【特集 アジア・ネットワーク】ケーダー火災惨事30周年「OESHは人権」テーマに~ANROEV20234年ぶりに顔を合わせた集まり
労災・公害被害者の権利のためのアジア・ネットワーク(ANROEV)の会議が2023年5月8-10日、「安全な労働と健康的な環境は人権」をテーマに、4年ぶりに顔を合わせてタイ・バンコクで開催され、20か国以上から130名を超える参加があった。
目次
被害者の証言
フィリピンのMs. Mary Ann Castilloからは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に罹患し、職業病として補償を受けた経験が語られた。
インド・アンドラプラデシュ州ヴィシャーカパトナム(バイザッグ)で2020年5月7日未明に発生した韓国企業LGバイザッグ・ガス漏えい事故(2020年7月号等参照)の被害者でもあるDr. Srinivasanは、補償に不誠実な企業の責任を追及する被害者の集団訴訟がはじまろうとしていると報告した。
地元タイからは労働環境関連患者ネットワーク(WEPT)のメンバーである綿肺患者のMs. Juthamas Chaibamrungraksaの裁判闘争の体験。
韓国からは現役高校生の加湿器殺菌剤被害者Kim Donghooが、いまも気管支拡張剤を必要としている喘息との18年の人生を語り、「被害者という言葉は獲得しなければならないものだ」と結んだ。
インド・グジャラート州のセラミック工場で働き珪肺に罹患したMukesh Mahaliyaは、労災補償制度があっても機能していない状況の変革を訴えた。
スリランカの農場で農薬による腎臓病になったMr. Mashala Koralalage Jayatissaは、地域診療所を設立して調べた結果、地域住民の80%が同様の疾病に罹患していることがわかったと報告。
インド・ラジャスタン州ジョードプルの砂岩採掘で珪肺に罹患したMr. Achala Ramsは、自らの経験を労働者に伝え、集じん機を普及している被害者団体の活動も紹介した。
キーノートスピーチ
ソウル国立大学名誉教授のDr. Paek Domyungは、 「パワー・インバランス下における社会的ディス-スタンス(オフ-スタンド)」と題した講演。
COVID-19パンデミック下で社会的ディスタンスを保って自らを守りながら、社会を動かし続けることが唱えられた。一方、パワー・ディスタンスと言えば、力のある人とない人との間に存在し、しばしば受け入れられていると想定される不平等の程度を指している。感染予防のためのオフ・スタンディングの基礎が、力の分布の変化なしに、既存のパワー・ディスタンスによって覆されることが観察された。
第1の教訓は、現在の諸問題が新しいものではなく、古くから広まっている諸問題が顕在化したにすぎないこと。すなわち、安全衛生問題は、既存の社会的不平等、階層、古い規範や頑固な文化を背景にした、社会的・経済的な偽装である。そして、エッセンシャルワークは、既存の社会権力から見れば、エッセンシャルに値するとされない労働者によってなされている。
第2の教訓は、理論的には、あるべき状態とシステムがわれわれの変革の目標であるべきだということ。なぜなら、それらは権力をもつ人々によって、解決のための保護のオフ・スタンディングとして提唱されたものだからである。エッセンシャルワークの保護を実現するためには、社会的保護、真のもの、病気休暇のための社会保険、感染に対する認識と補償、失業に対する社会的ネットワークが必要である。
システムは、法令や言葉によるものではなく、価値観や文化的バイアスの実践によるもので、フィードバックシステムによってのみ制約されるべきである。安全衛生保護のために、十分に保護されていない労働者の権利に裏打ちされた声によってシステムの優先順位も変えなければならない。
元チェンマイ大学教授でWEPTアドバイザーのDr. Voravidh Charoenloetは、「タイにおける労働権運動とケーダー火災」と題して、話した。
188人の死者と469人の負傷者を出した1993年5月10日のケーダー玩具工場火災から30年、当時5頭目のアジアの虎と称されて利益のみを追求していたタイ社会は、それが多国籍企業の投資における安い労働力の利用に支えられていたことを直視させられることになった。被災者と労働組合、市民団体、専門家らによる委員会が設立され、結果的に、企業から被害者には20万バーツの補償と被害者の子供たちには奨学金が支払われた。
成果としては、①政府が5月10日を国の安全の日と指定したこと、②被害者のネットワークの設立、③職場に労使による労働安全衛生委員会の設置を実現したこと。
また、課題として、①政府の労働安全衛生担当者の知識の不足、②正規雇用から非正規雇用への変化のなかで「半」労働者に社会保障を確保する改革の必要性、③ジェンダー問題への一層の対応、などがあげられた。
この後、以下のゲストスピーカーが発言した。
- ILO本部(ジュネーブ)LABADMIN/OSHのMr. Joaquim Pintado Nunesi(オンライン)
- ソリダリティセンター(アメリカ)事務局長のMs. Shawna Bader-Blau
- ソリダリティセンター(アメリカ)アジア担当上級アドバイザーのMr. Sanjiv Pandita
- ハーバード公衆衛生大学院環境保健学部のDr. Thomas Gassert
- WEPTのMs. Somboon Srikhamdokkhae
韓国大使館前行動
5月7日が、事故直後に12人とその後数週間のうちにさらに3人の死をもたらし、千人以上が入院することになったLGバイザッグ・ガス漏えい事故3周年にあたることから、昼休みに参加者は韓国大使館前にバスで移動して、行動を行った(安全センター情報9月号表紙写真)。
LGポリマーズ・ガス被害者協会の名で大使館に手渡された書簡は、被害者らが、①被害者遺族と負傷者への迅速な経済的補償・支援-すべての被害者と曝露した住民への長期的健康支援、②ガス漏えい原因の徹底的かつ公正な調査、③調査への市民団体及び被害者の代表の参加の保障、④LG化学及びガス漏えい責任者の責任追及、⑤規制及び職場安全衛生システムの強化を要求していることを明らかにしたうえで、韓国政府、韓国議会とLG化学に対する以下の質問を列挙。
①韓国でこのような災害が起きたらどうするのか?②被害者に謝罪も補償も一切しないのだろうか?③韓国の警察や検察は責任者に対して何もしないのだろうか?④韓国の国会議員はこのような問題が二度と起きないように法整備をしないのだろうか?そして、LG化学のCEOがヴィシャーカパトナム(バイザッグ)に来てすべての被害者に謝罪するよう求める。韓国大使館に対して、これらのメッセージを韓国政府とLG化学に届けるよう求めた。
課題別ワークショップ
① ANROEV参加へのジェンダー・ビジョンの組み込み
アジア・モニター・リソースセンター(AMRC)のMs. Thuhaをモデレーターに、女性労働者の組織化、制度化されたジェンダーワーク、ジェンダー・メインストリーミングにおいて直面するニーズや課題を共有し、団体や個人が日常活動やネットワークで採用できる可能性のあるアプローチを探る場をつくることを目的にした。
ANROEV2023及び前日に開催されたABAN2023の参加者、スピーカー、モデレーターの男女構成の分析結果とコメントが報告された後、①ANROEVにおけるジェンダーバランスのとれた参加に対する障害、②確認された障害に打ち克つための戦略についてのグループ・ブレーンストーミング及び全体討論が行われた。
② 大気汚染と職業性肺疾患/珪肺
Mr. Jagdish Patel(民衆訓練研究センター(PTRC)・インド)をモデレーターに、Dr. Ashish Mittal(インド)からGBD(世界疾病負荷)推計や事前に実施したメンバー組織に対する調査の結果が紹介され、さらに参加者からパキスタン、インド(ラジャスターン州)、マレーシアの状況が補足された。また、韓国から、じん肺の健康診断と補償の進展経過が紹介された。Dr. Thomas Gassert(アメリカ)「新しい診断技術に何が来るのか」、Mr. Jagdish Patel(インド)「インドにおける珪肺」の報告。キャパシティビルディングの必要性に関連して、肺疾患診断におけるAI活用の現状と将来についても議論になった。
③ 環境安全衛生(ESH)/戦略
Mr. Ram Charitra Sah(公衆衛生環境開発センター(CEPHED)・ネパール)をモデレーターに、Ms. Penchom Saetang(エコロジカル・アラート・アンド・リカバリー・タイ(EARTH)・タイ)「環境保全調査研究とアドボカシーキャンペーン」、Mr. Guak Chang Rok(韓国)「セメント工場による住民の健康障害の事例(江原特別自治道三陟市)」、Mr. Son Soo Yeon(韓国)「加湿器殺菌剤家族被害事例」、Dr. Srinivas/Mr. Kiran Kumar Choda-varapu(LGポリマーズ・ガス被害者協会・インド)「LGガス被害者の証言」、Ms. Chalani Roxnurghai(環境正義センター(CEJ)・スリランカ)「農民の農薬使用状況」の報告が行われた。
④ 気候行動:OEHSに対する影響と労働者のための公正な移行
Mr. Repon Chaudhary(労働安全衛生環境財団(OSHEF)・バングラデシュ)をモデレーターに、Mr. Joy Fleenandez(ITUCアジア太平洋上級コミュニケーション・アドボカシー担当)、Mr. Sharon KC(APHEDA・オ-ストラリア)「公正なエネルギー移行とアジアにおけるAPHEDAの経験」、Dr. Christy Adeola Braham(インフォーマル雇用の女性:グローバル化と組織化(WIEGO)・イギリス)「気候危機と健康:インフォーマル労働者の立場から」、Dr. SM Moshed(OSHEF・バングラデシュ)「気候変動:バングラデシュにおける労働環境安全衛生と労働者のための公正な移行」の報告が行われた。
⑤ 被害者の組織化
Mr. Ram Charitra Sah(CEPHED・ネパール)をモデレーターに、Mr. Janak Chaudhary(労働組合総連盟(GEFONT)・ネパール)「ネパールと海外における被害者の組織化」、Mr. Rana Sen Gupta(鉱山労働者保護キャンペーン(MLPC・インド)の報告が行われ、また、バングラデシュにおける紡織工場火災事故:ラナプラザ及びタズリーン火災事故のビデオが紹介された。
⑥ エレクトロニクス
Ms. Omana George(Electronics Watch)をモデレーターに、Ted Smith(責任ある技術のための国際キャンペーン(ICRT)・アメリカ)、Mr. Fahmi Panimbang(ソリダー・スイス)「インドネシア・バタムのエレクトロニクス製造施設における化学物質曝露の生物学的モニタリング」の報告が行われた。
⑦ 過労及び過労死に対するCOVID-19の影響
Ms. Michelle Jang(韓国労働安全衛生研究所(KILSH)・韓国)をモデレーターに、Ms. Yu Cheong
Hee(KILSH・韓国)とMr. Na Seom Beon(全国デリバリー労働組合・韓国)「韓国における過労及び過労死に対するCOVID-19の影響」、Ms. Huang Yi Ling(台湾OSHリンク・台湾)「台湾における過労及び過労死に対するCOVID-19の影響」、Mr. Iwahashi Makoto(POSSE・日本)「日本における過労及び過労死に対するCOVID-19の影響」の報告が行われ、また、LIPS(インドネシア)製作のインドネシアにおけるプラットフォーム食品配達労働者のビデオが紹介された。
⑧ アクシデント
Mr. Jagdish Patel(PTRC・インド)をモデレーターに、Ms. Nina(AMRC)「OSHマッピング」、Ms. Eukii Oshyii(ILO)「労働における基本的権利としてのOSH」、Mr. Ram Charitra Sah(CEPHED・ネパール)「アクシデントに対するANROEVの対応」の報告が行われた。
アジア以外の参加者から
アメリカ労働省(DOL)のMr. Robert Wayssは、M-パワー・イニシアティブについて紹介した。M-パワーは、労働者の組織化、エンパワーメントと権利のための、各国政府や各国及び国際的な労働組織、労働者支援団体、市民団体、慈善団体のマルチラテラル(M)なパートナーシップで、民主的労働組合の能力強化を主な目的としているが、電子産業における労働安全衛生、繊維・衣料産業におけるジェンダーに基づく暴力・ハラスメント等にも取り組んでおり、労働環境安全衛生の取り組みに活用できる可能性があると話した。
国際労働衛生委員会(ICOH)の前会長のDr. Jukka Takalaは「労働安全衛生-新しい労働における基本的権利」と題して報告。2017年と比較した最新(2021年)の世界の労災職業病の推計結果を紹介しながら、ILOの新たな決定のもとで、①普遍的な労働安全衛生適用目標の設定、②すべての関係者は危害ゼロを視野に入れて自らの労働安全衛生戦略・計画を設定すべきである、③将来の重大な問題を予測し、予防し、備えるべきである、④ILO基準に基づいた規制枠組みと執行システム、労使が職場で協力し合えるメカニズムが重要と指摘した。
決議・ステートメント
今回初めて会議前にユース・コーカス(青年部?)の会議が行われ、そのステートメントが報告された(8頁参照)。また、ANROEV会議の決議とプレスリリースが検討・採択され(6頁参照)、タイ労働連帯委員会(TLSC)のMr. Sawit Kaewwanによる閉会のあいさつでANROEV会議の2日間の公式日程は終了した。
この後、メンバー組織の代表による会議で規約等が検討された。その後の議論を経て確認されたものを稿末に紹介した。。
2日目の夜はソリダリティ・ディナーと銘打って、タイのメンバーによる労働運動の歌やケーダー火災被害者に連帯する活動のなかで生まれた歌などが披露された。
ケーダー火災30周年
3日目の5月10日は、ケーダー惨事30周年の当日であり、朝から記念行事が行われた。
まず、タイ・レイバー・ミュージアム(TLM:労働博物館)前に集合して、仏教スタイルで追悼セレモニーが行われた。
その後、近くのホテルに会場を移してパブリックセミナー。AMRC、ANROEV、WEPT、TLSC、TLMによって作成されたビデオ「ケーダー惨事の30年」が初上映された。現在、https://www.youtube.com/watch?v=MS9gcoecjTA で視聴することができ、その内容を12頁に日本語に翻訳して紹介した。そして、ビデオに登場し、筆者を含めて古くからのANROEV参加者には顔なじみで、多くは懐かしい再会でもあった関係者によるパネルディスカッションによって「ケーダー惨事の30年から学ぶ教訓」についてさらに深めることができた。
この日の行動はタイの参加者中心で海外参加者は代表参加となった。
(全国安全センター事務局長・古谷杉郎)
ANROEV2023会議決議
私たち、ANROEV会議の参加者は、1993年にタイと中国で発生したケーダー(開達)火災とジリ(致麗)火災惨事の30周年を記念する。この2つの玩具工場火災では230人以上の労働者が死亡したが、そのほとんどが施錠された扉から逃げられなかっら若い女性だった。こうした「サプライチェーン」による殺人は、10年前のラナ・プラザ惨事[バングラデシュ]に象徴されるように、いまだ止むことがない。私たちはまた、このような悲惨な事故が全体像を反映しているわけではなく、はるかに多くの労働者や地域社会の人々が職業病や環境曝露によって命を落としていることを確認する。私たちはまた、この会議が、私たちのメンバーだけでなく、多くのフロントライン労働者の命を奪ったCOVIDを背景に開催されていることも認識している。COVID危機は、脆弱な立場にある人々のための予防(ワクチン)と救済(治療と補償)へのアクセスと同様に、安全衛生の現実を反映しているにすぎない。私たちはまた、ジェンダーに基づく暴力やハラスメントが懸念される大きな問題であることも認識している。気候変動が、不安定な人々をさらなる危険にさらす既存の脆弱性に拍車をかけている。
こうしたことから、私たちは各国政府に対して、以下のことを強く求める。
- アジアでは、毎年100万人以上の労働者や地域住民が亡くなり、さらに数百万人が病気やケガで苦しんでいるという、問題の大きさを認めること。
- 労働安全衛生(OSH)を優先的な政策課題とすることにより、迅速かつ断固とした、誠実な行動をとること。これには、各国における労働災害、死亡及び疾病の全事例の報告義務が含まれるべきである。ILO第155号条約をこの地域のすべての政府が可及的速やかに批准し、条約に適合するように国内法を改正すべきである。
- ILOの職業病リストを考慮して、各国政府は、労働者の経験と科学的知見に基づき職業病リストと許容濃度を列挙、改善及び拡張すべきである。
- 法的地位に関係なくすべての労働者、とりわけ非登録、非正規及び移住労働者を保護するための法律の制定と執行を積極的に推進するとともに、労働者を保護する既存の法律や協定を弱めようとする試みに抵抗すること。
- 労働者とその組織が職場におけるよりよい安全衛生の実施において重要な役割を担っていることを認識すること。組織化され、組合のある職場は安全な職場であり、結社の自由は職場において完全に保護されている。
- 負傷や疾病を負った労働者・地域社会のメンバーが、合理的な時間内に迅速かつ即時の治療、正当な補償、リハビリテーションを受けられるようにすること。被害者が不当な遅延によってさらに罰せられることのないよう、プロセス全体を簡素化すべきである。環境曝露から地域社会を守るための法律を制定するとともに、曝露した場合に適切な救済措置が講じられるべきである。治療、補償、リハビリテーションのために十分な予算が確保されるべきである。
- 訓練を受け、独立し、透明性があり、説明責任を果たす十分な診断クリニックと専門家を提供することによって、職業性・環境性の疾病の適切な治療を確保すること。
- 国は、職業病を届け出、適切に照合、データを公表することを実際にするとともに、義務化すべきである。
- 社会的排除や社会における不平等な地位のために、職場や地域社会で危険にさらされやすい人々がいることを認識すること。プラットフォーム労働者、在宅労働者、非登録・非正規労働者、移住労働者、女性、有色人種やマイノリティを含むこれらの労働者を保護し、その尊厳を守るために特別な注意を払うべきである。衛生、農業及び関連職種を優先的に保護する特別な必要がある。
- あらゆる国の労働者と市民の声明と健康を脅かす有毒物質や環境による死亡、傷害及び曝露につながる犯罪的過失について、企業、ブランド及び個々の役員の責任を問う法的枠組みを確立すること。企業はまた、子会社や下請け業者、サプライチェーンの行為についても責任を負うべきである。
- 労働環境安全衛生(OESH)政策に関連する意思決定と法執行のプロセスに、被害者とその組織が含められるようにすること。
- 気候変動が現実のものであり、労働者、OESH、地域社会の深刻な影響を与えることを認め、公正な移行、適応性のある社会的保護、環境正義を実施することにより、労働者と地域い社会を保護するための効果的な措置を講じること。
私たちはまた、以下のことを行うことを確約する。 - アスベストの世界的禁止を重要な目標とし、ある国から別の国へのリスクの移転に抵抗するために、世界中の労働者・地域社会との連帯を発展させ、安全でない労働条件によって引き起こされた危害の責任をグローバル・サプライチェーンに負わせる努力をし、業界がサプライチェーン全体を浄化することを確保するための努力を継続する。
- 労働・環境安全衛生活動家の活発で民主的な世界的ネットワークを発展させ、そこで各国のユニークで多様な組織化イニシアティブを認識、尊重、支援する。
- 私たちの活動のすべての部門にジェンダー平等を盛り込み、全てのジェンダーが平等に代表され、彼らのリーダーシップによって彼らの問題が扱われるようにする。
- 私たちANROEVは、ILOの主要条約(C155、C161、C187、C174、C190、C170)の批准を各国政府に働きかける。
- ANROEVはまた、職業性肺疾患及びすべてのOSH関連条約が基本的権利として認識されるよう、効果的に活動していく。
ユース・コーカスのステートメント
COVIDの間、ILOはCOVID-19アウトブレイクの当初に警告を発し、世界的パンデミックは各国の経済に影響を与えた。様々な変化のなかで、労働市場の後退と労働パターンの変容が顕著な傾向である。政府は、教育訓練の中断、求職の困難、所得の喪失を余儀なくされるなど、パンデミックが若者のキャリア形成に与える影響に注意を払わなければならない。すべてのレベルが深刻な影響を受ける可能性があり、その結果「ロックダウン世代」という現象が生じる。また、最近発表された「2022年若者の世界雇用動向」では、世界各地域の比較から、とくに若い女性、そして若者全般が直面する雇用獲得の困難さが浮き彫りになっており、COVID-19危機の雇用への影響はとくに若者の間で壊滅的な打撃となっている。
パンデミックは労働市場、とくに女性や若者に影響を与えている。アウトブレイク後、オートメーションやロボットが普及し、個人の能力や条件が比較的脆弱な低技能・低賃金の低賃金の労働集団に取って代わろうとしている。私たちはまた、インドネシアやタイのような様々な国で、保護の欠如、雇用の不安定、労働組合その他の労働組織が労働者自身を守るために組織化するスペースの狭さといった、リスクをアウトソーシングする「柔軟な雇用」下での契約労働者の拡大も観察している。契約労働者は若年労働者に限らないが、この傾向のもとで、職場の新人が最大の犠牲者となっている。
インドネシアには「情熱インターンシップ」、韓国には「情熱ペイ」、中国には「学生インターン」など、将来によりよい就職機会を求める学生や若い労働者を巧みに利用して、企業や工場が「インターンシップ」の名のもとに若い労働者を搾取している。インドネシアでは、学生や若者に無給の仕事を奨励する「自由インターンシップ」さえある。しかし、この「自由」は若い労働者のためではなく、企業のためのものである。企業はいつでも簡単に代替要員を確保できるため、若い労働者は低賃金や無給の仕事に就くよう圧力をかけられている。大都市出身でない若い労働者は、例えば、様々なEコマース・プラットフォームでのインターン、スタートアップ企業や中小企業、プラットフォームで他の人がTiktokの経験を活かすのを見て、明確な労使関係のない仕事にひきつけられるかもしれず、政府や企業はそれを歓迎している。政府が守るべきは人々であって、投資や企業ではない。
今回のANROEV会議では、長時間労働、雇用不安、不安定労働といった職場の現実とも密接に関連する、過重労働と過労死の問題、大気汚染やEHS問題に取り組むANROEVのメンバーによって諸問題が共有された。
私たちユース・コーカスは、OEHSの活動において若年労働者が直面する独自の状況や課題に取り組むとともに、この機会にネットワークへの若者の参加を促し、様々なOESH問題、若者の参加、被害者の組織化と代表、ANROEVネットワークの構成に若者の洞察を発展させたいと思う。
例えば、インドネシアのグループがはじめたコミュニティプロジェクト「ユース・クリエイティビティ」は、若者がツールを使ってボトムアップで職場を理解できるよう支援するもので、若者が職場で才能を発揮できるようにしている。
労使関係が変化するなかで、若い労働者に彼らの権利を知らせるための資料を開発する必要がある。とくに最近では、若者に労働における権利を知らせ、また理解しやすい資料を作り、若者が関心をもつことについて話すための様々な関係者のコミュニケーションが不足している。教材は訓練モジュールだけに限定すべきではなく、若者のメッセージを伝えるのに役立つドキュメンテーションやソーシャルメディアなど、他のストーリーを共有する関心を引く方法も探求すべきである。
労災・公害被害者の権利のためのアジア・ネットワーク(ANROEV)規約
2023年5月9日タイ・バンコクにおけるANROEV会議で承認。
規約が作られたのは初めてのことであり、また、国際ネットワークへの移行の可能性も議論されている。
名称及び主要な事務所
名称
この組織は、労災・公害被害者の権利のためのアジア・ネットワーク(以下「ANROEV」)と言う。
登録及び事務所
(a) ANROEVは非営利団体であり、その法人格については、運営の柔軟性/容易性の原則に基づき、世界の適切な国で登録することができる。
(b) ANROEVは、執行委員会/運営委員会が随時決定するその他の場所に、(地域)事務所を置くことができる。
背景
労災・公害被害者の権利のためのアジア・ネットワーク(ANROEV)(旧称:労災被害者の権利のためのアジアネットワーク(ANROAV))は、アジア全域の被害者団体、労働組合、その他の労働団体の連合体であり、全員が被害者の権利と職場における安全衛生の全体的な改善に取り組んでいる。250人以上の労働者が死亡したケーダーとジリの産業災害を契機に、アジアの労働者団体と被害者団体は、労働者と被害者の安全衛生の権利向上に向けたキャンペーンを展開した。ANROAVは1997年に正式に設立された。ANROAVからANROEVへの転換は、環境悪化とそれが労働の世界に及ぼす影響に対応するためである。
なぜANROEVか?
ANROEVはユニークな連帯グループであり、安全かつディーセントな職場の実現に向けて活動する。地域でOSHが著しく軽視されているため、統一戦線を張る必要性が不可欠であった。ANROEVは、アジア各国の労働安全衛生権利闘争をひとつの統一闘争に統合し、全地域の労働者の安全衛生改善を要求する。
ANROEVはまた、会員に次のようなプラットフォームを提供する。
- 他の会員と経験や専門知識を共有する。
- リソースを共有する。
- 共同キャンペーンを実施する。
- アジアやその他の地域で強力な連帯グループを形成する。
- アジアにおける労働者と被害者のOSHの権利を要求する。
- アジアにおけるOSH及びEOSH運動を強化する。
機能
- アジアにおける被害者の組織化を強化し、被害者グループが存在しない国における被害者グルー プの結成を促進する。
- OSHを労働者の基本的権利として促進し、職場、国、地域、国際レベルでOSHが中核的課題として認識されるよう取り組む。
- 環境保護、化学物質安全、持続可能な廃棄物管理、EOSH、公正な移行、労働者のための気候正義の問題を、職場、国、地域、国際レベルの中核的課題のひとつとして闘う。
- 労働者、労働組合、労働NGO、その他の労働団体及び活動家(被害者団体を含む)がOSHに関する知識を深め、OSH関連問題に効果的に対処する能力を構築するのを支援する。
- 問題の理解、(安価な生産や有害産業のアジアへの移転に関連した)傾向の特定、労働者の災害や病気と労働との関連、意思決定の基礎となるOSH問題への強力な労働者参加の確立に役立つOSHに関する参加型調査を実施する。
- OSHに関連するあらゆる意思決定への労働者、労働組合、被害者団体の積極的な参加を促進し、それを可能にする環境や民主的制度(安全委員会など)の創設に向けて取り組む。
- 地域の労働団体間で、OSHのための教育や資源利用のための交流を促進する。
- ほとんどのOSHプログラムが事故防止を対象としているために軽視されている労働衛生全般を重視する。
- 様々な場所でOSHに取り組む組織のネットワークを強化し、連帯と知識・資源の共有を向上させる。
- OSHに関する専門的な概念や専門用語の多い情報、労働者のための交渉戦略などを、簡単な現地の言葉でわかりやすく説明することを目的とした、読みやすい出版物を作成する。
- あらゆるレベルで、より良い OSH法・政策及びその効果的な実施を提唱する。
- すべての国の医療・法律専門家のデータベースを作成し、労働者・労働団体が利用できるようにする。
- 地域の共通課題について共同キャンペーンを実施し、連帯を深める。
- 労働者や地域社会の健康に関与するすべての団体と協力すること。
- 職場における「企業の無責任」に反対するキャンペーンを展開し、環境保護団体と協力して、労働者や周辺地域社会を脅かす危険な職場に反対するキャンペーンを展開する。
- 国際的なパートナーを開拓し、EOSHの問題に関して地域、地域、国際的な様々な行動と協力する。
会員ガイドライン
・ アジア地域の組織であること。
・ ANROEVの目的及び原則を理解すること。
・ ANROEVの活動に参加すること。
・ 労働組合、被害者団体、労働NGO、CSO、MBOなどのOSH問題に取り組む団体、及びOSH権利やEOSH問題に取り組む個人であること。
・ アジア地域以外の団体/グループも準会員として申請可能である。
ネットワーク会員になるための手続
- ANROEV中央事務局に申請書を送付する。
- 既存会員からの推薦またはアドバイザリーボードからの推薦を受ける。
- 中央事務局及び地域事務局は、申請について各国のネットワーク会員と協議する。
会員の権利
- ANROEVのプログラムに参加する。
- ANROEVの中央運営委員会において会員を指名及び選出する。
- 活動的でなく、ANROEVの原則と目的に違反する地域諮問委員を罷免する。
- ANROEVの2年計画の作成に参加し、その方向性、方針、プログラムを描く。
- 説明責任を果たし、ネットワークの原則と目的に合致していることを確保するために、ANROEVのプログラムを評価する。
- ANROEVのプログラムや活動に関する地域諮問委員会の主要な決定について、常に知らされる。
- 会員は、ANROEV の資源や援助を優先的に利用できる。資源を効果的に配分するため、ANROEVの資源に関する最新情報を定期的に会員に提供される。
- ANROEVの年次報告書、年間業務計画書、出版物を受け取る。
- 必要な資源を生み出す手助けをする。
- 能力を開発する。
会員の役割及び責任
- ANROEVのプログラムと活動を支援する。
- 各国でのプログラム開催にANROEVを支援する。
- 各国のOSH及びEOSHの状況、動向、報告書など必要な情報をANROEVに提供する。
- 必要なリソースや専門知識を他のメンバーと共有する。
- ANROEVの共同キャンペーンに参加する。
- ネ ットワーク活動に具体的な責任を持つ。
会費
- 提案される会費は、団体が年間100米ドル、個人が50米ドルである。
- 会費を支払えない被害者団体、地域団体、草の根会員制組織(MBO)は免除される。
- 準会員/個人会員は年会費50USドルを徴収される。
運営体制
総会
会員資格、参加及び投票権
a. ANROEVの会員は、ANROEVに入会して12か月が経過し、総会入会申請書に必要事項を記入し、 ANROEVコーディネーターに提出し、ANROEV運営委員会が審査・承認した後、ANROEV総会の会員になることを申請することができる。
b. ANROEV総会の会員資格は、組織(個人ではない)に与えられる。
c. ANROEV総会の会員は全員、総会の決定に参加し、投票することができる。ANROEV総会に参加する各団体会員の投票権は1票とする。団体を代表して投票する者は、総会会員申請書に明記する。
d. ANROEV会員は、ANROEV総会の会員資格の要件として、いかなる料金や会費も要求されない。
e. ANROEV会員の議決権や総会会員資格に関する紛争は、執行委員会が解決するものとする。
f. ANROEVコーディネーターは、共同議長(OSH及びEHS)に支援される議長のガイダンスのもとで、地域及び男女のバランスを取りながら、議長、共同議長、執行委員を任命し、執行委員会の承 認を得て、少なくとも2年間ANROEV関連の活動に参加していない組織、またはコーディネーターからの公式な問い合わせに3か月以内に回答しない組織を、総会会員リストから削除するよう随時勧告し、さらなる措置のために共同議長に勧告することができる。
会議
a. ANROEV総会会員は、総会として定期的に会合を開く。総会はコーディネーターが招集し、少なくとも2年に1回物理的に、また年1回バーチャルに開催する。必要な追加会議は(必要であれば)インターネットを通じて「バーチャル」に開催されるものとする。
b. 総会については、コーディネーターは総会開始の2日前までに、ANROEVメーリングリストを通じて総会会員に通知する。通知には総会の目的案を含める。
c. 総会は、投票権を有する総会会員の5分の1以上の要請があれば、それ以外の時期に開催することができる。
任務及び機能
総会は以下のことを行う。
- 公式のANROEV文書として、綱領、宣言、その他のポジションペーパーを採択する。
- ANROEV執行委員会のメンバーを選出する。
- ANROEV細則及びその変更を承認する。
- 執行委員会の勧告に基づき、ANROEVの監査済み会計決算を承認する。
- ANROEV会員の除名に関する執行委員会の勧告を承認する。
- 執行委員会の決定に対する不服申し立てを決定する。
- 総会は、ANROEV執行委員会またはその他のANROEVの機関に対し、あらゆる事項を勧告することができる。
意思決定
a. 総会会員の33%を定足数とする。
b. 総会は、出席した全ANROEV会員の合意により議事を決定するため、あらゆる合理的な努力を払う。しかし、あらゆる努力を尽くしてもコンセンサスが得られない場合は、共同議長(OHS及びEHS)に支援されたANROEV議長が、当該問題を総会の投票権を持つ会員による単純多数決に付すよう動議することができる。すべての決定は、コンセンサスであれ投票であれ、総会によって採択される。
c. 合意が得られない場合、総会の投票権を持つ全会員が投票に参加する機会を最大化するため、投票は、実行可能な限り速やかに、選挙管理委員会によって電子的に行われるものとする。電子投票は、投票開始後7日間以上継続するものとする。
d. 合意が得られない場合、(i)選挙、(ii)ANROEVの財務会計の承認、(iii)ANROEVの解散を含む本規約の修正に関する事項は、投票権を有する総会メンバーの4分の3以上の賛成により決定される。総会において投票に付されたその他の事項は、投票権を有する総会会員の単純多数決によって決定される。
e. 総会の決定は、コーディネーターが文書化し、少なくとも一人の共同議長が確認し、ANROEVの一般メーリングリストを通じて公表する。
執行委員会(附属書1:ANROEV執行委員会)
任務及び機能
a. ANROEV執行委員会は、ANROEVの執行機関として、ANROEVの財務及び法務に責任を負い、本規約に明記された、あるいは総会が要請したその他の職務に責任を負う。
b. 執行委員会は以下のことを行う。
- 年間運営予算を承認し、本規約によりANROEVの資金を管理・会計する。
- 総会への年次監査報告書の提出を含め、適用される法律に従ってANROEVの独立監査が行われるようにする。
- 総会に年次活動報告書を提出する。
- ANROEV中央事務局及び地域事務局の管理運営を監督し、その業績を評価し、事務局スタッフの職位の設置または廃止を承認する。
- 必要に応じて、ANROEV執行委員会メンバー及び執行委員会が責任を委任した ANROEV財務スポンサーと協議の上、コーディネーターを選出・雇用・評価し、必要に応じて懲戒・解任する。
- ANROEVの資金調達を支援する。
- ANROEV会員の総会における議決権に関連する紛争を解決する。
- ANROEVの内部方針を承認すること。
- その他、ANROEVが法人格を取得した司法管轄地の適用される法律に基づき必要とされる権限を行使する。
- 執行委員会における役員選挙を実施するための選挙管理委員会の設置手順を定める。
執行委員会の構成
構成及び任期
執行委員会は、地域及び男女のバランスを考慮し、総会によって選出される。役職はコンセンサスベースで果たされる。
役職
議長:1名
共同議長:2名
執行委員:8名
執行委員会の任期は2年とし、2期までとする。
事務局及び会計
a. 執行委員会は選挙後最初の会合で、事務局・会計を委員の中から選出する。
選出された事務局・会計は、執行委員会の方針指導の下、ANROEVに奉仕する。
地域事務局は、ANROEVの地域コーディネーター(総会で地域レベルの会員組織から選出)が代表する。
運営体制
中央事務局
ANROEVは、アジアを拠点とする中央事務局を維持し、ネットワーク活動とプログラムの組織的・管理的中心としての役割を果たすものとする。中央事務局は、国際レベルの代表、地域及び世界レベルのプログラム活動の実施などに責任を持つ。
地域事務局
より良いアウトリーチ活動や現地レベルでの調整を行うため、優先事項や実際的なニーズに基づいて、異なる大陸に地域レベルの事務局を設置する(例:南アジア/東南アジア/東アジアの地域事務局など)。地域のひとつの会員組織が、地域事務局として、地域の会員の調整、支援、指導に責任を持ち、地域レベルの様々な行動を実施する。地域事務局の選出は総会で行う。
コーディネーター
執行委員会は、標準的な採用手順に従い、中央レベルでANROEVの政策決定、資源動員、ドナー支援プロジェクト/プログラムの実施、中央事務局及び地域事務局間の活動やキャンペーン問題の調整を行う専任のフルタイムのコーディネーター(IC)を採用する。
執行委員会は、必要と資源の利用可能性に応じて、組織のためにその他の技術スタッフを採用することができる。
財務指針及び監査
執行委員会は、財務管理方針を策定・採択し、組織の銀行口座を維持するものとする。
執行委員会は、会計監査を行う独立監査人の選定を承認する。
監査は執行委員会に報告する。
活動年度と会計年度
ANROVの活動年度及び会計年度は暦年とする。
規約の改正
本規約は、執行委員会の決議によって承認され、投票権を有する総会会員の4分の3以上の多数によって正式に可決された総会の決議によって確認されるまでは、取り消し、修正または改正することができず、いかなる新しい規約も作成することはできない。
附属書1:ANROEV執行委員会
- 議長:Dr. Domyung Paek(韓国)
- 共同議長(EHS):Dr. Shreedhar Ramamurthi(インド)
- 共同議長(OHS):Mr. Repon Chowdhury(バングラデシュ)
- 執行委員:Mr. Jagdish Patel(インド)/Mr. Khalid Mahmood(パキスタン)/Ms. Chalani Rubesinghe(スリランカ)/Ms. Theppalin(カンボジア)/Ms. Sonia Buftheim(インドネシア)/Ms. Mabel Au(香港)/Dr. Choil Ye Yong(韓国)/Mr. Sugio Furuya(日本)
- 前コーディネーター:Mr. Ram Charitra Sah(ネパール)
- 新コーディネーター:Ms. Nadia De Leon(フィリピン)