環境リスクとがんとの関連:アスベスト -European Environment Agency(EEA), 2022.6.28
すべての種類のアスベストが発がん物質として知られており、主に中皮腫や肺がんを引き起こす(ただし、それだけではない)。[EUでは]2005年以降禁止されているにもかかわらず、アスベストへの曝露は起こり続けており、過去のアスベスト曝露に起因するがんの症例は今後もみつかり続けるだろう。現在及び予測可能な将来においてとくに懸念されるのは、建物の改修や解体の際にアスベストに曝露する可能性のある労働者である。
アスベストとがん
すべての種類のアスベストが、IARC[国際がん研究機関]によって既知の発がん物質に分類されており、肺がん、喉頭がん、卵巣がんと関連しており、また、悪性中皮腫のほぼすべての症例の原因となっている。EU[欧州連合]では2005年から禁止されているものの、欧州におけるその遺産は根強く残っている。アスベスト曝露からがんの発症までの潜伏期間が長いため、アスベストに起因する症例は長期間出現し続ける可能性がある。さらに、アスベストは欧州の多くの建物や、かつての工業地域や汚染地域にいまなお存在している。国際労働衛生委員会(ICOH)によれば、アスベストは欧州で年間最大88,000人の命を奪い、職業性肺がんの55~85%を占めている可能性がある。
欧州におけるアスベスト曝露の傾向
EUではアスベストのあらゆる使用が2005年から禁止されており、一部の加盟国はそれよりかなり前にアスベスト禁止を採用していた。最新のデータは容易に入手できないが、2014年の研究によると、ほとんどの欧州諸国において2012年までにアスベストの使用は無視できるほど少なくなっていた。しかし、上述したように、これはアスベストによる発がんリスクがもはや重要でなくなったことを意味するものではない。欧州委員会の「リノベーション・ウェーブ[改修の波]」などの大規模な改修計画は、適切な予防措置を欠けば、建材に埋め込められたアスベストを飛散させることによって、不注意に曝露を増加させる可能性がある。
EUはアスベストについて何をしているか
1990年代に一部のEU加盟国がアスベストの使用を禁止し、2005年にはEUで販売される製品中のアスベストのEU規模の禁止が出された。それ以降、環境汚染、化学品安全、労働者保護や消費者製品に関する様々な指令を通じて、アスベストに関するEUセーフガードの導入が進んできた。現在、労働におけるアスベスト指令(2009/148/EC)に基づく現行のOEL[曝露限界値]を引き下げるための準備作業が進められている。また、欧州議会が、各国のアスベスト除去戦略の最低要件を設定する枠組み指令の提案を欧州委員会が提出するよう求めている。
※欧州環境機関(EEA)ウエブ報告書「がんを打ち負かす-欧州の環境の役割」の一部である。
https://www.eea.europa.eu/publications/environmental-burden-of-cancer/asbestos
安全センター情報2022年10月号