コロナ禍の激務で自死した看護師、控訴審も『危険職務殉職』 2023年09月19日 韓国の労災・安全衛生

民主労総公共運輸労組が2021年8月4日、ソウル市庁の前で、人手不足で倒れる看護師たちと被害を受ける患者たちの姿を表現するパフォーマンスをしている。/キム・チャンギル記者

コロナに対応する業務をしながら、慢性的な過労と精神的な不安定に苦しみ、自ら命を絶った保健所の公務員が、控訴審でも「危険職務殉職」を認められた。コロナ対応業務が危険職務と認定されたのは初めてだ。特に、控訴審の裁判所は「『おかげで有り難かった』という言葉だけの補償で、防疫担当の医療スタッフに犠牲を要求することはできず、また要求してはならない」というメッセージも残した。

ソウル高裁は14日、釜山東区保健所で看護職の公務員として勤務して死亡したイ・ハンナさん(死亡当時33歳)の遺族が、人事革新処に対して起こした危険職務殉職遺族給付不支給処分取り消し訴訟の控訴審で、原告勝訴の判決を行った。

イ・ハンナさんは、2015年11月から釜山東区保健所で看護職の公務員としての勤務を始めた。2020年の初めからコロナ感染症の対応と管理業務を担当した。イ・ハンナさんはコロナの二次大流行だった2020年12月頃から超過労働時間が急激に増え、最大月100時間に達する程の超過勤務も行った。2021年5月19日からは、コホート隔離施設の管理業務も行った。イ・ハンナさんは同年5月23日、自宅で極端な選択をした。

人事革新処は、イ・ハンナさんの死亡を一般殉職とは認めたが、危険職務殉職には該当しないと判断した。危険職務殉職と認められれば、一般殉職よりも高いレベルの補償金と年金が遺族に支給される。

一審の裁判所は人事革新処とは異なり、イ・ハンナさんの死亡を危険職務殉職と判断し、控訴審の裁判所もこれを維持した。

危険職務殉職は、生命と身体に対する高度な危険を冒して職務を行い、当該職務に内在する危険によって災害を受け、その災害が直接的な原因となって死亡に至った時に認められる。人事革新処は「極端な選択の直接的な原因である認識能力などの明確な低下は、公務遂行の過程にあった慢性的な疲労・ストレスのためであり、該当職務(感染症患者の治療または感染症の拡散防止)に内在する高度な危険のためではない」と主張した。言い換えれば、イ・ハンナさんの死亡は「該当職務に内在した危険による災害」の要件を備えていないと見たのだ。

控訴審は「イ・ハンナさんの慢性的な過労・精神的な不安定が『該当職務に内在する高度の危険』のために直接発現し、これが極端な選択の直接的な原因になったとすれば、人事革新処が主張する『該当職務の危険性と災害発生の間の直接的な因果関係』を十分に認めることができる」と判示した。続けて「イ・ハンナさんは感染症患者の治療または感染症の拡散防止という職務に内在する高度の危険のために、認識能力などに明確な低下を来たし、これによって極端な選択をしたと見なければならない」と説明した。

控訴審は「コロナ感染症のパンデミックに対して創られた『K-防疫』の成果の裏に、イ・ハンナさんをはじめとする防疫担当医療スタッフの献身的な努力と犠牲があったことは誰も否認できない。」「長期間にわたって『すべての人が対面を避けたコロナウイルス感染症の感染者』などと随時接触し、時間と真心を込めてその拡散防止に最善を尽くし、幽冥を異にした防疫担当医療スタッフの遺族に対して、それに相応しい処遇をすることこそが国の存在理由であり、存立の根拠」だと明言した。続けて「『おかげで有り難かった』という言葉だけの補償では、防疫担当医療スタッフらにこのような犠牲を要求できず、また要求してもならない」とした。

2023年9月19日 京郷新聞 キム・ジファン記者

https://www.khan.co.kr/national/labor/article/202309191737011