裁判所「不規則勤務者の過労、労働部の告示では判断できない」/韓国の労災・安全衛生 2024年05月17日
勤務時間が不規則な労働者の過労の有無を、雇用労働部の告示を基準に判断してはならないという裁判所の判断が出た。
法曹界によると、ソウル行政裁判所は建設現場の所長のAさんが提起した療養不承認処分取り消し訴訟で、原告勝訴の判決を行った。
Aさんは建設現場で所長として人事管理をすると同時に、足場工などの肉体的に労働強度の高い業務も行ってきた。Aさんが突然倒れたのは2022年2月28日。退勤後に家で夕食を摂っている途中に病院に運ばれ、脳出血・半身麻痺などと診断された。
Aさんは過労による業務上災害だとして、公団に療養給与を申請した。不規則な勤務時間に、随時延長・夜間労働をするなど、休日が不足していたこと、倒れる直前に連続10日間働くなど、常に過重な業務に苦しめられたことなどを理由に、業務関連性を主張した。
公団は不承認とした。Aさんが休日の翌日に正常勤務した後に家で倒れたこと、突発状況や急激な業務環境の変化がなく、勤務時間が労働部の告示の過労基準に達していないことなどを考慮した、と理由を明らかにした。Aさんに基礎疾患である高血圧と脳動脈瘤が内在していたことも、不利な事情として参酌された。
10日連続業務を考慮すれば『過労』
裁判所はAさんの手を挙げた。労働部の告示を絶対的な基準としてAさんの過労の有無を判断した勤労福祉公団とは違って、裁判所はAさんの不規則な勤務時間に注目した。
Aさんが倒れる前の一週間の業務時間は53時間だ。労働部の告示上の過労と認められるためには、倒れる前の12週間の一週間の平均業務時間である45時間24分より30%以上増えなければならないが、これには届かなかった。脳血管の疾病など、業務上疾病の可否決定の基準となる労働部の告示上の、短時間に業務上の負担が増えたとは見難い状況だ。
裁判所は、業務時間が少なく計算されたというAさんの主張を認めた。「Aさんが倒れる前に連続10日勤務した期間を考慮せず、一週間単位で週当りの平均業務時間を算定した。」「2022年2月頃、Aさんの勤務日が以前より短かった影響で、労働部告示に定めた傷病発病前の一週間以内の業務量と、12週間の一週間平均業務量が少なく算定されたとみられる」と指摘した。
連続勤務を基準に計算すれば、Aさんが倒れる二日前の、十日間連続して働いた時間は91時間30分だ。一週間当たりの平均業務時間は64時間3分で、前の45時間24分に較べて40%以上増加した数値だ。
裁判所は「告示で定めた一定期間内の仕事量の増加と業務時間要件は、業務上の環境変化や過労の有無を判断するときの一つの考慮要素に過ぎず、絶対的な判断基準にはならない」とし、「Aさんが傷病発病直前に業務上の負担が増加し、脳血管の正常な機能に明確な影響を与えかねない肉体的・精神的な過労を誘発した場合に該当すると見る余地がある」と判断した。
職業環境の「短期間の業務時間の変化により発症」
Aさんの基礎疾患に集中していた臨床医学科とは異なり、職業環境医学科の鑑定ではAさんの不規則な勤務時間などに言及し、短期間の業務時間の変化など、業務によって傷病が発病したとみたことも判決に影響を与えた。
この事件を担当したキム・ヨンジュン、キム・ウィジョン弁護士は「Aさんの基礎疾患と、過労とはみられない勤務時間などで難しい事件だった。」「短期間でも勤務時間が増加したことを強調して、今までの結果を変えることができた」と話した。続けて「このような療養給付事件では、臨床科よりも業務関連性を明らかにできる職業環境医学科の鑑定がより有利だということが確認できた」と付け加えた。
2024年5月17日 毎日労働ニュース カン・ソクヨン記者
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