過重労働・パワハラでうつ病 神奈川●記録が動かぬ証拠で労災認定
横須賀労働基準監督署は、2013年12月24日付で、ビルメンテナンス会社の元社員Tさん(38歳)の精神疾患は長時間労働及びパワーハラスメントが原因と判断し、労災認定した。
Tさんは、2010年秋に神奈川県横須賀市にあるビルメンテナンス会社D社に入社した。入社当初から、「うちは月給制だからタイムカードはない」と説明され、毎日早朝から深夜まで働いても時間外手当は付かなかった。
病気で休職する半年前までの時間外労働は、月平均97時間だった。また、入社当初から社長をはじめ上司から嫌がらせや、言葉によるからかいなどのいじめを受け、精神的に逼迫していった。
その他、D社は知的障害者の青年を1名雇用していた。彼に対する精神的暴力、直接的な暴行及び賃金未払いなどを会社ぐるみで行っており、その常軌を逸した行動に、Tさんは次第に疑問を抱くようになった。しかし、年齢的に転職は厳しいと考え、勤務を続けた。
2012年夏頃から作業量や時間外労働が増え、また、設備の資格を取るよう勤務後の試験勉強を強要され、疲労や睡眠不足などから体調に異変を感じるようになった。
体力的、精神的に限界を感じ、労働組合ユニオンヨコスカに相談。組合のアドバイスで久里浜医療センターを受診したところ、うつ病と診断された。
休職に入ったTさんは、病気は会社の長時間労働が原因であるとして、2012年11月14日に横須賀労基署に労災申請を行った。その後、認定までおよそ1年余かかったが、入社日から手帳に個人的に付けていた出・退勤時間の記録が動かぬ証拠となり、労災認定に至った。
この間、ユニオンヨコスカ及び神奈川労災職業病センターによる労基署交渉も功を奏したと思われる。また、団体交渉で、未払い賃金の回収にも成功。入社当時から会社のやり方に疑問を持ち、地道に付けていた記録が功を奏した。
半年の休職期間を経て、Tさんは、医師の指示で転職し、月1回の通院と薬物療法を続けながら新たな職場で元気に勤務している。
Tさんは「最近話題のブラック企業の問題は、テレビや新聞だけの話ではなく、ごく身近な誰にでも起こりうる現実の問題である」と言う。会社が違法行為を犯していないか、社内で人権の侵害が行われていないかなどの従業員のチェックが常に必要であるとし、自己による勤怠管理、パワハラ等の記録で自分に防御線を張ることを強く勧めている。「その記録が、のちにトラブルになった時の証拠として自分を助けてくれる可能性は十分ある」と語る。
安全センター情報2014年5月
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