週60時間以上働いて肝臓がん、裁判所が業務上と判決/「これでも労働時間を柔軟化?」 2023年1月6日 韓国の労災・安全衛生
一週間に60時間以上勤務し、肝臓がんに罹って死亡した警察官の公務上災害を裁判所が認めた。一ヵ月に最長283時間(平日1日約13時間)勤務したことが判った。昨年12月に「未来労働市場研究会」が勧告した通りに労働時間の柔軟性が拡大すれば、このような事例が増えるおそれが大きいと指摘される。
肝臓がん診断の直前の12週間、1週間63時間勤務
労働部の「慢性過労」の基準を超過
法曹界によると、警察官A(死亡当時40歳)さんの妻が人事革新処に起こした殉職遺族給与不承認処分取り消し訴訟で、原告勝訴判決を行った。人事処は不服として控訴した。
Aさんは2005年の任用後、約11年間勤務していたが、2016年にB型肝炎と肝硬変症に罹った。治療中の2019年10月に肝臓がんと診断され、結局、六ヵ月後の2020年1月に死亡した。
生前のAさんの業務時間は想像を絶していた。2014年4月に「世越号惨事」で彭木港で収拾作業をして、月に368時間働いた。一日に約17時間働いたわけだ。2016年2~5月も凶悪事件を引き受け、一ヶ月に最大72時間の超過勤務をした。
地方選挙があった2018年にも選挙専担チームに投入され、日常的な夜勤が続いた。同僚は「Aさんは家に帰る時間よりも事務室で寝る時間が多かった」、「超過勤務時間の制限があり、実際の勤務時間が反映されていないことが非常に多い」と陳述した。
凶悪犯罪を捜査した2019年に仕事量が急増した。四交代で働き、月255~283時間働いた。休日を除けば、一日11.5~12.8時間ずつ働いたという計算だ。肝臓がんの診断直前にも10日間で105時間を職場で過ごした。
傷病診断前の12週間の一週間の平均業務時間は約63時間と確認された。発病直前の12週間、一週間の勤労時間が平均60時間を超過した場合、「慢性過労」と判断する雇用労働部告示基準を越えたのだ。結局、Aさんは肝臓がんが診断から二ヵ月で2倍以上も急速に進行した。
「未来労働市場研究会」の勧告、健康であっても死の敷居に追い込む
人事処は過労と傷病の因果関係が明らかになっていないとして遺族給付を不承認としたが、裁判所の判断は違った。裁判所は「故人は難しい業務を担当しながら、家にも帰らずに生活する姿が目撃されるなど、無理な勤務をした」とし、「B型肝炎を考慮すれば、余りに過重な業務遂行に該当する」と判示した。
特に、B型肝炎を適切に管理していたにも拘わらず、肝臓がんが急激に悪化した理由は「長時間労働」にあると判断した。裁判所は「耐え難い程度の業務負担とストレスが影響した」と強調した。同時に「業務上の過労が肝臓がんの発病に及ぼす影響が医学的に明確に究明されていなくても、過労で免疫機能が急激に低下した状態がB型肝炎と重畳作用して死亡に至った」と結論付けた。
専門家は「労働時間の柔軟化」が現実化すれば、Aさんのような事例が増えるおそれがあると憂慮する。政府は延長勤労時間管理単位を、現行の「週単位」から最大「年単位」に変える方案を推進している。こうなれば、週当りの最大労働時間が少なくとも69時間にまで増える可能性が高い。三ヵ月間、一週間平均60時間を超過したり、肉体労働や交代制業務など、業務負担の加重要因にさらされれば、業務と疾病の関連性は高くなる。
金属労組法律院のパク・ダヘ弁護士は「Aさんの事件は、不規則な長時間労働が、持病はあっても健康に生きることができた多くの人々を、死の敷居まで引っ張っていくことがあることを示す事例」とし、「未来労働市場研究会の勧告は、まとめて働いても後で休めば良いという論理だが、人間の生き方と身体に対する理解がないためにできる主張だ。結局、不規則な長時間労働に帰結する」と批判した。「公務員も不規則な労働時間に耐えているのに、更に、すべての企業の労働時間を揺るがすというのは、余りにも不当な政策になる」と強調した。
2023年1月6日 毎日労働ニュース ホン・ジュンピョ記者
http://www.labortoday.co.kr/news/articleView.html?idxno=212850