死体収拾トラウマに遭う『智異山レンジャー』 2021年11月17日 韓国の労災・安全衛生

国立公園公団の救助隊員が登山中に死亡した死体を運んでいる。/国立公園公団労組

放映中の人気ドラマ『智異山(チリサン)』は、智異山で発生した死亡事故を中心に、山を守るレンジャーの話として展開している。実際、山岳国立公園では、足を踏み外して墜落したり、道に迷って低体温症に罹ったり、心臓まひなどで突然死するといった事故が絶えない。初めから死ぬ気で山を訪れる人もいる。どんな理由であれ、山で亡くなった人と一番最初に向き合うのは、警察や消防署員でなはく主に山岳救助隊員だ。

『毎日労働ニュース』が取材した結果、2018年から2020年までに、山岳と海洋国立公園で死亡者を収拾するために投入された救助隊員は全部で181人だ。29ヶ所の国立公園には救助隊48チームがあり、隊員は440人だ。正義党のカン・ウンミ議員室によれば、今年、ストレスレベル検査をした結果、181人の内、高危険群が95人にもなった。死体を見た衝撃や腐敗した死体の臭いで、外傷後ストレス障害(PTSD)といった症状を病む人が半分の水準だということだ。

救助の過程は、先ず遭難信号を受けたり探訪客が申告して、救助隊員が投入されることから始まる。国立公園公団労組のキム・ギョンボム委員長は、「広い山の中で救助しなければならないので、必須の人材以外のすべての人材が救助活動に投入されると考えてもらえばいい」と話した。

探索も容易ではない。そのため一足遅れで発見することも多い。少し遅れただけで腐敗が早く進む。そのため、救助隊員が損傷の激しい死体を発見することも多い。キム委員長は「特に自殺者の場合、死体を探すのは簡単ではない。」「見付けても耐えられないほど腐敗していたり、死体が毀損されている場合もある」と話した。

死体を発見することで仕事が終わるのではない。これらは警察ではないので、警察が来るまでジッと待っていなければならない。最も苦しい時間だ。警察が来て、身元確認と死体の収拾が終わると運柩する。これがまた山なので、救助隊員の助けが必須だ。担架に死体を移して、5~6時間を越える登山をしなければならない。肉体的な苦痛も言葉で表せないほどで、死体を運ぶことから来るストレスは深刻だ。

遭難や事故による生存者を救助する時なら、119のような消防隊の助けを受けることができる。ヘリコプターで早く移送したりもする。ところが、死亡者には消防隊は出動しない。死者だからだ。

このように発生する死亡事故が毎年10件を越える。国立公園公団が運営していない漢拏山(ハルラサン)国立公園を除く他の国立公園で発生した死亡者は、昨年は12人だ。6人が墜落死し、5人が心臓の異常で突然死した。原因不明の死亡者を意味する『その他』が1人だ。2016年に14人、2017年に18人、2018年に16人、2019年に13人だ。自殺者の数は別に明らかにしていなくて、把握は難しい。

国立公園公団もこのような問題を認識していてストレス検査をしているが、外傷後ストレス障害のような深刻な症状に対する専門的な相談はなかった。

来年には、このような救助隊員の症状を治癒するための相談プログラムが始まる。カン・ウンミ議員室のアン・ジュンオン補佐官は「今までの国立公園公団の出動事業予算2千億ウォンに、災難・救助トラウマ克服教育プログラムを運営する予算1億2500万ウォンを新規に編成した」とし、「外部の専門家と対象者を一対一でマッチングしたプログラムを運営し、トラウマを克服できるように予算の増額を政府に要請した」と説明した。現在、この予算案は国会に係留中だ。

2021年11月17日 毎日労働ニュース イ・ジェ記者

http://www.labortoday.co.kr/news/articleView.html?idxno=205939