4時間寝て運転席に、貨物労働者の85%が「居眠り運転が増えた」/韓国の労災・安全衛生 2024年06月18日

チョン・・ギフン記者

トレーラーを運転して34年目の貨物労働者のホ・ナムヘンさん(53)は、昨年10月に発生した接触事故を考えると未だに目がくらむ。雨の日にロータリー交差点を通る右側にあった軽自動車を見ていなかった。彼の長年の経歴が恥ずかしいほど、とんでもない事故だった。その日は4時間位しか寝ていなかったのが事故の元だった。集中力が落ち、事故に繋がった。ホ・ナムヘンさんの過失が大きかったため、保険処理をしても、相手車輌の修理費と治療費として320万ウォンを追加で支出しなければならなかった。

昨年一月から貨物自動車の安全運賃制が消えた後、ホ・ナムヘンさんは急ぐことが増えた。運送料が下がったため、収入を補填するためには、更に多くの仕事をしなければならなかった。休憩時間は減り、労働時間は増えた。ホ・ナムヘンさんは「以前なら無理をする必要がなかった。」「(安全運賃制の日没後)事故の不安が急速に高まった」と話した。

安全運賃制は貨物労働者に適正運賃を保障し、過労・スピード違反・過積載を防ぐ制度だ。2020年から一時的に施行されたが、2022年12月に日没となった。その後、貨物労働者が体感する交通事故の危険が大きく高まったことが明らかになった。

10人中8人以上が「スピード違反が増加」

<毎日労働ニュース>が公共運輸労組・貨物連帯本部から入手した「安全運賃制日没以後の現場実態調査」によれば、安全運賃制の日没後の貨物労働者の睡眠時間は減少し、スピード違反の頻度は増えた。

アンケート調査は2月21~25日まで行われた。回答者は513人で、運送品目は様々だった。安全運賃制を適用されていなかった労働者の労働条件の変化まで調べるために、品目は区分しなかった。安全運賃制の適用を受けたコンテナとBCT(セメント運搬)の労働者は、各々68.4%、5.8%で、未適用車種・品目は25.8%だった。

調査の結果、大半の回答者が過労だった。睡眠時間を訊いたところ、回答者481人の内、「減った」と答えた人は、87.1%だった。睡眠時間が減ると、危険運転が始まった。居眠り運転が増加したという人は、84.6%にも上った。スピード違反が増えたという回答者も、76.1%に登った。スピード違反の理由を尋ねると、382人の回答者のうち68.6%が、「収入を補填するため」という答えを選んだ。安全運賃制という保護装置が消えると、事故の危険が増えたのだ。

安全運賃制の日没後、「一日以上の労働」
「規制より運賃保障が事故の危険を低くする」

安全運賃制の日没以後、現場実態調査
公共運輸労組貨物連帯本部の組合員513を対象に調査

一日の運行時間 12.7時間(コンテナ、BCT、鉄鋼、その他)
月平均 266.7時間(賃金労働者対比 +109.1時間)
-睡眠時間の減少    87.1%
-居眠り運転が増加   84.6%
-スピード違反の増加  76.1%
資料:公共運輸労組貨物連帯本部

今回の調査で回答者たちは、一日平均12.7時間を運行すると答えた。安全運賃制の日没前と比較した時、一週間の平均労働時間は10時間増えたと調査された。毎週、もう一日働くことになったわけだ。回答者の一日平均労働時間に、官公庁の公休日に関する規定による暦上の勤労日数の21日を掛けると、月平均266.7時間働くという結果が出た。雇用労働部が四月に発表した雇用形態別勤労実態調査の結果によれば、昨年六月で、賃金勤労者の月平均労働時間は157.6時間だ。貨物労働者は賃金勤労者よりも毎月109.1時間を更に働くわけだ。

貨物労働者の過労・スピード違反・過積載が問題であれば、これに対する規制を強化すれば良いのではないか。

既に貨物労働者の労働時間を規制するアメリカとヨーロッパからその答を探すことができる。国際運輸労連(ITF)道路運輸分科副議長は「アメリカの貨物労働者は、運賃が廉いと思えば労働時間記録装置を消してしまう。」「アメリカとヨーロッパで貨物労働者の長時間労働の問題が依然として残っている理由」と説明した。副議長は「労働時間を非常に厳格に規制する国々でも、貨物労働者が廉い運賃を理由に規制に違反することは頻繁だ」とし、「個別的な規制も当然必要だが、運賃を保障することが、過労と長時間労働を根絶する根本的な対策」と強調した。

2024年6月18日 毎日労働ニュース チョン・ソヒ記者

http://www.labortoday.co.kr/news/articleView.html?idxno=222088