ゴルフ場の事故、「特殊雇用労働者」キャディーが全面的に責任を?/韓国の労災・安全衛生2024年06月19日

資料写真/イメージトゥデイ

ゴルフ場の利用客が、なかまの打ったボールに当たって失明した。打ったのは初心者で、ゴルフ場は基本安全規則とは逆の構造だった。しかし、検察と裁判所はキャディーだけに責任を問うた。20年以上のベテランキャディーとして『顧客掌握力』を発揮し、注意義務を果たすべきだったということだ。20年働いても30年働いても、キャディーは『乙の中の乙』と、同僚のキャディーは声を揃えた。労働界は特殊雇用職のキャディーの劣悪な労働環境を考慮すべきだと強調した。

事故の危険性が高いゴルフ場の構造にも、キャディーだけ悪いという検察・裁判所

春川地方裁判所・原州支院はゴルフ場のキャディーAさんの業務上過失致傷の控訴審の初公判を行う。

事故は2021年10月3日、江原道のあるゴルフ場で発生した。Aさんは顧客四人とラウンドに出た。Aさんの合図によって、一人の顧客がティーボックスからボールを打ったが、ゴルフカートに座っていたBさんの目に当たった。Bさんはこの事故で、永久的な眼球破裂の傷害を負った。

Aさんはゴルフカートをティーボックスの基準の左側の前方に駐車した。これはゴルフ場の安全規則に反する。規則によると、ゴルフカートを、プレーするゴルフボールより前方に駐車してはならない。カート、ゴルファー、キャディーが、すべてボールの前にいないのは、最も基本的な安全規則だ。しかし、Aさんが任意に駐車したわけではない。ゴルフ場の道路の構造上、ティーボックスの前方に駐車せざるを得なかった。

初心者が打ったボールは、身体構造上確率の低い左に飛んで行き、打球者の左前にあったカートに当たった後、被害者に向かった。

検察と裁判所は、Aさんに全面的な責任があると見た。被害者は、Aさんを始め、打者、ゴルフ場の代表らを業務上過失致傷などで告訴した。検察はAさんだけを起訴した。打者はキャディーの合図に従っただけで、ゴルフ場の代表はゴルフ場の施設についての関係機関の承認を受けていたという理由だった。

Aさんは3月に一審で拘禁六ヶ月を宣告され、法廷拘束された。春川地方裁判所原州支院は、Aさんが被害者など、顧客をティーボックスの前にいないようにしなければならなかったと判断した。

裁判所はゴルフ場の構造が「異例的」だと認めた。その一方で「Aさんは経歴20年以上のベテランキャディーとして、相当なコースの理解度と顧客掌握力を持っていたと見られる」とし、「Aさんは(『打ちます』という案内にも)被害者などからこれといった返事もなく、互いに対話を続けていたと弁明するが、説得力に欠ける」と見た。

同僚のキャディーたち「顧客感情はすなわち生計」

Aさんに過度な責任を問うものだという批判が出ている。代表的な特殊雇用職であるキャディーが、賃金に当たるキャディピーを支給する顧客を『掌握』するということは、現実と乖離しているという指摘だ。

キャディー1500人余りは、二審裁判所に提出した嘆願書で「キャディはゴルフ場で『乙』にならざるを得ない」と訴えた。彼女たちは「試合中に『危険だ』『気を付けろ』という言葉を何時も口にしているが、一部の顧客はこれを無視したり、命令すると腹を立てる」、「下車案内でも、カートに座っている顧客を強制的に引き降ろすことはできない」と言った。更に「顧客の感情は、即、キャディーの生計」で、「顧客の感情を少しでも傷付けると、キャディーはその場で直ぐに交代させられたり、酷い場合はクビになったりする」と説明した。

また、彼女たちは「危険なゴルフ場でキャディー1人が顧客4人のすべての安全に責任を負うことは、率直に言って簡単なことではない」、「キャディーは事故が起きる確率が高い方に集中するが、この事故は(ボールが)身体構造上、可能性が低い左に飛んだ」と指摘した。続けて「事故が起きたティーボックスは、後方に別の顧客が立つ余裕空間が全く見えず、カートはティーボックス前方に停車するようになっている」とし、「誰でもいつでも怪我をする恐れがある危険な構造だった」と強調した。

女性労働連帯会議(女性労組・民主労総・韓国労総・韓国女性労働者会・韓国女性団体連合・民友会)は、「今回の判決は、顧客サービスと安全を担当する力のない労働者が、事業場に安全上の構造的な欠陥などがあっても、事故の責任を一人で抱え込むことになる先例になった」とし、「不慮の事故が発生すれば、労働者が平伏して、すべて自分の間違いと言わなければならない極悪な先例を生んだ」と批判した。

2024年6月19日 毎日労働ニュース カン・ソギョン記者

http://www.labortoday.co.kr/news/articleView.html?idxno=222113