アスベスト指令改正をめぐる経過/Legislative Train Schedule, European Parliament, 2023.8.20 acsess
欧州委員会のウルスラ・フォン・デア・ライエン委員長は、2021年9月15日に欧州議会で行われた一般教書演説に添付された趣意書の中で、欧州委員会が提案する数々の構想を発表した。優先課題(「人々のために働く経済」)のもと欧州委員会は、労働における曝露に関連するリスクからの労働者の保護に関する立法案を提出する意向を表明した。欧州委員会の2022年作業計画によると、この提案は2022年第3四半期に提出されるだった。それは、最新の科学的発展と技術的進歩を考慮して、アスベストについての現行の拘束力のある職業曝露限界値を更新するを目的としている。
欧州委員会はすでに、2021年の「欧州がん撲滅」計画において、労働におけるアスベストに関する指令2009/148/ECの最新化を提案していた。2021年6月に採択された2021~2027年労働安全衛生に関するEU戦略的枠組みでは、最新の科学的証拠に照らして、アスベストについての曝露限界値を引き下げる必要があると指摘した。
2022年9月14日、ウルスラ・フォン・デア・ライエンは欧州議会議長及びチェコ首相宛ての書簡のなかで、欧州の将来に関する会議の結論に由来する、今後1年間の数々の提案を発表した。そのひとつが、建物内のアスベストのスクリーニングと登録に関する新たなイニシアティブである。
2021年10月20日、欧州議会は、アスベストからの労働者の保護に関する、自主的立法報告書(INL)を採択した。
2022年9月28日、欧州委員会は、労働におけるアスベストへの曝露に関連するリスクからの労働者の保護に関する2009年指令(2009/148/EC)を改正する指令案を提出した。欧州委員会は同じ日に、アスベストのない未来に向けた取り組みに関する通知を採択した[ともに2022年12月号]。採択されれば、加盟国は2年以内に国内法に移転することになる。この提案は、欧州委員会の強力な欧州保健連合を構築する取り組み及びがんに対する闘いにおいて重要な一歩となる。EUでは、加盟国で認定されている職業がんの78%がアスベストと関連している。
2022年10月25日の雇用社会問題委員会[EMPL]において、委員は、ニコラス・シュミット委員(雇用・社会権担当[欧州]委員)が2009年労働におけるアスベスト指令の改正に関する欧州委員会の提案を発表するのを歓迎した。
2022年12月8日、[欧州]理事会(雇用・社会政策・保健・消費者問題理事会-EPSCO)は、この文書に関する一般的合意に達した。
欧州経済社会委員会は2022年12月14日、この提案に関する意見を採択した。地域委員会は2023年3月16日に、意見を採択した。
2023年1月、EPRS[欧州議会調査局]は、提案に付随する[欧州]委員会の影響評価に関する最初の評価を発表した。
2023年2月6日、EMPL委員会で報告書草案の最初の討議が行われた。EMPLは2023年4月26日に報告書を採択した。
交渉のマンデートは5月10日の本会議で承認された。
欧州議会と理事会の代表が5月に会合を開き、提案に関する三者協議が開始された。6月15日には2回目の三者会合が開催された。
2023年6月27日、理事会と欧州議会は、提案に関する暫定合意に達した。合意された文書によると、OELは移行期間を設けずに、1cm³当たり0.1アスベスト繊維から0.01アスベスト繊維になる。最大6年間の移行期間を経て、加盟国は、繊維の検出に電子顕微鏡を使用しなければならなくなる。加盟国は、薄い繊維を除く1cm³あたり0.002アスベスト繊維、または薄い繊維を含む1cm³あたり0.01アスベスト繊維のレベルに下げなければならない。新たな規則のもとでは、解体作業またはアスベスト除去作業を行おうとする事業者は、各国当局から許可を得る必要がある。また、使用者は、国内のアスベスト禁止が施行される前に建設された施設の解体またはメンテナンスを開始する前に、アスベストを含む可能性のある物質を確認するための措置を講じる必要がある。新たな規則はまた、個々の保護・呼吸具の適切な使用、衣服の安全な洗浄、除染手順、労働者に対する訓練要件など、曝露を回避するための対策のリストを設定する。加盟国は、医学的にアスベスト関連職業病と診断されたすべての症例の登録を維持しなければならない。
[訳注] 委員会の0.001f/cm3への引き下げ提案に対して議会委員会が0.002f/cm3を支持する報告書を採択したため交渉になったもの。計測の対象となるアスベスト繊維は、長さ5µm超、幅3µmで、長さ:幅の比が3:1超と定義されており、「薄い繊維」とは幅0.2µm未満の繊維とされる。