韓国タイヤ労働者の白血病、5回目の労災認定 2021年8月9日 韓国の労災・安全衛生

韓国タイヤ大田工場/リュ・ウジョン記者

有害性物質による労働者の産業災害申請が絶えない韓国タイヤで、労働者の白血病が再び産災と認められた。この会社で白血病が産災と認められた5回目の事例だ。

金属労組大田忠北支部などの説明を総合すれば、韓国タイヤ大田工場の労働者Aさん(57)は、先月26日に勤労福祉公団・業務上疾病判定委員会から自身が病んでいる急性骨髄性白血病が業務との関連性があると認められた。

Aさんは1987年から33年間、韓国タイヤ大田工場で働き、タイヤのゴムを均等に分散させるための各種薬品の混合作業をしてきた。2019年の健康診断で最初に異常が見付かった後、昨年の健康診断で白血球の数値が減少する症状が現れ、同年12月に急性骨髄性白血病と診断された。Aさんは業務の過程で有害物質に曝露したことが該当疾患の原因だったとして療養給付を申請した。韓国タイヤは「申請者がしている業務には有害物質は含まれない」と主張した。

業務上疾病判定委員会は、全員一致でAさんの疾病が業務に起因すると判断した。判定委は「過去のタイヤ工場の疫学調査で、白血病に関する有害因子ヘの曝露が確認され、ゴム産業の仕事と血液癌の関連性が疫学研究の結果として良く知られている点、過去に洗練工程の業務を行った時に、ベンゼンが含まれた物質を扱った点、30年以上の長期間をゴム産業に従事した点などを総合的に考慮すれば、申請人の疾病と業務の間に相当な因果関係が認められる」と判定した。

金属労組の説明では、韓国タイヤの労働者の中で白血病(血液癌)を産災と認められた事例はAさんが5番目だ。2001年にイ・某さんが産業災害不承認取り消し訴訟によって白血病を産災と認められ、2003年にチョン・某さんとユ・某さんも、裁判所の判決で白血病と作業環境の関連性を認められた。このような判例が積もった結果、2012年には韓国タイヤの協力業者の職員のクォン・某さんは、同じ疾病で訴訟まで進むことなく、勤労福祉公団で産災認められた。

韓国タイヤの作業環境の有害性の問題は古くからの課題だ。2006年~2007年には、癌と心臓疾患で、韓国タイヤの労働者15人が亡くなって論議になり、2007年に実施した労働部の特別勤労監督では1394件の産業安全保健法違反が摘発されたこともあった。2008年には産業安全保健研究院が疫学調査を行い、韓国タイヤの労働者の心臓疾患による死亡率が、一般国民に比べて5.6倍に達するという事実も発見したが、結果的には『突然死と作業環境との直接的な関連性は見い出せなかった』と結論付けた。しかし翌年、大田地方法院はこれに関して、事業主の管理責任を認めた。2017年にはソウル中央地方法院も韓国タイヤの労働者だった故アン・イルグォンさんの肺癌死亡に『ゴムヒューム』が原因だと目星をつけて、韓国タイヤの作業環境と労働者の疾患との因果関係を明確に認めた。韓国タイヤは李明博(イ・ミョンバク)前大統領の姻戚が運営する企業だ。

金属労組はこの日、韓国タイヤがAさんの疾病の原因を提供したにも拘わらず、逆に退職を勧めたと主張した。金属労組は「被災者が昨年12月、在職中に白血病の診断を受けると直ぐ、韓国タイヤが慰労と生計支援と引き換えに希望退職を勧めた。労働者としては、産災に遭った上に生計の脅威まで受けなければならなかった」と主張した。これに対し韓国タイヤの関係者は「希望退職を勧めたことはなく、当事者が自ら退職した」と反論した。

2021年8月9日 ハンギョレ新聞 シン・ダウン記者

https://www.hani.co.kr/arti/society/labor/1006991.html