安全保健の新しい30年を開くキーワード「労働者参加」 2019年2月25日
昨年末に国会を通過した産業安全保健法の全面改正は、2020年1月16日から施行される。1990年に一度改正された産業安全保健法が、28年振りの大手術を受けた。二度の改正の背後には二人の青年の死があった。1988年に温度計の工場で水銀中毒で死亡した15才のムン・ソンミョン君と、2018年に火力発電所でコンベアに挟まれて亡くなった24才のキム・ヨンギュンさんだ。 二人の間の30年間で変わったものは何だろうか。今私たちは何を変えれば労働者の死の行列を防げるのか。
22~23日、「安全保健の新しい30年を開こう」をテーマに「2019労働者健康権フォーラム」が開かれ、労働安全保健活動家と専門家180人が会した。
政府が集計した産業災害統計によれば、2001年から2016年までに3万3902人が労災で亡くなった。民主労総のチェ・ミョンソン労働安全保健室長は「労働者健康権運動をして無数の闘いを展開し、新しいパラダイムで法・制度の変化を作ってきたが、労災は30年間減っていない」と批判した。
ペク・トミョン・ソウル大保健大学院教授が一般人口の死亡率と労災死亡万人率を比較したところ、2000年以後の一般人口の死亡減少率が労災死亡の減少率より高かった。労災死亡の減少は社会全般の事故死亡が減少した結果であって、事業場の労災予防の効果ではないと分析した。事業場の重大災害の態様と頻度はもちろん、代表的な職業病である騒音性難聴と重金属中毒が減らないのも同じように解釈される。
チェ・ミョンソン室長は「全面改正された産業安全保健法を現場に定着させるには、労働者参加を大幅に拡大しなければならない」と主張した。
同じ期間に、判例で労働者の健康権はどれ位進展したのだろうか。クォン・オソン誠信女子大教授(法学)は「私たちは日常的に労働者健康権という言葉を使うが、判例から労働者健康権という言葉を見つけるのは難しかった」と話した。「労働関係法は使用者に安全(健康)配慮義務を賦課することによって、労働者の健康を守ろうとしている」。「労働者自らが自身の健康問題に関して法的な主張ができる『権利』として把握された概念ではない」と指摘した。
今回の健康権フォーラムを貫くキーワードは「労働者参加」だ。泰安火力発電所は、キム・ヨンギュンさんが死亡するまで、非正規職の作業環境改善要求を30回以上も無視した。「設備を改善するには金がかかる」が理由だった。
ソン・ジンウ労働安全保健研究所執行委員長は「安全を権利として宣言することに終わってはいけない」とし、「権利を実現できるように労働者の参加を実質的に保障するためには、制度整備がカギ」と話した。このためには事業場の産業安全保健委員会を全面的に拡大し、権限・機能を強化しなければならない。「過半数労組がない場合には、勤労者の過半数を代表する勤労者代表制を現実に合うように手入れし、労働者の作業中止権を具体化しなければならない」と注文した。
2019年2月25日 毎日労働ニュース キム・ミヨン記者