世越(セウォル)号惨事の救助に参加した民間潜水士の骨壊死、労災認定 2022年6月28日 韓国の労災・安全衛生

資料写真/チョン・ギフン記者

2014年の世越(セウォル)号惨事当時、救助活動に参加した民間潜水士、A(70)さんの「骨壊死」が労災と認定された。『最悪の潜水病』と呼ばれる骨壊死は、激しい関節活動で骨に血液の供給ができず、骨組織が死んでいく疾患だ。Aさんをはじめとする民間潜水士8人は、骨壊死によって生業の産業潜水士をあきらめなければならなかったが、政府は世越号惨事との因果関係がないとして、骨壊死に対して何の補償もしなかった。正常な日常生活も難しい状況で病院治療費も受けられないまま困難を経験した民間潜水士たちに、労災保険による補償の道が初めて開かれた。惨事から8年目だ。

法務法人カムチョンと勤労福祉公団統営支社によれば、Aさんの左肩関節無血性壊死に対する労災療養給付申請が20日に承認された。40年間、産業潜水士として働いたAさんは世越号惨事のニュースに、本業をしばらく置いて、2014年4月18日に全羅南道珍島の沖合に向かった。その後二ヵ月以上、海洋警察と一緒に犠牲者の捜索と救助活動を行った。Aさんは犠牲者を一人でも多く見付けるために、毎日1時間以上海に飛び込んだ。

Aさんは救助業務が終わった後、左肩関節の痛みがひどくなって病院を訪れ、血液供給ができずに骨が壊死する「無血性骨壊死」と診断された。無血性骨壊死は高気圧環境で働く潜水士によく現れる慢性疾患だ。潜水活動による身体への圧力の変化が高いほど、潜水経歴が長いほど発病率が高い。

手術後も痛みは続いた。全身が満身創痍状態になり、生計活動もできなかった。2020年5月に民間潜水士も世越号被害救済対象に含ませる「故キム・グァンホン法」(4・16世越号惨事被害救済および支援などのための特別法)が作られ、Aさんは補償を申請したが、海洋警察はAさんの負傷等級決定の過程で無血性骨壊死は除外した。水難救助活動と無血性骨壊死の発生との因果関係は認められないという理由だ。

Aさんをはじめとする民間潜水士8人は、海洋警察を相手に無血性骨壊死に対する補償を要求する行政訴訟を起こした。しかし、ソウル行政裁判所も、世越号の救助活動によって骨壊死が発病したり悪化したとは見られないとし、海洋警察の手を挙げた。裁判所の要請によって諮問を行った医療スタッフは「潜水士たちは、世越号の救助活動時点で既に少なくとも14年の潜水経歴を持っている」。「救助活動への投入以前に骨壊死が生じた可能性がある」という所見を出した。Aさんが労災を申請することになった理由だ。

公団「潜水士の骨壊死は業務上災害」
「救助活動の際、過酷な潜水環境の骨壊死の原因となったはず」

勤労福祉公団は骨壊死と診断された時点(2014年7月~10月)以後、時間が経過し、規定上労災申請期間を超過したと判断した。また、惨事救助活動はボランティアで、業務上災害を補償する労災保険の目的とも適合しないとした。

しかし、業務関連性の特別診察で、骨壊死が世越号惨事の直後に発病した傷病であり、当時の過酷だった潜水環境を考慮すれば、骨壊死が潜水によって誘発される可能性は十分だという所見が出た。釜山業務上疾病判定委員会は「長期間、水深10メートル以上の深さで作業した経験を考慮すると、骨壊死との業務関連性が認められる」と明らかにした。

Aさんは「セウォル号被害支援法で骨壊死は補償されず、どうやって生きるのか漠然としていたが、労災として承認されて有り難い」と話した。ハン・ウギョン公認労務士は「世越号の民間潜水士は大きな補償を望んでいるのではなく、ただ生計と健康を心配している」とし、「Aさんの他にも三人の潜水士が骨壊死で労災申請をしている状態で、他の一人は労災不承認と判定されて審査請求を準備中」と明らかにした。

資料写真/チョン・ギフン記者

2022年6月28日 毎日労働ニュース キム・ミヨン記者

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