「頻発するリチウム事故」予防するデータもない/韓国の労災・安全衛生2024年07月03日

アリセル火災惨事を契機にリチウムバッテリー取り扱いに対する恐怖が広がっている。

<毎日労働ニュース>の取材を総合すれば、リチウム事業場の合同点検を行っている京畿道は、4日まで追加して管内の廃バッテリーリサイクル業者17ヶ所を対象に、市・郡合同の追加点検を行う。光州広域市と蔚山広域市のような広域地方自治体はもちろん、浦項市・群山市など、基礎地方自治体も自発的な点検を始めた状態だ。

事故は後を絶たない。1日未明、ソウル地下鉄3号線の大峙駅で特殊車両のリチウムバッテリーから発火したと推定される火災が発生し、消防署員140人と装備70台が動員された。済州道の牛島では、電動バイクからリチウムバッテリーが原因と推定される火災が発生し、バイク19台が燃えた。

ところが、相次ぐ関連した火災と事故が予防対策の樹立には繋がっていない様子だ。事故事例などがきちんと蓄積されていないためだ。化学物質関連事故の状況を収集して公開する化学物質安全院の事故現況を見れば、2014年から今年7月まで、リチウム関連の事故と記録されたのは、2021年8月に発生した爆発事故1件だけだ。今回のアリセル惨事で人命被害を拡大させた塩化チオニル関連事故は5件えで、漏出4件、爆発1件だ。

消防統計では物質別の事故類型や状況を確認することは難しい。消防庁が作成する火災統計は発火熱源で、火花や火の粉による発火と化学的な発火熱などを区分して作成するが、どんな物質で火災が起きたのかは作成対象ではない。

このため、最近バッテリー工程での火災が累積しているにも拘わらず、これを反面教師にするのは難しいという指摘だ。ソウル科学技術大学のチョン・ジンウ教授(安全工学)は「事故に関する報告が正しく行われておらず、過去の事故を通して予防したり管理をするノウハウを蓄積しにくい状態」で、「化学物質安全院などよりも、雇用労働部が取り組んで、このような産業安全管理をすべきなのに、災害発生報告だけに重点を置いて、人命被害のない事故報告が正しく行われていないために、各種事故から学ぶことができない」と指摘した。

一方、有害・危険物質管理以外に、バッテリー製造工程のような組立・生産段階の安全管理も強化すべきだという指摘だ。アリセル惨事対策委員会は2日、華城市庁で行った記者会見で、バッテリー事業場の全数調査による工程安全管理制度(PSM)の導入を求めた。工程安全管理制度は△事業場の建物・設備配置図と爆発危険場所の区分、電気断線図などを含む工程安全資料、△工程危険評価書、△安全運転計画、△非常措置計画を盛り込んだ工程安全報告書を提出するようにする制度だ。物質51種、業種7つが提出対象だが、リチウム・塩化チオニルとバッテリー製造などはこれに該当しない。

2024年7月3日 毎日労働ニュース イ・ジェ記者

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