青年労働者の労災死、もう少し大きく考えよう 2023年07月14日 韓国の労災・安全衛生
二人の若者が職場で命を落とした。大型マートでカートの整理業務の手助けに行った29才の職員は、友人に「一日で4万歩歩いた」というメッセージを残して、熱中症で亡くなった。あるアパートのエレベーターを点検していた27才の青年は、二人で作業しなければならない仕事を「一人ではできません」というメッセージを同僚に残して、8階にあったエレベーターから落ちて死亡した。
事業主が少しでも安全保健環境に気を遣っていたら、二人の青年は普段通りに帰宅し、明日の準備をしただろう。若い青年の残念な死が広く知らされ、全国民が安全保健措置を疎かにした会社を非難した。雇用労働部も「重大災害処罰などに関する法律」(重大災害処罰法)の適用対象かどうかを検討し、該当業者を厳しく調査している。
未来が揚々とした若者たちの死を、多くの人たちが残念に思い、社会の関心が注がれる。彼らの死に対する切なさと怒りは、業者に対する不買運動に繋がったりもする。当然、労働災害に関する法と制度を改善するパワーにもなる。
しかし、多くの人々は青年労働者の死にだけ注目している。労働災害は誰にでも起こり得ることであり、死亡者の災害の原因を調べるよりも、死だけに注目する。青年労働者の労災死亡事故では背景を見なければならない。韓国の労災事故では青年層(18~34歳)の死亡者の比率が少ないということだ。国家統計ポータル(KOSIS)が提供する『死亡災害現況と分析』の2021年の資料を参考にすれば、2021年の全体死亡者280人の内、青年層に当たる18~34歳の死亡者は96人だ。結局、青年労働者の死は全労災の『氷山の一角』だ。一方、中年層(35~59歳)は1041人、60歳以上の壮年層は943人だ。
青年一人の死の背景には無数の死がある。青年一人の死がマスコミで知らされるときには、中高年の労働者は20人の割合で職場で亡くなっている。ある意味、数多くの中高年労働者が先ず亡くなり、ついに青年までが死ななければ、労災事故が大衆に知らされないという状況だ。労働健康連帯の『今月の企業殺人』資料によれば、エレベーター業者で整備作業中に青年労働者が亡くなった6月一ヶ月間に、墜落事故で亡くなった労働者は16人で、この内、年齢が確認された労働者10人の内の8人は中・高年だった。
2022年に未来アセット投資と年金センターが分析した資料によれば、我が国の労働者の平均引退年齢は49.3歳だという。この内、非自発的早期退職の割合は41.3%だ。当然、生計維持が切実な人たちが多くならざるを得ない。自分がやってきたことと違う仕事をするしかない。年はいっているが、経歴の浅い職員だ。業務の熟練度が低いため、労災の危険は高まらざるを得ない。中・高年の労働者は身体能力も落ちる。同じ怪我でも、大きな怪我をする可能性は、青年層より遙かに高い。その上、労災高危険群事業場(中小建設事業場と製造業)に転職することも多い。
結局、私たちは青年の死を「青年の死」と考えてはいけない。背景にある中・高年労働者の死と、労働者たちが危険な職場に行かざるを得ない要因まで見るようにしなければならない。もう少し大きく、もう少し広く見ながら、事業主は安全管理者と保健管理者を選任し、産業安全保健管理体系を準備しなければならない。現場で働く労働者の意見を取りまとめて、事業場で発生し得る有害・危険要因を取り除いていく技術的な領域と、技術的な領域を極大化できるような制度作りと改善、これらをモニタリングできる行政ネットの構築に関心を持てるように、方向を定めなければならない。
青年が働き難い事業場は、中高年には遙かに働き難い事業場だ。結局、中・高年が仕事を安全にできなければ、青年も安全にはなれない。中・高年が安全に働ける職場に関する苦心も一緒にしなければ、青年の死を止めることはできない。安全でない雇用を質の低い雇用だと看做して、見過ごすことはできない。青年労働者を死地に追いやった事業主を処罰し、報復する以上に、中・高年の労働者が安全に働ける労働環境を作っていくことも、やはり同時に考えなければならない。
安全な事業場を作ること、青年の労災を見ながら中・高年の労災まで考える慧眼が必要だ。どんなに時代が「世代論」によって青年と中・高年を分けたとしても、安全な職場に対する考えでは、この二つを分けて考えてはならない。そのように考えた途端に、数多くの労働者が職場から家に帰れない現実は変わらないだろう。
2023年7月14日 毎日労働ニュース ハ・インヘ安全管理労働者
http://www.labortoday.co.kr/news/articleView.html?idxno=216211