西日本豪雨時の石綿対策/岡山●シンポで災害時対策の必要性訴える

今年元旦、能登半島に震度7超える地震が起き、あらためて日本は地震大国であることを認識させられた。震災に加えて、地球温暖化の影響で巨大台風や線状降水帯が発生し、風水害や土砂災害も頻発している。

まさに日本は災害大国であり、大規模自然災害に備える防災計画のなかに、アスベストによる健康被害の予防対策も忘れてはならない。
2月24日(土)午後、岡山国際交涜センターで「2018年西日本豪雨災害におけるアスベスト対策を考えるシンポジウム」を開催し、災害時のアスベスト対策の必要性を訴えた。

2011年3月の東日本大震災では東北の被災地で、地震や津波によって膨大な家屋や建物が破壊され、大量のがれきが街中を埋め尽くした。倒壊建築物やガレキに含まれるアスベスト粉じんに曝露すると30~40年後に中皮腫や姉がんなどのアスベスト関連疾患を発症する恐れがある。

私たちは、東日本大震災や2016年熊本地震で倒壊した建築物やガレキに含まれていたアスベスト粉じんの調査活動を行い、アスベストの危険性・有害性について、地元の人びと、自治体、ボランティア、作業者に伝え、アスベストの飛散、ばく露防止の具体策を提案し、報告会やワークショップ、特別教育講習などを開催した。

その後、災害時及び平時における建築物等からのアスベスト飛散、曝露防止対策の提言、啓発、普及活動として環境再生保全機構地球環境基金の助成を受け、2011年から現在まで活動を継続している。

2018年7月、西日本豪雨により倉敷市、総社市では小田川の堤防が決壊し、甚大な浸水被害に見舞われた。発災後の2018年8月、私たちは倉敷市真係町の災害ボランティアセンターに簡易式防じんマスクを届け、廃棄物の仮置き場などを調査した。

大規模自然災害の被災地域では、被災家屋等の片づけ、解体・撤去にあたって被災住民や解体業者、ボランティアに対してアスベストリスクの周知、災害廃棄物の仮置き場におけるアスベスト含有建材の分別管理、飛散防止対策の徹底が求められた。

昨年夏、私たちは5年ぶりに倉敷、総社両市の浸水地域の現況調査を行い、また、両市の環境対策の担当者から当時の廃棄物のアスベスト対策についてヒアリングを実施した。

シンポジウム第1部では、次の報告を受け討論した。

  1. アスベスト(石綿)とは-アスベストによる健康障害」南慎二郎さん(立命館大学)
  2. 水害におけるアスベスト対策-倉敷市、総社市、長野市の事例から仮置き場の問題点と公費解体等における課題」斎藤宏さん(アスベストリスクコミュニケーションプロジェクト)
  3. 災害時におけるアスベスト対策の課題」永倉冬史さん(中皮腫・じん腕・アスベストセンター)
  4. 特別報告】「岡山でのアスベスト問題の取り組み」平方健一さん(おかやま労働安全衛生センター)

斎藤さんの報告では、水害時のアスベスト対策として、①防災計画、緊急時対応計画に災害廃棄物及び解体時のアスベスト対策を入れる、②アスベスト含有廃棄物の管理、混合廃棄処分を防止するため、「災害廃棄物仮置き場」の設置を平時から計画し、備える、③「勝手仮置き場」ができないように、緊急時対応計画を作成し、事前に市民に周知する、④アスベスト含有建材等の分別の必要性について行政担当者、市民に教育、周知する、⑤行政の災害廃棄物対策の図上演習にアスベスト対策を入れることが提案された。

第2部のワークショップでは、榊原洋子さん(愛知教育大学)が、屈折率を応用した偏光板を使ったアスベスト判定キットを紹介し、みんなで簡易顕微鏡をのぞきながら建材に含まれているクリソタイル(白石綿)、クロシドライト(青石綿)の形状をチェックした。また、永倉さんが簡易式防じんマスクの装着の仕方を実演指導した。

シンポジウムの参加者は、会場、オンライン合わせて30数名とやや少なめだったが、地元岡山の方々ともに、災害時のアスベスト問題に隠する理解を深め、平時から取り組むべき課題について考えることができたと思う。

東京労働安全衛生センター

安全センター情報2024年6月号