化学物質に関する世界的枠組みと化学物質と廃棄物に関するボン・ハイレベル宣言が採択:ILOへの影響/国際労働機関(ILO),2023.10.5

ILOは、2023年9月25日から29日までドイツのボンで開催された第5回国際化学物質管理会議(ICCM5)に出席し、三者構成組織の参加を組織した。

数十年にわたる構想、そしてボンでの何日にもわたる激しい交渉の末、この会議は2つの重要文書を採択することができた。

・ 化学物質に関する世界的枠組み(GFC)
・ 化学物質に関するボン・ハイレベル宣言(GFCのためのハイレベルな行動要請を提供するもの)

GFCの目的は、労働者を含む人間の健康を守るために、化学物質及び廃棄物による危害を予防し、または予防が不可能な場合に危害を最小化することである。

有害化学物質にもっとも多く曝露しているのは労働者である。そのうち100万人以上の労働者が有害化学物質への曝露が原因で命を落とし、数え切れないほどの労働者が衰弱させる疾患や生涯にわたる障害に苦しんでいる。

ILOとその構成者は、労働部門の関与を促進するための文書や、ディーセン・ワーク、公正移行、労働安全衛生、デューディリジェンスに関連する主要なILO原則、労働における基本原則及び権利としての安全かつ健康的な労働環境を含めることへの直接的な言及について、交渉に成功し、重要な文章を確保することができた。この枠組みには、国際労働基準への直接的な言及も含まれている。

全体として、これは労働の世界にとって重要な勝利であり、ディーセントワークや社会正義といったILOの主要原則が、ハイレベルの多部門の利害関係者による健全な化学物質・廃棄物管理に関わる世界的なプロセスに主流化されることを保証するものである。

枠組みに向けた交渉に加え、ILOは多くのハイレベル・パネルやサイド・イベントに参加した。

・ 国連事務総長及びILO事務局長によるハイレベル・パネル
・ ILOサイドイベント「化学物質と廃棄物の健全な管理:安全かつ健康的な労働環境に対する権利の核心」

化学物質に関する世界的枠組みの主要要素

枠組みの全体的な目的は、導入部で労働者について明確に言及することで合意した。「枠組みの目的は、化学物質及び廃棄物による危害を予防し、または予防が不可能な場合に最小化し、環境及び脆弱なグループや労働者を含む人間の健康を守ることである」。

枠組みの「原則及びアプローチ」として、公正移行に具体的に言及されている。「持続可能な生産への移行は、地域社会、健康、生活に予期せぬ影響を及ぼす可能性がある。化学物質及び廃棄物の健全な管理を伴う環境的に持続可能な経済への公正な移行は、すべての人のためのディーセントワーク、社会的包摂、人権の保護、貧困の撲滅という目標に貢献する」。

労働部門との関係強化の重要性を明確に認めている。「労働の世界における化学物質及び廃棄物の健全な管理は、労働者、地域社会、環境を守るために不可欠である。安全かつ健康的な労働環境は、労働における基本原則及び権利である。したがって、すべての労働者は、サプライチェーン全体を通じて、有害な化学物質及び廃棄物から保護されるべきである。関連する国際労働基準の批准と実施を含む職場の対策及び方針は、化学物質及び廃棄物管理の取り組みに統合されるべきである」。

部門別取り組みの強化に関するこのセクションでは、デューデリジェンスについても明確に言及している。「産業界及び民間部門は、化学物質及び廃棄物管理における健康と安全に関する国際労働機関(ILO)の基準を含む国際基準が、健康を保護し人権を尊重するために、バリューチェーン全体で実施されていることを確実にするために、デューデリジェンスを実施すべきである」。

具体的にOSHに特化した目標がある。

・ 「目標D7-2030年までに、関係者は、すべての関連部門及びサプライチェーン全体において、環境保護対策と同様に、効果的な労働安全衛生慣行を確保するために、対策を実施し、努力する」。

附属書は、従うべき原則とアプローチの枠組みを提供し、また、OSHと化学物質に関するすべてのILO基準及び関連するガイドライン(公正移行など)が参照されている。

https://www.ilo.org/global/topics/safety-and-health-at-work/news/WCMS_897009/lang–en/index.htm

世界的な化学物質安全協定:
労働者には大きな勝利、ILOには大きな課題
国際労働組合総連合(ITUC),2023.10.5

第5回化学物質管理国際会議(ICCM5)は、「新たな化学物質に関する世界的枠組み[GFC:日本の環境省は「新たな国際化学物質管理に関する枠組み文書」としている]-化学物質や廃棄物による害のない地球のために」を採択して閉幕した。

オーストラリア、バングラディシュ、ドイツ、モーリシャス、ルーマニア、 シンガポール、アメリカから参加した世界の労働組合の代表団は、化学物質の抽出、生産、 使用、流通、廃棄に関して、労働者のために大きな勝利を確保した。

労働者は現在、2017年から2030年の間に規模が倍増すると予想される産業において、毎年世界中で約100万人の労働関連死を引き起こすリスクに直面している。

今回の合意は、国連、各国政府、産業界、そしてとりわけ、2024年から2027年にかけて生物学的危険因子条約と厳しい新たな化学物質安全法制を検討するILOにとって、課題を設定するものである。

安全で健康的な職場

ILOが昨年、安全で健康的な労働環境が労働者の基本的権利であるとの認識を明示したことを踏まえ、会議の最後に採択されたハイレベル宣言は、汚染が疾病と早期死亡の世界最大のリスク要因であることを強調している。

同宣言は、バリューチェーンとサプライチェーン全体を通じて、ディーセントで安全かつ健康的で、持続可能な労働を促進し、誰一人取り残さない公正な移行の過程で有害な化学物質への曝露を防止し、もっとも有害なものを段階的に廃止する、人権に基づくアプローチを国際社会に約束するものである。
ITUCのオーウェン・チューダー書記次長が労働組合代表団を率いた。

「労働者は、農業、清掃、工場、物流、廃棄物処理など、多くの産業で化学物質暴露の最前線にいる。労働者は、自らを守る資源もなく、しばしば汚染にさらされる地域社会で生活している」。

「この画期的な協定は、職場や業種ごとの団体交渉、国内外の法律、官民の投資決定、公共調達、貿易において、意思決定の中心にデューディリジェンスを据えて、より安全で健康的な労働を推進する機会を組合に与えるものである」。

「とりわけ、安全で健康的な労働環境に関する世界の主導的機関としてのILOの役割を確固たるものにするものである。私たちはすべての人のために、より清潔で環境に優しい未来を創ることができる」。

世界的枠組みには、政府、多国間機関、企業、組合、NGOが参加している。ICCM5では、労働組合が先進的な政府や環境・健康NGOと協力した。ITUCの安全衛生アドバイザーであるロリー・オニールが、会議の最後に枠組みの事務局に選出され、化学物質の安全衛生に関する世界的な意思決定における労働組合の役割が強化された。

https://www.ituc-csi.org/global-chemicals-safety-agreement?lang=en

安全センター情報2023年12月号