鉄粉・化学物質がこびり着いた作業服を預けてください 2023年10月04日 韓国の労災・安全衛生

チョン・ギフン記者

洗濯物を仕分けする作業員の白い手袋が黒くなった。洗濯が終わり、水槽に溜まった水も真っ黒だった。先月20日、京畿道の労働者の作業服クリーニング店「ブルーミング」で目撃した場面だ。作業着についた鉄粉と油汚れの匂いでクリーニング店の中は煙っていた。作業者たちは「洗濯時に手袋とマスクは必須」とし、「私たちすらこうなのに、働く人たちはどうなっているのだろう」と口を揃えた。7月12日にブルーミングがドアを開けるまで、労働者たちはこうした作業服を、家で洗ったり、汚いままずっと着ていた。

汚染された作業着、家族の健康まで脅かす

ブルーミングは零細・中小事業場の労働者の健康権保護のために、半月国家産業団地がある安山市檀園区に建てられた。各種の工程から発生した粉塵と化学薬品など、有害物質で汚染された作業服は、それ自体が『産業廃棄物』のようだ。しかし、零細・中小事業場では、数千万ウォンもの産業用の洗濯機を準備する余裕がない。汚染された作業服を長期間着用すれば、労働者の健康を脅かし、家で洗濯すれば、家族まで病気に罹りかねない。これに対して地方自治体が乗り出した。ブルーミングは京畿道が支援し、安山市が京畿道障害者福祉会に委託して運営している。

作業着の洗濯処理の工程は七段階で行われる。回収→洗濯物分類→洗濯物前処理作業→洗濯→乾燥→アイロン→お届け、である。 回収・配送サービスがあり、労働者は直接クリーニング店を訪れなくても、きれいな作業服を着ることができる。たった1千ウォン(夏の上下の各500ウォンずつ)で可能だ。午前9時に始まった回収は午後2~3時頃に終わる。一日に事業場7~8ヶ所に立ち寄って、作業服1200~1300着を回収する。似たような建物の間で、地図にも載っていない50人未満の事業場を捜し出すのが最初の関門だ。

チョン・ギフン記者

「有害物質だらけの作業服を三週間も着たのに・・・」

毎週水曜日にブルーミングを利用するYテックの作業服は油で汚れている。依頼業者の要請で産業用の部品を賃加工する過程で機械を使う以上、作業服に油汚れがつかない日はない。しかし、全従業員が6人のため、別途の洗濯施設はなかった。Yテックの関係者は「ブルーミングに作業服を預けるまでは、会社で適当に洗ったり、家で洗ったりした。」「(家に作業服を持って帰ると)家族が嫌がった」と話した。

チョン・ギフン記者

C社は、作業服回収のために事業場に入るのも簡単ではなかった。有害な化学物質を扱っているからだ。C社は半導体などに利用される粉末素材をコーティングし、電気的な特性などを付与する。事業場の壁には、コーティング作業で発生する有害化学物質がぎっしりと書かれていた。青色の防塵服は必須だ。ブルーミングを利用する前までは、三週間着ては廃棄した。C社も7人が働く小規模事業場なので、産業用洗濯機を備えるのが難しかった。C社の関係者は「一着当たり1万6千ウォン相当の維持費を減らすだけでなく、職員も清潔なものを着ることができて良かった」と話した。

作業着が一着しかない事業所も多い。京畿道と安山市は、ブルーミングの利潤で予備の作業服を備えられるように支援する方法を模索中だ。

労働者にはきれいな作業服、障害者には公共雇用の提供

回収が終わった作業服は直ぐに洗濯機に入るわけではない。事業場別に分類できる色ラベルを付け、ポケットを検査をするなどの前処理作業が必要だ。作業服からは、ティッシュ・鍵・手袋から、ネジ・ライター・ドライバーまで、色々な物が出てくる。ポケットの中の鉄粉も落とさなければならない。汚れがたくさんついた部分は、産業用の洗剤を付けて歯磨きで落とす。高温殺菌スチームの洗濯と乾燥が終われば、さらっとした作業服が出てくる。スチームプレス(アイロンがけ)は利用者のためのサービスだ。

これらのすべての作業を行うブルーミング・クリーニング店の労働者は、すべて障害者だ。ブルーミング・クリーニング店のイ・ヨンシク所長を含め、重症障害者3人、軽症障害者3人が働いている。イ・ヨンシク所長は「障害者は、非障害者より仕事ができないわけではない。」「偏見をなくすために、ずっときれいに洗濯している」と話した。

ブルーミングを利用する事業場が更に多くならなければならないと、既存の利用者たちは口を合わせた。ブルーミングの職員も、産業団地の会議体に広報するなど、営業活動に熱を上げている。京畿道は、シファ国家産業団地がある始興市に、二番目のクリーニング店を今月開所する予定だ。

チョン・ギフン記者

全国の産業団地に拡張する作業着クリーニング店
九ヶ所で運営中・・・今年、更に二ヵ所オープンの予定

ブルーミングのような公共作業着クリーニング店は、全国九ヵ所で運営されている。2019年11月に金海市の「カヤ・クリーニング」が国内で最初の作業服クリーニング店だ。光州、亀尾、巨済、蔚山、宜寧の六ヵ所が後に続いた。今年は唐津と麗水、安山で作業服クリーニング店を開き、始興と霊岩では開所を待っている。

全国の主要産業団地に作業服クリーニング店が拡がっている様子だが、費用と運営の面で心配する声も出ている。全南労働権益センターのムン・ギルジュ・センター長は「作業服クリーニング店の本来の趣旨は、非正規職など脆弱な労働者に、正規職のように無料で作業服を洗濯してあげようということだった。」「現在の使用料は廉い方だが、後で費用が問題になるかも知れない。今も物価を考慮すると料金を引き上げなければならないというクリーニング店がある」と指摘した。金属労組京畿支部・始興安山地域支会の東洋ピストンの分会長は「作業服クリーニング店の提案趣旨は、政府の支援によって無料のクリーニング店を運営できるシステムを作ろうということだった。」「産業安全保健法に基づいて、労働者の健康と環境を守るというアプローチが必要だ」と話した。

このような心配が出てくるのは、作業服クリーニング店の運営から労働者の参加が排除されているためだという指摘も出ている。ムン・ギルジュ・センター長は「現在は地方自治体の一方通行が続いている。労働者のためのクリーニング店から労働者の参加が排除されている。」「作業服クリーニング店の会議体系に、労使と地方自治体が膝を突き合わせなければ、隘路となる事項が伝えられず、問題点も解決されない」と強調した。

チョン・ギフン記者

2023年10月4日 毎日労働ニュース カン・ソギョン記者

http://www.labortoday.co.kr/news/articleView.html?idxno=217557