石綿障害予防規則の一部を改正する省令の施行について/基発0829第1号令和5年8月29日【新たな化学物質規制関連の新通達等】

基発0829第1号
令和5年8月29日

都道府県労働局長殿

厚生労働省労働基準局長

石綿障害予防規則の一部を改正する省令の施行について

石綿障害予防規則の一部を改正する省令(令和5年厚生労働省令第105号。以下「改正省令」という。)が令和5年8月29日に公布され、令和6年4月1日から施行される。その改正の趣旨、内容等は下記のとおりであるので、関係者への周知徹底を図るとともに、その運用に遺漏なきを期されたい。

第1 改正の趣旨

石綿障害予防規則(平成17年厚生労働省令第21号。以下「石綿則」という。)第13条第1項においては、事業者に石綿等の切断等の作業の際に石綿等の湿潤化の措置を講じることを義務付けており、当該措置が著しく困難な場合は、除じん性能を有する電動工具の使用等の措置を講ずることを努力義務としている。また、石綿則第6条の2第3項(同令第6条の3で準用される場合を含む。)においては、石綿等の切断等の作業のうち特定の作業を行う際には、作業場所の隔離、当該石綿等の常時湿潤化等の措置を講じることが義務付けられている。
今般、除じん性能を有する電動工具の使用は、石綿等を湿潤化した場合と同等以上の石綿等の粉じんの発散低減効果があると認められるため、石綿則第13条第1項で規定する措置については、石綿等の湿潤化の措置に限定せず、石綿等の湿潤化、除じん性能を有する電動工具の使用その他の措置のいずれかの措置を行うことを義務付けることとした。
さらに、石綿則第6条の2第3項第2号(同令第6条の3で準用される場合を含む。)で規定する措置については、有効な呼吸用保護具の使用が義務付けられていることを前提として、作業の状況に応じた、最適な石綿等の粉じん発散防止措置を適切に講ずることができるよう、石綿等の常時湿潤化の措置に限定せず、石綿等の常時湿潤化、除じん性能を有する電動工具の使用その他の措置のいずれかの措置を行うことを義務付けることとした。
なお、本改正は、電動工具による石綿等の切断等を推奨する趣旨ではなく、石綿則第6条の2第1項に規定されているとおり、石綿等の除去は、石綿等の切断等以外の方法(ボルトや釘等を撤去し、手作業で取り外すこと等)で行う必要があり、これを実施することが技術上困難な場合に限り、石綿等の切断等を行うことが認められているという従来の考え方を変えるものではない。

第2 改正省令の概要

(1) 石綿等の切断等の作業等((2)の作業を除く。)において義務付けられる湿潤化の措置を、石綿等を湿潤な状態のものとすること、除じん性能を有する電動工具を使用することその他の石綿等の粉じんの発散を防止する措置としたこと。また、同条第13条第3項において、同条第1項に掲げる作業の一部を請負人に請け負わせるときは、当該請負人に対し同項で義務付ける措置を講じなければならない旨を周知させなければならないとしたこと。(石綿則第13条関係)
(2) 成形された材料であって石綿等が使用されているもの(石綿含有保温材等を除く。以下「石綿含有成形品」という。)のうち特に石綿等の粉じんが発散しやすいものを切断等の方法により除去する作業及び建築物、工作物又は船舶に用いられた石綿含有仕上げ塗材を電動工具を使用して除去する作業において義務付けられる常時湿潤化の措置を、当該石綿含有成形品を常時湿潤な状態に保つこと、除じん性能を有する電動工具を使用することその他の石綿等の粉じんの発散を防止する措置としたこと。(同令第6条の2第3項、第6条の3関係)
(3) 改正省令は令和6年4月1日から施行すること。

第3 細部事項

(1) 除じん性能を有する電動工具に係る措置(第6条の2第3項、第6条の3、第13条第1項関係)
ア 改正省令による改正後の石綿則(以下「改正石綿則」という。)第6条の2第3項(同令第6条の3において準用する場合を含む。)及び同令第13条第1項の「除じん性能を有する電動工具」の「除じん性能を有する」には、日本産業規格Z 8122(コンタミネーションコントロール用語)でいうHEPAフィルタ又はこれと同等以上の性能を有するフィルタを備えた集じん機を用いることが含まれること。
イ 除じん性能を有する電動工具の使用に当たっては、正しく使用されなければ石綿等の粉じんの発散低減効果が発揮されないため、取扱説明書等に従い、適切に使用するとともに、フィルタの交換等適切なメンテナンスを定期的に行う必要があること。
ウ 除じん性能を有する電動工具の使用に当たっては、石綿等が付着した電動工具の持ち出しを防ぐため、石綿則第13条第2項で規定する容器の備え付け及び同令第32条の2第1項に規定する付着した石綿の除去等の措置に留意すること。
エ 電動工具(除じん性能を有する電動工具を含む。)を用いて石綿等の切断等を行う場合においては、石綿則第14条で規定する「呼吸用保護具」は、防じん機能を有する電動ファン付き呼吸用保護具(S級の半面形面体であってろ過材がPS3又はPL3のものに限る。)又はそれと同等以上の指定防護係数を有する防じん機能を有する呼吸用保護具をいうこと。
(2) その他の石綿等の粉じんの発散を防止する措置(第6条の2第3項、第6条の3、第13条第1項関係)
改正石綿則第13条第1項の「その他の石綿等の粉じんの発散を防止する措置」には、封じ込め作業における固化剤の吹付け、除去作業における剥離剤の使用、湿潤化が著しく困難な場合における隔離(囲い込み)等が含まれ、改正石綿則第6条の2第3項(同令第6条の3において準用する場合を含む。)の「その他の石綿等の粉じんの発散を防止する措置」には、剥離剤の使用が含まれるとともに、将来の技術の進歩により、湿潤化と同等以上の粉じんの発散を防止する新たな措置が開発された場合は、別途定めるところにより、当該措置も含まれること。

※通達原文
https://www.mhlw.go.jp/content/001139572.pdf
https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tc7882&dataType=1&pageNo=1

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