特殊雇用職も産業安全保健法を根拠にいじめ予防を要求できる/韓国の労災・安全衛生 2024年05月26日

ケッティ・イメージバンク

特殊雇用職労働者も職場内いじめの被害者になり得るし、産業安全保健法を根拠に、いじめ防止をきちんとしなかった事業主に責任を問うことができるという、初めての最高裁判決が出された。

最高裁判所二部が、建国大が運営するゴルフ場で働いていたキャディーのAさんの死亡事件で、建国大が起こした上告を全て棄却したことが確認された。

2019年7月から建国大学が運営する坡州市のKUゴルフ場でキャディーとして働いていたAさん(死亡当時27才)は、キャディーを統率・管理する「キャプテン」のB氏から持続的ないじめに遭い、2020年9月に自ら命を絶った。ゴルフ場のキャディーは代表的な特殊雇用職労働者だ。

一審裁判所は昨年2月、Aさんの遺族が加害者のB氏、建国大学法人を相手に起した損害賠償訴訟で、被告に賠償責任があると判決した。裁判所は「(職場内いじめの)被害者が必ず勤労者であるべき必要はない」とした。勤労基準法上は労働者でないとしても、職場内いじめが成立し得るということだ。裁判所は、加害者だけでなく、事業主の建国大の不法行為責任も認めた。「建国大学が加害者B氏の事務監督に、相当な注意をしていたとは見難い」という理由からだ。

一審裁判所は、建国大学法人が産安法上の義務を履行したかについては直接判断しなかった。産安法5条は、特殊雇用職労働者から労務提供を受ける事業主は「勤労者の身体的な疲労と精神的なストレスなどを減らすことができる快適な作業環境の造成と、勤労条件の改善をしなければならない」と規定している。産安法77条は、「事業主は特殊雇用職労働者の労災予防のための安全保健措置をしなければならない」となっている。

控訴審裁判所は一審と異なり、この争点についても判断した。控訴審裁判所は昨年12月、建国大の賠償責任の範囲を説明し、「事業主である建国大は、ゴルフ場競技補助員だったAさんを保護する義務があり(産安法5条、77条、施行令67条参照)、加害者の不法行為を知ることができたにも拘わらず、Aさんが死亡に至るまで、Aさんのための特別な措置をしなかった」とした。勤労基準法上、労働者として認められず、勤労基準法上のいじめ規定を適用されないとされていた特殊雇用職労働者が、産安法によって保護を受けられるということが確認されたのだ。同時に産安法5条は、「身体的疲労と精神的ストレス全般」を包括して事業主に責任を賦課しているので、特殊雇用職労働者は、いじめからの保護を超えて、安全に働く権利を要求できる根拠条項になり得ると評価されている。

遺族を代理した職場の甲質119代表のユン・ジヨン弁護士は、「今回の判決は、産安法5条が特殊雇用職労働者に適用された初めての事例で、特殊雇用職労働者の事業主全体に、職場内いじめを含めた一般的な保護義務と責任を問うことができる基準になるとみられる。」「但し、特殊雇用職労働者を勤労基準法上の勤労者と認定することが根本的な解決策だ」と話した。労働健康連帯のチョン・スギョン共同代表は、「雇用労働部は、特殊雇用職労働者へのいじめを監督できる根拠を産業安全保健規則に作るべきだ」と話した。

2024年5月26日 京郷新聞 キム・ジファン記者

https://www.khan.co.kr/national/labor/article/202405261355001