労働部「処罰を回避するのではなく、災害予防を」 2021年12月2日 韓国の労災・安全衛生
来年1月27日の「重大災害処罰などに関する法律」(重大災害処罰法)の施行を前に、雇用労働部が処罰回避の方案作りに注力している財界に、姿勢の転換を求めた。法条文上の経営責任者の事故予防義務が不明だったり、経営責任者が法をよく知らなかったという理由でも、処罰を避けることは難しいという見通しも出てきた。
雇用労働部と法務部は、1日に韓国プレスセンターで重大災害処罰法施行対備共同学術大会を開催した。労働部のクォン・ギソプ産業安全保健本部長の基調講演、専門家と労使からの提案・討論が行われた。
厳罰にできるように判事が役割を果たさなければ
労働部は重大災害処罰法が規定する重大災害のうち、重大産業災害を予防して管理・監督をする。クォン本部長は「法制定後は、代表理事や経営陣が産業安全に関心を持ってはいるが、重大災害の予防ではなく、処罰を避ける方向に多くの努力を集中する姿勢も見せている。」「この法は、予測可能で予防可能性がある重大災害を処罰対象として、死亡事故を減らすことにその目的がある」と説明した。一般の労災には産災補償の範囲を拡大する政策を持続することで対処し、重大災害処罰法によって死亡事故を減らす、という説明だ。彼は「重大災害処罰法は、重大災害に対する経営責任者の関心と態度の転換を強く求めている。」「経営陣が関心を持てば、事故は減るに違いない。したがって、来年は死亡事故が急激に減るものと期待する」と話した。
慶北大法学専門大学院のキム・ソンニョン教授は、経営責任者の過失によって重大災害が発生したのかを糾明するには、因果事実の証明が困難なこともあると主張した。経営責任者を刑事処罰することと、法人に罰金を賦課するやり方のうちの、どちらがより重大災害の予防効果があるかも考えるべきだと主張した。キム教授は、「重大災害処罰法が施行されても、因果関係の立証不足によって無罪が多く出ることもあり、このような指摘は私たちも認めるべきだ」とし、「判事が判断する時、(処罰レベルが低い)過失犯ではなく、結果的加重犯として厳しく処罰できるようにするには、立法者の役割が必要だ」と話した。法を改正すべきだという趣旨だ。
判事「経営責任者の義務不明だ? は受け容れられない」
討論者として参加した蔚山地方法院のキム・ヨンヒ部長判事は、罰金ではなく、経営責任者を処罰する立法を選択した以上、因果関係の立証に困難が伴うのは避けられないと話した。ただ、法が作動するのには大きな困難はないだろうと主張した。「本人が経営責任者であれば、それ自体で重大災害処罰法が付与した(安全保健管理)義務が発生するということで、その義務を知らなかったと主張することは許されない」とし、「経営責任者は義務の内容が不明だったとしても、裁判では故意犯と見なされる可能性が高い」と説明した。経営責任者が、法の内容を詳しく知らなかったために義務を遵守できなかったと主張しても、受け容れられないという意味だ。
経営責任者の範囲についてもキム部長判事は、「法を作った趣旨は、最終決定権者に責任を問うこと」とし、「安全保健関連の組織体系の管理・予算決定などを独自にしなければならず、もし代表理事の意中を推測しなければならない地位にいる者なら、経営責任者とは見られない」と主張した。安全保健業務を専門に担当する責任者を別に任命しても、彼に相当な権限が与えられていなければ、結局、代表理事が責任を負うことになるという説明だ。
キム部長判事は、法の実効性を高めるために、事故のパターン別の細部規則を作る方案も代案として示した。例えば、最も多い重大災害の類型である墜落死や挟まれ事故を防ぐために、具体的な安全規定を義務化して法案に明示する方案だ。
労使は従来の主張を繰り返した。民主労総のチェ・ミョンソン労働安全保健室長は、「重大災害処罰法は、産業の変化と雇用構造の変化によって危険要因が多様化しているので、経営責任者に包括的な義務を付与して、重大災害を予防させようとするもの」と主張した。韓国労総中央法律院のムン・ソンドク室長は、「捜査機関や法院は、この法の趣旨が十分に発現できるように法を解釈し、実現すべきだ」と注文した。韓国経総のイム・ウテク安全保健本部長は、「何を守れば免責されるかが解らなければ、法を守ることはできない。」「経営責任者に与えられた義務が何かについて、詳細で具体的な解釈基準を示して欲しい」と要求した。
2021年12月2日 毎日労働ニュース チェ・ジョンナム記者
http://www.labortoday.co.kr/news/articleView.html?idxno=206190