療養手当と葬祭料引上げ特別遺族弔慰金は据置き~石綿健康被害救済制度給付金額の見直し

環境大臣からのメッセージ「石綿健康被害救済制度の療養手当等の見直し(案)について」

2025年12月26日

石綿健康被害救済制度の救済給付の給付水準は、類似の他制度との均衡を考慮して、平成18年の制度創設時に設定されたものでございます。
一方、近年続く物価上昇を踏まえ、「経済財政運営と改革の基本方針2025」(令和7年6月13日閣議決定)において、長年据え置かれたままの公的制度に係る基準額等について、省庁横断的・網羅的に点検し、見直しを進めると示されました。
これを踏まえ、環境省としては、石綿健康被害救済制度の療養手当、葬祭料及び特別葬祭料の額について、平成18年以降の物価等の変動を考慮した額への見直しを進めることとしました。
給付額については、令和7年の全国消費者物価指数等を反映した類似の他制度の給付額等を踏まえ確定させ、令和8年4月から適用できるよう、今年度末までに必要な政令改正等の手続を進めることとしております。
引き続き、石綿健康被害救済制度を着実に運用し、石綿による健康被害の迅速な救済に努めてまいります。

中皮腫・アスベスト疾患・患者と家族の会「石綿健康被害救済制度における『特別遺族弔慰金』及び『救済給付調整金』の増額改定に関する要望書

2026年3月6日

2025年12月26日付で公表されました「石綿健康被害救済制度の療養手当等の見直し」の方針において、近年の物価上昇を踏まえ、療養手当及び葬祭料の増額改定が示されました。しかしながら、今回の見直しにおいて、特別遺族弔慰金(280万円)及び救済給付調整金(基準額:280万円)が増額の対象外とされ、据え置かれる方針であることは、法の規定及び制度の論理的整合性を欠くものであり、到底承服できるものではありません。石綿救済法は「すき間のない救済」をする理念のもとに設計された背景がありますが、今回の除外は一部遺族への差別的な扱いであり、「新たなすき間」を国が故意につくることにつながります。
つきましては、以下の法的根拠に基づき、これら給付についても、物価変動等を反映した増額改定を行うよう強く要望いたします。

1. 法第20条の規定に基づき、算出根拠の変化を総額に反映させるべきである

「石綿による健康被害の救済に関する法律」(以下「法」という)第20条第2項には、特別遺族弔慰金の額の決定プロセスについて、明確に以下のとおり規定されています。
「前項の特別遺族弔慰金の額は、指定疾病について受ける医療に要する費用及び第16条第1項の療養手当の額を勘案して単一の金額として政令で定める額とする。」
すなわち、特別遺族弔慰金の額(280万円)は、恣意的に決められたものではなく、「医療費」や「療養手当」の額を構成要素として積み上げ、勘案して設定されたものです。今回の環境省の方針では、「近年の物価上昇」を理由に、構成要素である「療養手当」等を増額することとされました。これは、弔慰金の算出根拠(勘案要素)である「療養手当の実質的価値」が変動していることを、行政自らが公に認めたことに他なりません。
法の規定上、算出の基礎となる要素(療養手当等)が増額されるにもかかわらず、その結果として導き出される総額(特別遺族弔慰金)を平成18年の制度創設時の水準に固定し続けることは、法第20条第2項の「勘案して定める」という規定との論理的整合性を著しく欠く運用と言わざるを得ません。

2. 基準額の据え置きは、調整金受給遺族への「実質的な減額」を招く

救済給付調整金(法第23条)は、制度のはざ間に置かれた遺族の不公平感を解消するため、「特別遺族弔慰金の額(280万円)」から「既支給の療養手当等」を控除して算出されます。今回の方針通り、療養手当の単価のみが増額され、天井となる280万円が据え置かれた場合、計算上、遺族が死後に受け取る調整金の額は従来よりも減少することになります。
物価高騰に対応するために療養手当を上げた結果、皮肉にも遺族が受け取る最終的な調整金が目減りし、給付総額の実質価値が低下するという事態は、制度が本来意図した「不公平感の解消」という目的に逆行するものです。

3. 基金残高は約750億円あり、増額は十分に可能である

本制度の財源となる「石綿健康被害救済基金」には、現在、約750億円もの残高があります。仮に、今回の私たちの要望を反映させても、年間に2億円程度(令和6年度支給実績の対象者数の合計587人に対して1割増額の28万円を支給したとすると約1.6億円となる)の支出の増加にしかなりません。
750億円という潤沢な基金残高に対し、この支出増は極めて軽微であり、財政上の懸念は皆無です。被害者救済のために集められた資金を、物価高騰に苦しむ遺族のために活用せず、法の趣旨に反して据え置く合理的な理由はありません。
以上のとおり、特別遺族弔慰金の据え置きは、法の規定(第20条第2項)との整合性が取れず、制度運用上の矛盾を生じさせるものであり、この法令への違背は取りもなおさず令和7年12月26日の環境大臣ご自身のメッセージにある「引き続き、石綿健康被害救済制度を着実に運用し、石綿による健康被害の迅速な救済に努めてまいります。」とのお言葉にも大きくそむく状況を作り上げることにほかなりません。このため、特別遺族弔慰金の額(及び連動する救済給付調整金の算定基準額)について、現在の280万円から物価上昇率等を勘案した額への引き上げを行うよう、政令の改正を強く要望いたします。

石綿健康被害救済制度の療養手当等の見直しについて(閣議決定)

2026年3月25日

1. 本日、「石綿による健康被害の救済に関する法律施行令の一部を改正する政令」が閣議決定されました。

2. 本政令は、近年の物価上昇を踏まえ、令和8年度分の石綿健康被害救済制度の「療養手当」「葬祭料」及び「特別葬祭料」について、平成18年以降の物価の変動等を考慮した額の改定を行うものです。

3. また、令和9年度分以降も基本的に毎年度、これらの額の見直しを行うこととしました。今後とも石綿健康被害者の迅速な救済に努めてまいります。

※平成18(2006)年3月27日より救済給付等の支給を開始し、本年で20年を迎えます。

■療養手当の額の改定

○療養手当は、石綿を吸入することにより指定疾病にかかった旨の認定を受けた方(以下「被認定者」という。)に対し、治療に伴う医療費以外の費用に着目して、月を単位として定額支給されるものです。
○療養手当の額は、入通院に伴う諸経費(交通費、生活品等のための諸経費)という要素に加え、介護手当的な要素(付添や介助用具に必要な費用)が含まれています。
○令和8年4月以降の月分の支給額について、下記のとおり改定します。
(現行)/(改定後)/(増額幅)
療養手当
10万3,870円/月 11万4,950円/月 1万1,080円/月

■葬祭料及び特別葬祭料の額の改定

○葬祭料は、被認定者が指定疾病に起因して亡くなられたときに、葬祭を行う方に対し、支給されるものです。
○特別葬祭料は、石綿を吸入することにより指定疾病にかかり、認定の申請をしないで指定疾病に起因して亡くなられた方等のご遺族に対し、支給されるものです。
○葬祭料の額は、葬祭を行うために必要な経費の実態料金の額を勘案して設定されており、特別葬祭料の額についても、葬祭料と同一額とされています。
○令和8年4月1日以降の死亡に係る葬祭料及び特別葬祭料の額について、下記のとおり改定します。
(現行)/(改定後)/(増額幅)
葬祭料
19万9,000円 / 22万2,000円 / 2万3,000円
特別葬祭料
19万9,000円 / 22万2,000円 / 2万3,000円

安全センター情報2026年5月号