化学物質管理に係る専門家検討会報告書[簡略版/別表・別紙等省略]2023(令和5)年2月10日化学物質管理に係る専門家検討会報告書[簡略版/別表・別紙等省略]厚生労働省労働基準局安全衛生部
Ⅰ 検討の趣旨及び経緯等
1 検討の趣旨
今般、国内で輸入、製造、使用されている化学物質は数万種類にのぼり、その中には、危険性や有害性が不明な物質が多く含まれる。さらに、化学物質による休業4日以上の労働災害(がん等の遅発性疾病を除く。)のうち、特定化学物質障害予防規則等の特別則の規制の対象となっていない物質を起因とするものが多数を占めている。これらを踏まえ、従来、特別則による規制の対象となっていない物質への対策の強化を主眼とし、国によるばく露の上限となる基準等の制定、危険性・有害性に関する情報の伝達の仕組みの整備・拡充を前提として、事業者が、危険性・有害性の情報に基づくリスクアセスメントの結果に基づき、国の定める基準等の範囲内で、ばく露防止のために講ずべき措置を適切に実施する制度を導入することとしたところである。
この制度を円滑に運用するために、学識経験者からなる検討会を開催し、2に掲げる事項を検討する。
2 検討会の検討事項
(1) 労働者に健康障害を生ずるおそれのある化学物質のばく露の濃度の基準及びその測定方法
(2) 労働者への健康障害リスクが高いと認められる化学物質の特定並びにそれら物質の作業環境中の濃度の測定及び評価の基準
(3) 労働者に健康障害を生ずるおそれのある化学物質に係るばく露防止措置
(4) その他
3 当面の検討事項
(1) 濃度基準値関係
・ 濃度基準値の考え方
・ 設定対象物質の優先順位の考え方、対象物質の特定
・ 対象物質ごとの濃度基準値
・ 対象物質ごとの測定方法(捕集方法、分析方法)
(2) がん原性物質関係
・ がん原性物質の対象とする物質の基準
(3) ばく露測定関係
・ 労働者のばく露の程度が濃度基準値を下回ることを確認するための測定方法
・ 作業環境測定(個人サンプリング法)対象物質の拡大の検討
(4) 皮膚・眼対策関係
・ 皮膚または眼に障害を与えるおそれがあることが明らかな物質の特定方法
・ 保護手袋等の選定の考え方
4 検討の経緯/5 構成員名簿[省略]
Ⅱ 濃度基準値について
第1 濃度基準値の適用
1 中間取りまとめで整理した事項
※詳細は、「中間取りまとめ」参照。
中間取りまとめにおいては、労働者のばく露が濃度基準値以下であることを確認するための測定(確認測定)等の方法について、次に掲げる事項について検討結果を示した。
(1) 基本的考え方においては、労働者のばく露の最小化と濃度基準値の法令上の位置づけについて整理し、確認測定の対象者の選定、実施時期の考え方を示した。また、ばく露低減措置の考え方も整理した。
(2) 短時間濃度基準値の設定と運用については、短時間濃度基準値の概念を整理し、短時間濃度基準値が設定されていない物質についてのばく露低減の考え方を整理した。また、天井値の設定についての考え方を整理した。
(3) 確認測定における試料採取時間等においては、8時間濃度基準値、短時間濃度基準値それぞれと比較するための試料空気の採取時間を示すとともに、短時間作業の場合の試料空気の採取時間について考え方を示した。
(4) リスクアセスメントにおける試料採取場所及び評価については、確認測定とリスクアセスメントのための測定の違いを明確にし、それに応じた測定時間や統計手法を用いた評価の方法について示した。
(5) 最後に、上記事項については、労働安全衛生法第28条第1項の規定に基づく技術上の指針として公表すべきであるとされた。
2 混合物への濃度基準値の適用
※文献レビュー結果は別紙1参照。
(1) 混合物に含まれる複数の化学物質が、同一の毒性作用機序によって同一の標的臓器に作用する場合、それら物質の相互作用によって、相加効果や相乗効果によって毒性が増大するおそれがあることについては、米国、英国、ドイツ各国の職業ばく露限度策定機関で一致した見解となっている。しかし、複数の化学物質による相互作用は、個別の化学物質の組み合わせに依存するため、同一の毒性作用機序によって同一の標的臓器に作用する複数の化学物質による混合物であったとしても、その限度値の適用を単純な相加式で一律に行うことについて、十分な科学的根拠があるとまではいえず、相加式による限度の換算を推奨すべきかについては、各機関で判断が分かれている。また、各機関で採用している相加式は、閾値が明らかな確定的な健康影響を対象にしており、確率的影響である発がん性に対して適用する趣旨ではない。
(2) このため、混合物に対する濃度基準値の適用においては、混合物に含まれる複数の化学物質が、同一の毒性作用機序によって同一の標的臓器に作用することが明らかな場合には、それら物質による相互作用を考慮すべきという趣旨から、次に掲げる相加式を活用してばく露管理を行うことに努めるべきであることを濃度基準値の適用に当たっての留意事項として規定すべきである。
C1/L1+C2/L2+…+Cn/Ln≦1
ここで、C1, C2,…, Cnは、それぞれ物質1, 2,…, nのばく露濃度であり、L1, L2,…, Lnは、それぞれ物質1, 2,…, nの濃度基準値である。
3 濃度基準値の単位
※文献レビュー結果は別紙2参照。
(1) 室温において、蒸気とエアロゾル粒子が同時に存在する物質については、空気中濃度の測定に当たっては、濃度の過小評価を避けるため、蒸気と粒子の両者を捕集する必要がある。蒸気によるばく露がばく露評価に与える影響は、濃度基準値が飽和蒸気圧と比較して相対的に小さいほど大きくなるため、蒸気と粒子の両方を捕集すべき物質は、原則として、飽和蒸気圧の濃度基準値に対する比(飽和蒸気圧/濃度基準値)が0.1から10までの物質とすべきである。当該比率が0.1より小さい場合は、粒子によるばく露が支配的となり、10より大きい場合は、蒸気によるばく露が支配的になると考えられるからである。ただし、作業実態において、粒子や蒸気によるばく露が想定される物質については、当該比が0.1から10までに該当しなくても、蒸気と粒子の両方を捕集すべき物質として取り扱うべきである。
(2) 当該物質の濃度基準値の単位については、複数の単位の基準値があることによる測定及び分析における混乱を避けるため、管理濃度と同様に、ppmかmg/m3のいずれかの単位を採用すべきである。ただし、技術上の指針で定める予定の個別物質ごとの標準的な測定方法において、当該物質については、蒸気と粒子の両方を捕集すべきであることを明記するとともに、標準的な捕集方法として、蒸気を捕集する方法と粒子を捕集する方法を併記するとともに、蒸気と粒子の両者を捕集する方法(相補捕集法)を規定すべきである。
(3) さらに、当該技術上の指針において、ppmからmg/m3への換算式(室温は25℃とする。)を示し、事業場の作業環境に応じ、当該物質の測定及び管理のために必要がある場合は、濃度基準値の単位を変換できるように配慮すべきである。
第2 濃度基準値の検討の進め方
1 各年度ごとの濃度基準値候補物質
※各年度の濃度基準値設定対象物質リストは、別表1-1~1-3参照。
「職場における化学物質等の管理のあり方に関する検討会報告書(令和3年7月19日公表)」において、濃度基準値(注:当該報告書ではばく露限界値(仮称)の設定方法と各年度ごとの設定物質数が示されている。この考え方をもとに、労働安全衛生法に基づきリスクアセスメント実施が義務付けられている物質(以下「リスクアセスメント対象物」という。)のうち、欧米の基準策定機関の職業性ばく露限界値(OEL)がある物質から、各年度ごとに濃度基準値設定の候補物質を選定することとした。ただし、3で示すとおり、特別則が適用される物質は対象としない。
(1) 令和4年度(別表1-1)
リスク評価対象物質(特定化学物質障害予防規則などへの物質追加を念頭に、国が行ってきた化学物質のリスク評価の対象物質をいう。以下同じ。)118物質を対象とする。
○ 測定・分析方法があるもの・・・100物質程度
○ 測定・分析方法がないもの・・・20物質程度
(2) 令和5年度(別表1-2)
リスク評価対象物質以外の物質であって、吸入に関するACGIHTLV-TWA(米国政府労働衛生専門家会議が勧告している8時間時間加重平均ばく露限度)があり、かつ、測定・分析方法があるもの約160物質を対象とする。
○ DFGMAK(ドイツ研究振興協会が勧告する最大職業濃度値)や日本産業衛生学会の許容濃度が定められており、ACGIHTLV-TWAと値が一致するもの・・・55物質程度
○ DFGMAK等のばく露限度が定められているが、ACGIHTLV-TWAと値は一致しないもの・・・100物質程度
(3) 令和6年度(別表1-3)
リスク評価対象物質以外の物質であって、吸入に関する職業ばく露限度があり、かつ、測定・分析方法があるもの約180物質を対象とする。
○ ACGIHTLV-TWAのみ定められているもの・・・110物質程度
○ ACGIHTLV-TWAはないが、ACGIHTLV-STEL(短時間ばく露濃度に関するばく露限度値)又はTLV-C(天井値(いかなるときも超えてはならないばく露限度値)があるもの・・・15物質程度
○ ACGIH(TLV-TWA, STEL, C)はないが、DFGM
AK等があるもの・・・55物質程度
(4) 令和7年度以降
リスク評価対象物質以外の物質であって、吸入に関する職業性ばく露限界値があり、かつ、測定・分析方法がない約390物質を対象とする。
○ ACGIHTLV-TWAがあるもの・・・255物質程度
○ ACGIHTLV-TWAはないが、ACGIHSTEL又はCがあるもの・・・25物質程度
○ ACGIH(TLV-TWA,STEL,C)はないが、DFGM
AK等があるもの・・・110物質程度
2 濃度基準値の検討の進め方
(1) 1で選定した濃度基準値設定対象物質について、(独)労働者健康安全機構労働安全衛生総合研究所(安衛研)における専門家会議で文献調査等を行い、濃度基準値の提案値を含めた報告書を作成することとした。提案値は、有害性に関する一次文献(入手できない場合には、二次文献)に基づき、初期調査と詳細調査の2段階で検討する。初期調査の情報では提案値を決定できない場合には、詳細調査を行い、その情報に基づき決定することとした。
(2) この濃度基準値の提案値及びその根拠論文等について、本検討会で妥当性を検討し濃度基準値を決定することとした。濃度基準値の検討に当たっては、①測定方法が定められていること、②有効な呼吸用保護具があることを考慮することとし、測定方法又は有効な呼吸用保護具がない場合は、これらが確立するまでの間、濃度基準値は設定しないこととした。
(3) なお、濃度基準値の提案値は、現時点での知見に基づき設定されるものであり、基準値に影響を与える新たな知見が得られた場合等においては、再度検討を行う必要があるものである。
【参考】
(1) 初期調査
① 濃度基準値の根拠となる論文を収集する(発がん性のおそれのある物質については、遺伝毒性に関する情報も収集)。根拠論文の信頼性が高く、複数の根拠論文の結論に矛盾がない場合は、原則、無毒性量(NOAEL)に不確実係数(UF)又は不確実係数積(UFs)を考慮の上、濃度基準値を決定する。
② 次のような場合には、詳細調査に移行する。
・ 複数の根拠論文の結論に矛盾があるなど、根拠論文の信頼性の比較等の評価が必要な場合
・ 諸機関のOELに大きなばらつきがあり、根拠論文の信頼性の比較等の評価が必要な場合
(2) 詳細調査
根拠論文の疫学調査手法、動物実験の試験条件等から、信頼性を比較・評価し、信頼できる根拠論文に基づき、無毒性量(NOAEL)に不確実係数(UF)又は不確実係数積(UFs)を考慮の上、濃度基準値を決定する。
3 特別則が適用される物質への濃度基準値設定の考え方
(1) 特別則で作業環境測定の対象となっており、管理濃度が設定されている物質(第1種有機溶剤等)
ア 特別則の適用を受ける場合(=含有量が裾切り値超の場合)
管理濃度による作業環境測定に基づく作業環境の改善と、新たな濃度基準値の遵守の二重規制となるため、新たな濃度基準値の設定は適当でない。
イ 特別則の適用を受けない場合(=含有量が裾切り値以下の場合)
有機則、特化則の裾切り値の設定理由については、旧・有機則の制定は昭和35年、旧・特化則の制定は昭和46年であり、化学物質の濃度情報を入手することが困難であったとされている。現在はSDS制度があり、当時と比べ格段に濃度情報を入手しやすくなっていることを踏まえると、裾切り値について、有機則、特化則の制定当時の考え方を維持する必要は必ずしもなく、他の物質と同様、リスクアセスメント対象物の裾切り値と整合させることを検討すべきである。
ただし、見直しに当たっては、今後、特別則を一般則に整理統合することを含めた、特別則の全体の在り方を検討する際に対応するのが適当である。見直しまでの間、濃度によって作業環境測定による環境改善と、濃度基準値の遵守という異なった管理手法を使い分けることは困難であり、現場の混乱をもたらすおそれがあるため、適当でない。
(2) 特別則で作業環境測定の対象となっているが、管理濃度が設定されていない物質(インジウム化合物等)
インジウム化合物等について測定義務があるにもかかわらず管理濃度を設定していないのは、管理濃度検討会での検討結果等により、管理濃度の設定が困難とされたためである。たとえばインジウム化合物の場合、作業環境管理対策のみでは環境中濃度の低減が困難であり、保護具使用を前提とした規制としているため管理濃度を設定していない。
このため、これらの物質について新たな濃度基準値を設定することは、現行規制との混乱を生じるおそれがあり、適当でない。
(3) 特別則で作業環境測定の対象となっていない物質(第3種有機溶剤等)
第3種有機溶剤、特定化学物質第3類物質、四アルキル鉛は、過去の災害発生状況や専門家の検討結果等を踏まえ、大量漏洩等による高濃度ばく露防止対策(急性中毒等の防止対策)のみ義務付けており、定期的な作業環境測定を義務付けていない。
今回の改正は、特別則の適用のない化学物質を主眼とするものであり、第3種有機溶剤等について、新たな濃度基準を設定すると、特別則の対象物質に対する規制強化となり、過去の判断と矛盾するのみならず、今回の改正の趣旨に照らして適当でない。
また、特化物のうち溶接ヒュームは、保護具選択のための個人ばく露測定が義務付けられており、基準値も告示で定められているため、新たな濃度基準値の設定は不要である。
4 発がん性物質への濃度基準値設定の考え方
※ 文献レビュー結果は別紙3参照。
(1) 米国、英国、ドイツの職業ばく露限度策定機関では、ヒトへの発がん性の確からしさの分類に応じ、ヒトへの発がん性が明確な場合は、安全な閾値が設定できないという理由から、限度の設定を行っていないことがわかる。そのような物質については、事業者に対し、ばく露を最小化することを強く求めている。
(2) 一方、各基準策定機関では、ヒトへの発がん性が明確でない物質に対しては、非がんの疾病を対象に、安全な閾値として、限度を定めている。閾値を設定する理由としては、ヒトや動物への遺伝毒性がない、又は、あったとしても非常に少ない、かつ、発がんリスクへの寄与が小さいことをあげている。
(3) このため、濃度基準値の設定においては、主としてヒトにおける証拠により、ヒトに対する発がん性が知られている物質(国が行うGHS分類で発がん性区分1Aに分類される物質)については、発がんが確率的影響であることから、長期的な健康影響が発生しない安全な閾値である濃度基準値を設定することは困難である。この場合、濃度基準値を設定しないことで、安全な物質であるという誤解が発生しないよう、検討結果において安全な閾値が設定できない物質であることを明示するべきである。さらに、例えば、濃度基準値に関する技術上の指針にこれら物質の一覧を掲載する等に加え、事業者に対し、これら物質に対するリスクアセスメントを適切に実施し、その結果に基づき、労働者がこれら物質にばく露される程度を最小限度にしなければならないことの周知を図る必要がある。
(4) 発がん性区分1Bに分類される物質については、発がん性の証拠の強さの観点からヒトに対して恐らく発がん性があるとされる物質であり、ヒトへの発がん性が明確であるとまではいえない。この場合、ヒトに対する生殖細胞変異原性などの遺伝毒性が明らかでない、又は、十分に小さい、かつ、発がんリスクへの寄与がない、又は、小さいことが評価できる物質であって、非がん疾病について、無毒性量(NOAEL)等が明らかなものについては、濃度基準値を定めるべきである。濃度基準値を設定すべきか否かの判断は、個別の物質ごとに、発がんが見つかったばく露濃度のレベルや、遺伝毒性等に関する根拠文献の評価により判断されるべきである。
(5) 発がん性区分2に分類される物質は、ヒトに対する発がん性が疑われる物質であり、このうち、非がん疾病について、無毒性量(NOAEL)等が明らかなものについては、濃度基準値を定めるべきである。ただし、生殖細胞変異原性が区分1に分類されているなど、遺伝毒性が知られている物質については、遺伝毒性に関する根拠文献の評価により、濃度基準値の設定を個別に判断するべきである。
第3 令和4年度の濃度基準値の検討結果
1 物質ごとの濃度基準値の案及び測定方法
物質ごとの濃度基準値の案及び測定方法、留意事項は別表2のとおりである。なお、発がん性が明確であるため、長期的な健康影響が生じない安全な閾値としての濃度基準値は設定しなかった物質についても別表2に掲載している。検討された物質の文献調査結果は別紙4のとおりである。測定方法については、標準的な手法として示しているものであり、同等以上の精度が確保できる場合は、その他の方法で行っても差し支えない。
2 濃度基準値を設定しなかった物質とその理由
発がん性が明確であるため、長期的な健康影響が生じない安全な閾値としての濃度基準値は設定しなかった物質は別表3-1のとおりである(再掲)。その他の理由で濃度基準値を設定しなかった物質は別表3-2のとおりである。検討された物質の文献調査結果は別紙4のとおりである。
3 令和5年度以降に再度検討する物質とその理由
令和4年度に検討対象であった物質のうち、令和5年度以降に再度検討することとなった物質とその理由は別表4のとおりである。検討された物質の文献調査結果は別紙4のとおりである。
Ⅲ その他
1 労働安全衛生規則に基づき作業記録等の30年間保存が必要ながん原性物質の範囲
(1) 令和4年5月に公布された労働安全衛生規則等の一部を改正する省令(令和4年厚生労働省令第91号)により、事業者は、厚生労働大臣が定める「がん原性物質」について、これら物質を製造し、または取り扱う業務に従事する労働者の作業記録等を30年間保存することが義務付けられた。このがん原性物質の範囲については、リスクアセスメント対象物のうち、国が行うGHS分類の結果、発がん性の区分が区分1(区分1A又は区分1Bを含む)に該当すると分類されたものとすることが適当である。
ただし、以下のものについては、対象から除外すべきである。
① エタノール
エタノールは、IARC(国際がん研究機関)で「アルコール飲料としてヒトに発がん性がある」としてグループ1に分類されており、これを踏まえ国によるGHS分類で発がん性区分1Aとされているが、これはアルコール飲料として経口摂取した場合の健康有害性に基づくものであることを踏まえ、業務として大量のエタノールを経口摂取することは通常想定されないこと、疫学調査の文献からは業務起因性が不明であることから、対象から除外すべきである。
② 特別管理物質
特定化学物質障害予防規則第38条の3に規定する特別管理物質は、特化則において作業記録簿等の記録の30年間保存の義務がすでに規定されており、二重規制を避けるため、対象から除外すべきである。
③ 対象物質を臨時に取り扱う場合
対象物質を臨時的に取り扱う場合であって、継続的なばく露が見込まれない場合は、当該物質による発がんのリスクは極めて低いと考えられることから、対象から除外すべきである。
(2) 国によるGHS分類結果が公表された後、作業記録等の30年間保存の対象とするまでには一定の期間を置くべきである。
(3) 現在、労働安全衛生法第28条第3項に基づく指針(がん原性指針)の対象物質については、当該指針に基づき作業記録等の30年保存を行政指導として勧奨しているが、がん原性指針は対象物質についてばく露低減措置等の健康障害防止のための適切な取扱い等を事業者に求める指針であり、その趣旨から対象物質には国が行うGHS分類で発がん性区分1以外の物質も含まれる。がん原性指針対象物質のうち、国が行うGHS分類で発がん性区分1に該当しない物質については、作業記録等の30年間保存の義務対象とはせず、引き続き、がん原性指針に基づく適切な取扱い等を求めるべきである。
全文等は以下で入手できる。
「令和4年度化学物質管理に係る専門家検討会」の報告書を公表します(厚生労働省)
省略した別表・別紙のリスト
別表1-1 濃度基準値設定対象物質リスト(令和4年度)
別表1-2 濃度基準値設定対象物質リスト(令和5年度)
別表1-3 濃度基準値設定対象物質リスト(令和6年度)
別表2 物質ごとの濃度基準値の案及び測定方法
別表3 濃度基準値を設定しなかった物質とその理由
別表4 令和5年度以降に再度検討する物質とその理由
別紙1 混合物への濃度基準値の適用に関する文献等
別紙2 濃度基準値の単位に関する文献等
別紙3 発がん性物質に対する濃度基準値の設定に関する文献等
別紙4 対象物質別の調査結果