『焼き』で自死した看護師の契約書「1年以上働く」強制する不法条項 2021年11月23日 韓国の労災・安全衛生
『焼き』(職場内いじめ)に苦しめられて極端な選択をした乙支(ウルチ)大病院の新規看護師が、病院と労働法に違反した勤労契約を結んでいたことが確認された。遺族は、この契約書せいで、職場内いじめで亡くなった看護師が病院を辞められずに自死したと主張する。雇用労働部は勤労基準法違反について調査中だ。
全国保健医療産業労働組合は23日、京畿道議政府の乙支大病院の前で記者会見を行い、亡くなった看護師のオ・某さんと、乙支学院の議政府乙支大学校病院が結んだ勤労契約書を公開した。契約書の12項には5つの特約事項があるが、保健医療労組は、この特約事項が労働者に勤務を強制し、勤労基準法に違反していると説明した。
保健医療労組が公開した勤労契約は、『勤労契約者は、使用者からの契約解約などがない限り、契約締結日から少なくとも1年勤務する義務がある』(1項)と規定している。また3項には、『勤労者が辞職しようとする場合、2ヶ月前に辞職願いを提出しなければならない』と明示されている。勤労基準法は、使用者が労働者を解雇しようとする場合、特定の理由に限っては一ヵ月前に予告しなければならないが、労働者には、特定の期間を勤務しなければならない義務はない。
オさんは亡くなった日の午前9時21分頃、職場の上司にカカオでメッセージを送り、『来月から辞めることができますか』と尋ねたが、上司は『辞職は60日前に話しをしなければならない』と答えていたことが判った。この対話が終わった2時間後に、オさんが寮で亡くなっているのが発見された。特に契約書の4項は『勤労契約者が1~3項に違反し、病院に損害および追加費用が発生した場合、これを賠償する責任がある』とし、1~3項の履行を強制するための賠償責任も明示している。遺族たちは、オさんが特約事項で心理的な圧迫を受けたと主張する。この条項もまた勤労基準法違反だ。勤労基準法第20条は、勤労契約の履行を理由に違約金を設定できないと定めている(違約予定の禁止)。労働者が雇用契約を最後まで履行できない場合、残った賃金も受け取れないことになり、違約金まで加わることになれば、自分の意思に反して雇用契約に縛られることになるからだ。
これまでに遺族たちは、3月から乙支大病院で働いたオさんの死亡原因は『焼き』だという疑惑を提起している。遺族の話を総合すれば、オさんは4月から月10万ウォンの食事代も全部使えないほど、食事もキチンと摂れない過重な業務に苦しめられていた。そのため、この何ヶ月間かの間に10㎏ほど体重が減った。深夜勤務と休日勤務も多く、先輩看護師が、他人が見ている前で、『あなたのチャートには価値がない』と言ってオさんが作ったチャートを投げ付けるなどのいじめもあったということだ。
権利探しユニオンのハ・ウンソン労務士は「1、2、3項だけなら、使用者が宣伝的な意味の文面だったと主張することもできるだろうが、これを強制する4項があるので、強制勤労をさせてはならないという勤労基準法第7条に違反している。もし該当条項を根拠に労働者の退社を拒否したり、損害賠償を要求したりすれば、処罰は避けられない」と話した。
雇用労働部は、乙支大病院とオさんとの契約書に基づいて、勤労基準法違反などを調査している。雇用労働部の関係者は、「このような契約書が、現場で問題なく通用しているということではなく、非常に特異な事例」とし、「勤労基準法違反の要素が大きく、深刻な事案だと見ている」と話した。
2021年11月23日 ハンギョレ新聞 シン・ダウン記者