通院日のみ支給を一部取消/静岡●ブラジル人労働者の労働災害

静岡ふれあいユニオン組合員のブラジル人女性は、できあがった新車にラップシートを張る仕事に従事していた。2020年12月21日、午後3時40分頃、女性が製造ライン上で作業中、前方の車両がベルトコンベアで空転したため、ライン上に車両が詰まった際に、左膝が車両の間に挟まれてしまった。また、ふき取りをしていた後方の車両にも挟まれないために、右手で車両を押したものの、押し返されてしまい負傷した。負傷当日の病院の診断は、左膝打撲傷、右手挫傷傷、右前腕挫傷だった。女性は、同日より休業を開始したことから、労災保険の休業補償給付の支給を受けて生活していた。
その後、右上肢末梢性神経障害性疼痛も発症しながら怪我の療養を続けていたが、島田労働基準監督署より、2021年8月1日以降は、運動器具を使用したリハビリテーションと投薬治療を行っているが、休業の必要性については、主治医より「就労は軽作業なら可能と思われる」と判断されたとされ、これ以降は、病院への受診日についてのみ休業の必要性があるものとされ、以降、11月まで、病院受診日のみ休業補償が支給されることになった。女性は、これを不服として、静岡労働局に審査請求を行った。
静岡労働局労災保険審査官は2022年6月28日、2021年8月1日から同年10月31日までの間の、通院日のみの休業補償を支給する旨の一部支給決定処分については、取り消す決定を下した。理由は、女性が主治医より軽作業が可能の指示を受けたのは、2021年10月26日であることが病院の診療録及び本人聴取より判断できるというものだった。
審査官は、女性の2021年8月分の休業補償給付請求について、島田労働基準監督署が主治医に求めた2021年9月25日付け意見書において、「就労は軽作業なら可能と思われるが、勤務先に軽作業があるかは知り得ていない。重労働しかないなら今しばらく休業は仕方方がない」との所見を述べているが、同年8月分の休業補償給付請求に対する回答ではあるものの、いつから軽作業が司能なのか詳細は記載はされていないとしたうえで、一方診療録には、同年10月12日に「会社と本人から労基署に軽作業がない事を訴えて物療通う」とあり、また同月26日には「軽作業可 診断書」との記載があり、その診断書の記載内容は「上記病名にて加療中であるが、軽作業は可能である」となっているとした。そして、請求人は、2022年4月27日の聴取の中で、2021年10月の休業支払い後に主治医に軽作業が可能か否かを尋ね、軽作業ができる旨の回答を得たと申し立てており、上記診療記録と併せ、請求人が、医師より務作業が可能の指示を受けたのは2021年10月26日であるものと判断するとした。
女性の審査請求代理人だった、静岡ふれあいユニオンの小澤満夫さんは、「まだ、怪我が治っていないうえ、会社にも仕事がないのに休業補償給付を打ち切ってはダメ。最初、女性と島田労働基準監督署に行ったとき、医師が治ったと言っているから休業補償を打ち切った。仕事を探すのなら、監督署ではなくハローワークに行ってくれと言われたのがとても不満」と筆者に語ってくれた。

文・問合せ:名古屋労災職業病研究会

安全センター情報2023年4月