国連の専門家がロッテルダム条約締約国に対し、有害化学物質をリスト掲載する改正案の採択を要請/UN Human Rights Office of High Commissioner, 2023.3.27
ジュネーブ(2023年3月23日)-国連(UN)の専門家*は本日、ロッテルダム条約のすべての締約国に対し、有害化学物質をリスト搭載するとともに、有害化学物質の貿易に関して各国による情報提供に基づいた意思決定を促進するための国際条約を強化する改正を採択するよう呼びかけた。国連専門家は、以下の声明を発表した。
「われわれは、ロッテルダム条約の締約国が、2023年5月の第11回締約国会議で検討予定の附属書Ⅷの追加提案を採択することを強く求める。
ロッテルダム条約は、国際協力のための重要な手段である。それは、化学物質の輸入を受け入れるかどうか、またどのような条件で受け入れるかを輸入国が決定できるようにするとともに、輸出国に各国の決定を尊重することを求めている。
しかし、条約の科学的機関によるリスト掲載の勧告にもかかわらず、締約国会議は繰り返し有害化学物質を附属書Ⅲに追加することに失敗してきた。附属書Ⅲは、健康または環境上の理由から禁止または厳しく制限されており、条約の事前の情報提供に基づく同意手続の対象となる有害化学物質をリスト掲載していることから、条約の運用において重要な役割を担っている。締約国会議によるこれまでの失敗は、締約国が有害物質の輸入をよりよく管理する能力を制限するものである。
ロッテルダム条約における科学-政策のインターフェースメカニズムの機能停止は、科学に対する人権の実現及びこの国際条約の有効性を損なうものである。各国政府は、その政策を利用可能な最善の科学的証拠と一致させる義務を負っている。
ロッテルダム条約は、情報を知る権利を促進し、人々、土壌、水資源が有害物質に曝露することを効果的に防止するための重要な手段である。ロッテルダム条約を強化したいという大多数の締約国の願いと努力にもかかわらず、一握りの国が有害化学物質のリスト掲載を執拗に阻止している。このような状況は、清潔で健康的かつ持続可能な環境に対する権利の実現に必要な国際協力を損ねるものである。
附属書Ⅷの追加提案は、ロッテルダム条約の麻痺を解消するだろう。この提案では、化学物質の附属書Ⅲへの追加に関し合意に至[32頁に続く][38頁から続く]らない場合、各国は4分の3の多数決手続によって、その化学物質を附属書Ⅷにリスト掲載することができる。附属書Ⅷの追加は、改正を批准した締約国のみに適用される。
附属書Ⅷの追加により、ロッテルダム条約の中核をなす事前の情報提供に基づく同意手続が、その意図する目的を実現することがさらに可能になる。より多くの国と人々が、事前の情報提供に基づく同意手続とそれに伴う情報へのアクセスから恩恵を受けることになるだろう。これは、有害化学物質への曝露によって不釣り合いに被害を受ける脆弱な状況にある人々の人権を守るためにとくに重要である。
われわれは、締約国に対し、スイス、マリ、オーストラリアが提案し、他の諸国が共同提案国となった改正案を採択するよう求める。われわれは、人権、人間の健康と環境のインテグリティに化学物質がもたらす重大なリスクと危害に対処するために、われわれの制度と手段を適切かつ適合したものに保つ大胆な行動を必要としている。」
*専門家:Marcos Orellana(毒物と人権に関する特別報告者)、David R. Boyd(人権と環境に関する特別報告者)、Pedro Arrojo-Agudo(安全な飲料水と衛生に対する人権に関する特別報告者)
特別報告者は、人権理事会の特別手続と呼ばれるものの一部である。特別手続は、国連の人権システムにおける独立した専門家の最大の組織であり、世界のあらゆる部分における特定の国の状況または課題別の問題を扱う、理事会の独立した事実調査及び監視メカニズムの総称である。特別手続の専門家は、国連の職員ではなく、自主的に活動し、その活動に対して給与を受け取ることはない。彼らは、いかなる政府または組織からも独立しており、個人の資格で活動する。
スイス、マリ、オーストラリアによる改正提案は、2023年4月号に掲載。今回の情報も伝えて外務省の担当者に、日本政府として改正提案を支持するよう求めているが、3月14-16日にタイ・バンコクで開催されたアジア太平洋地域会議でも姿勢を明らかにせず、本稿執筆時点でもまだ決定に至っていないとのことである。