6~7月に、組合員316人を調査した結果、月の所得は2022年の378万ウォンから、安全運賃制廃止以後の2023年には241万ウォンに減り、月の平均労働時間は、同期間に264.5時間から309.2時間に増えた。また、「居眠り運転が増加した」という回答は70.3%、「過速運転が増えた」は66.4%で、事故の危険も増えたと答えた。
韓国安全運賃研究団のペク・ドゥジュ団長は、この日行われた安全運賃制に関する国会討論会で「安全運賃制を再立法して施行すれば、貨物労働者の労働環境が改善されるだけでなく、中・長期的に安全事故の危険を継続的に減らすことができる」と主張した。オーストラリアは8月から、運送業従事者の報酬・労働時間の最低基準を決め、荷主・元請け業者に労働基準に対する責任を賦課する『オーストラリア型安全運賃制』を施行している。
安全運賃制の再立法議論は13日、国会・国土交通委員会で本格的に始まる見通しだ。「共に民主党」は安全運賃制の再導入を内容とする『貨物運輸法改正案』を党論としている。一方、与党の「国民の力」は、荷主と運送会社の間の運賃を強制せず、ガイドラインを提示する『標準運賃制』の導入を主張している。貨物連帯のパク・ヨンス政策企画室長は「与党は大企業荷主の責任をなくした標準運賃制を放棄し、野党と共に安全運賃制の議論に積極的に応じろ」と話した。
2024年11月11日 ハンギョレ新聞 キム・ヘジョン記者