「超硬合金肺」被害で 大阪府下の超硬合金工具製造会社に損害賠償求め提訴

超硬合金を使用した切削工具製造工場で超硬合金粉じんばく露

大阪府在住の42歳の男性Hさんは、N社(大阪府)に2000年に入社。アルバイト期間を経て、正社員として超硬合金や焼結ダイヤモンド(PCD)を使用したドリル等切削工具の研削加工作業に従事してきた。
ところが、2011年5月、じん肺管理区分「管理4」<著しい呼吸機能障害により要療養>とのじん肺管理区分決定を受けるほどに呼吸機能が悪化し、同6月以降、労災休業を余儀なくされた。

Hさんの病気は、いわゆる「超硬合金肺」。
超硬合金肺については例えば、

超硬合金肺:タングステン、コバルト、ニッケル等を含む超硬合金の粉じんを吸入することにより発症する肺病変で、超硬合金製造工場、超硬合金工具の切削研磨作業所、ダイヤモンド工具作製作業所などで発生する。肺の病理組織像は巨細胞性間質性肺炎(GIP)が特徴と言われているが、これまでGIP所見の乏しい症例も報告されている。われわれが経験した症例もGIP所見の程度は弱かった。本疾患の発病機序はまだ不明で、慢性過敏性肺炎のようなアレルギー機序も考えられている

労働者健康福祉機構サイト http://www.research12.jp/22_jinpai/04.html

と説明されている。
原因は、なすべき粉じん発生防止対策、ばく露防止対策を怠ったN社にあることは明らかであるので、Hさんは同社に労災補償の上積み補償を行うように要求した。

ところが、N社は責任をまったく認めなかったため、やむを得ず2013年5月、Hさんは8,800万円の損害賠償を求めて大阪地裁に提訴した(代理人は位田浩弁護士)。
これに対してN社は「粉じんは発生していなかった」「超硬合金成分が含まれたミストは粉じんではない」「これまでこのような肺疾患は発生していない」などと全面的に争う姿勢を示している。

1981年にすでに労災認定基準

ちなみに、超硬合金による肺疾患については、いわゆる「職業病リスト」(労働基準法施行規則別表第1の2)の「10 前各号に掲げるもののほか、厚生労働大臣の指定する疾病」の3疾病のうちのひとつとして、次のように掲載されている。

  1. 超硬合金の粉じんを飛散する場所における業務による気管支肺疾患
  2. 亜鉛黄又は黄鉛を製造する工程における業務による肺がん
  3. ジアニシジンにさらされる業務による尿路系腫瘍

そしてこの、「1 超硬合金の粉じんを飛散する場所における業務による気管支肺疾患」については、労災認定基準が次のように通達で示されている。

○超硬合金の粉じんを飛散する場所における業務による気管支肺疾患(昭和56年2月2日付け労働省告示第7号第1号)

(要旨)

超硬合金の粉じんにさらされる環境下において業務に従事することにより発生する気管支肺疾患を業務上の疾病として定めたものである。

(解説)

(1)「超硬合金」とは、炭化タングステン等とコバルトを混合し、焼結して得られる合金をいい、切削工具の刃先、ダイス等に使用される。
(2)「超硬合金の粉じん」とは、超硬合金を製造する工程において発生する粉じんで、その成分は炭火タングステン等の金属炭化物(炭化タングステンの他に、その用途により、炭化チタン、炭化タンタル等が添加されることがある。)とコバルトとが混合したものである。なお、超硬合金を研磨する工程において発生する粉じんも、同成分である限り、これに該当する。
(3)「飛散する場所における業務」としては、炭化タングステン等の金属炭化物とコバルトを混合する業務、超硬合金組成粒を加圧し半焼結したものを成型加工する業務、焼結後の超硬合金を研磨する業務等がある。
なお、超硬合金工具等を用いて金属等の切削、加工等を行う業務では、超硬合金の粉じんが飛散するおそれはまずないものと考えられる。
(4)「気管支肺疾患」には、次の2つの型が認められている。
イ 間質性肺疾患
初期の段階での特徴は、咳、労作時の呼吸困難及び心悸亢進で、進行した症例では肺基底部にラ音(注1)が聴取され、又バチ指(注2)が見られる。この進行した段階では、間質性肺線維症へと進展することがあり、胸部エックス線像及び肺機能検査からは、「じん肺」に似た臨床像が見られる。
ロ 外因性の喘息様気管支炎
感作型(主にアレルギー性)の喘鳴を伴う咳の発作が偶発的に発生するもので、作業から離脱すると軽快し、作業に復帰すると再発する。
(注1)ラ音:気管、気管支、肺胞又は肺空洞内に分泌物や血液等が停滞し、空気と混じって気泡を作りあるいは潰れるとき等に発する音で、吸気時に聴こえることが多い。
(注2)バチ指:心臓疾患、胸部臓器疾患等においてみられる手指末端の肥大

したがって、N社でHさんが行ったような作業で発生する超硬合金粉じんが、きわめて有害なものであることは、どんなに遅くとも、通達が出された1981年には、誰にとっても、明白だったといえる。つまり、N社の「言い分」は寝言と言ってもいいのではないだろうか。
Hさんは当初関西労働者安全センターに相談してこられた。そして、どうも同様の被害がほかでも発生している状況のようなのだ。
これまであまり注目されてこなかった職業性疾患である超硬合金肺被害の責任を問うHさんの裁判は、わが国でも初めてとみられる。安全センターとして、今後とも積極的に支援していくことにしている。

問合せは、関西労働者安全センターまで

安全センター情報2014年4月号

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