5つの肺発がん物質のペアへの職業曝露に関連する肺がんリスク:症例対照研究のプール分析結果(SYNERGY)(抄録)Ann Olssen, et. al., Environmental Health Perspectives, 2024.2.1【特集】労働関連疾病負荷推計の進展
背景
個々の職場肺発がん物質を同定する研究は多く行われているが、労働者が複数の発がん物質に曝露した場合のリスクに対する共同影響についてはほとんど知られていない。
目的
アスベスト、吸入性結晶質シリカ、金属(すなわちニッケル、六価価クロム)、多環芳香族炭化水素(PAH)への職業曝露が肺がんリスクに及ぼすペアごとの共同影響について、喫煙を考慮しながら、全体的及び主要な組織学的サブタイプ別に調査した。
方法
国際的な14施設によるSYNERGYプロジェクトにおいて、定量的職業曝露マトリックス(SYN-JEM)を用いて、肺がん症例16,901人と対照群20,965人に職業曝露を割りあてた。性別に層別化し、研究施設、年齢、喫煙習慣で調整したロジスティック回帰モデルを用いて、曝露歴のある者とない者のオッズ比(OR)及び95%信頼区間(CI)を算出した。因子のペア間の共同効果は乗法的及び加法的尺度で評価し、後者については相互作用による相対過剰リスク(RERI)を算出した。
結果
男性における肺発がん物質のペアごとの共同効果はすべて、肺がんリスク上昇と関連していた。しかし、アスベスト/金属及び金属/PAHは相加的効果未満であったものの、六価クロム/シリカのペアは腺がんとの関連でわずかに相乗的効果を示した(RERI:0.24;CI:0.02, 0.46;p=0.05)。女性では、PAH/シリカ(OR=5.12;CI:1.77, 8.48)、アスベスト/シリカ(OR=4.32; CI:1.35, 7.29)、PAH/シリカへの曝露を含めて、小細胞肺がんに関していくつかのペアごとの共同影響が観察され、PAH/シリカへの曝露は相乗効果をもたらした(RERI:3.45;CI:0.10, 6.8)。
討論
相加効果または相乗効果からの乖離はほとんど、あるいはまったく観察されなかったが、選択された肺発がん物質への同時曝露は、一般に個々の発がん物質への曝露よりもリスクが高く、職場及び一般環境における発がん物質への曝露を低減及び管理することの重要性を強調している。
※https://ehp.niehs.nih.gov/doi/10.1289/EHP13380
安全センター情報2024年4月号