女性の「早期閉経」に障害等級不在、裁判所初の障害認定 2023年3月9日 韓国の労災・安全衛生

資料写真/イメージトゥデイ

『卵巣喪失』で早期に閉経し、生殖機能を喪失したにも拘わらず、別途の具体的な法律上の基準がなく、低い障害等級を受けた女性労働者に、裁判所が等級を上方修正する判決を行った。男性が生殖機能を喪失した時に付与される『障害等級7級』と同一に解釈した。早期閉経障害に関する司法府の初の判断だ。

10年間半導体工場に勤務で『早期閉経』、『生殖機能喪失』の不認定の判定に訴訟

<毎日労働ニュース>の取材によると、ソウル行政裁判所はLG電子の半導体労働者A (40)さんが、勤労福祉公団に起こした障害等級決定処分取り消し訴訟で、原告勝訴の判決を行った。一審だけで2年8ヵ月かかった。公団は3日に控訴した。

Aさんは2003年からLG電子平澤工場で働いていたが、2012年4月に『再生不良性貧血』に罹った。裁判所で労災が認められ、療養中に再度『早期卵巣不全』と『脾臓欠損』の診断を受けた。『早期卵巣不全』は、35歳以前に閉経と同じように卵巣の機能が停止することで、閉経と卵胞枯渇のためだ。この病気に対して追加の傷病が承認され、2017年7月まで療養した。

その後、Aさんは障害給与を請求したが断られた。公団は「生殖能力に明確な制限が残っている人に該当する」としたが、簡単な仕事しかできないというケースではないという理由で、障害等級8級11号(脾臓または片方の腎臓を失った人)と決めた。『脾臓欠損』だけが障害と認定されたのだ。産業災害補償保険法の施行令の別表6は「障害等級基準」を1~14級に区分している。障害が重いほど等級が高くなる。

早期卵巣不全障害の不認定に、Aさんは2020年6月に訴訟を提起した。Aさんは「女性が生殖機能を喪失した場合、身体への悪影響は男性より大きいのに、別途の障害等級基準がなく、立法の不備だ」と主張した。男性の場合、「両側の睾丸を失った場合」は障害等級7級が認められる。現在、労災保険法施行令は「生殖器に明確な障害が残った人」を性別と関係なく9級14号と認定している。女性の場合、生殖機能に障害が生じても、男性より低い等級が付けられるということだ。

これに対しAさんは『障害等級基準』に規定されていない障害は、類似の障害等級に定めるという施行令(53条3項)を根拠に、7級と認定するように要求した。更に、9級障害だけが認められても、脾臓欠損と重複した障害を負っているため、等級を上方修正するべきだと主張した。 施行令は、1~3級以上の障害が2つ以上あれば、1等級上方修正すると定めている。

裁判所「早期閉経も生殖能力の喪失と見るべき」
「男性と障害等級が違うほど大きな差はない」

裁判所は公団の判定を覆してAさんの手を挙げた。男性が睾丸を失った場合と類似の障害に該当するとし、障害等級7級を認めた。裁判所は「法令は『卵巣喪失』に関して別途の規定を設けていないが、男性の『睾丸』に対応する女性生殖器官が『卵巣』という点で、似たような障害に該当すると見なければならない」と判示した。

特に、『睾丸』の場合、『生殖能力喪失』の側面を重要に考慮し、7級を付与したもので、『卵巣』も同じ様に見るべきだと解釈した。裁判所は「睾丸・卵巣の場合、生殖機能が喪失した場合であれば物理的な喪失で、機能的な喪失だからといって障害等級が異なるほど重大な差が存在するとは考えにくい」と指摘した。大韓医療鑑定学会が2007年の研究報告書で、「睾丸または卵巣の物理的な喪失や機能的喪失を、全て同等の障害等級と規定することに改正する案」を提示したことも根拠となった。

『卵巣欠損』は9級に該当するという裁判所の鑑定の所見も排斥した。裁判所は「労働喪失の側面で、7級に該当するとは見難いということに根拠にした個人的な意見に過ぎない」と一蹴した。ただ、Aさんの疾病は同じ腹部臓器障害で、二つの障害が複合的に発生した障害ではないと見た。

Aさんの代理人のオ・ミンエ弁護士は「障害等級基準が60年前とほとんど変わっておらず、男性と外形上に現れる障害に集中している」とし、「特に、男性と違って女性の生殖機能に関しては、機能的な損失を障害等級に反映していない状態だったが、今回の判決が障害等級基準の問題点を確認させたことに意味がある」と評価した。

2023年3月9日 毎日労働ニュース ホン・ジュンピョ記者

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